忘れもの、無くしものはそれだけで終わらなかった。
服を来て、コートも着たときにようやく私はさっきいくら探しても見つからなかった松之山温泉スキー場の1日券を見つけた。
なんとコートのポケットに入っていた。
電話を終えた後、急いでいたので無意識にポケットにしまっていたらしい。
ロビーに戻ると、もうパパと子供たちが先に戻っていて、受付の横に並べてあった土産物の中から可愛い犬と猫の置物を買っているところだった。
このとき受付にいたのはさっきの高飛車な感じの女性ではなく、ちょっと優しそうな若旦那みたいな人だったので、今からでも割引券の交渉をしてみようと思った。
たかが100円引きなのだが、月見の湯にも入れなかったし、髪ゴムがあるのに気付かず巾着までほどいたし、温泉タオルは無くなるし、このときはまだ髪ゴムまで忘れてきたことには気づいていなかったが、何だか100円でもいいから引いてもらいたい気分だったので。
しかし、松之山温泉スキー場の1日券が見つかった代わりに、今度はさっき受け取った領収証が見つからない。
さっきはまさか1日券が後から出てくるとは思わなかったので、適当にどこかに突っ込んでしまったようだ。
焦ってまたまた袋に手を突っ込みかき回す私。
さっきより荷物が多いから、ますます見つからない。
仕方なく、ロビーの椅子のところにスキーウェアを出して調べることにした。
これがまたやるべきではないことだった。
結局領収書は見つからず、パパももういい加減にしたらと言うので諦めて、スキーウェアだけはひとつたりとも忘れないようにチェックして袋に押し込んで、何だか後ろ髪を引かれるような思いで
千歳を後にした。
とにかく何か足りないような気がしたのだ。
何かが。