◇◆冬の群馬◆◇
雪煙と湯煙旅
寒すぎるもののそれなりに楽しく滑って、何のトラブルもなく終わるかと思われたスキーだったが、最後の最後にレナがやらかしてくれた。
リフトの上でスキー板に積もった雪を振り落とそうとして・・・なんと板を下に落としてしまった。
「だって、だって・・・」
べそを掻くどころか大泣き。
ラストにしようと家族全員で四人乗りクワッドに乗っていたのがせめてもの救い。
もしカナと二人だけの時に落としていたら、リフト降り場でそもそもどうすれば良いのかも判らなかったに違いない。
とにかく板ははるか下に落ちてしまった。
残念ながらコース上ではなく、また幸いにも崖でも無かった。たまたま沢があるからか、ネットを張ってある場所だった。板はネットに引っかかった。
「どうしたらいいのー!!」
「大丈夫大丈夫。きっとスキー場の人が取ってくれるよ」
「リフトを降りたらお願いすれば大丈夫だよ」
私とパパとカナが口々に慰める。
でも動転したレナは泣きやまない。
リフト降り場が近づいてきたので、私とパパとでレナを支えて降ろした。本当に大人と一緒に乗っているときで良かった。
リフトを降りたところで係りの人に相談する。
係りのおじさんは事情を聞くとすぐにスノーモービルに飛び乗った。
モービルは一度バックして切り返すと、真っ直ぐリフトに沿って降りていった。
「ほら、もう大丈夫だよ」
ようやくレナは安心して泣きやんだ。
おじさんはすぐに板を取ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
ぺこぺこと頭を下げる私たち。
今まで無言だったおじさんは、「楽しんでいってね」と一言だけ言ってくれた。