9.なりゆき寄り道十王堂の湯
二か所もお風呂に入ったので、体はもうぽかぽか。
雪が降っているのにコートの前を合わせる気にもなれない。
「もう一か所ぐらい入って行こうかな」
「どうぞご自由に。俺はもう戻るから」
つれない台詞。
「・・・じゃあいいや。一人で行くから。えーと・・・ここから宿に戻る途中だと、
十王堂の湯か
新田の湯だな。十王堂の湯はもう過ぎちゃったかな。新田にするか」
「十王堂の湯は入ったことがあるよ」
そうだった。前回の旅行の時、私が一人で
河原湯、
大湯、
滝の湯、
真湯、
上寺湯、
熊の手洗湯と六ケ所回った時、パパは一人で十王堂の湯に入ってきたんだった。
中尾の湯はその時の宿からも一番近かったので朝風呂にでもと取っておいたのは分かるけど、何で中尾の湯の次に近い新田の湯に行かず十王堂の湯だったのかよく分からないのだが。
「十王堂の湯だったらそこの道を曲がって、突き当りに郵便局があるでしょ。そこを左に行くとあるよ」
「了解」
で、なりゆきで私の次のお風呂は十王堂の湯となった。