旅館こばやしは部屋の広さや作りなどは綺麗で旅館らしさがあったが、夕食はまあ合宿所や民宿クラスだった。
といっても
湯宿のみやま荘には負けるものの料金から言えば十分だと思う。
夕食は大広間で、ちょうど隣のテーブルにいた一家も家族連れ。幼稚園生ぐらいの男の子がいる。
パパが私をつついた。
「あの子にさっきお風呂で会ったんだけど、おじさん、彼女いるって聞かれた。自分はいるんだって自慢されちゃったよ」
・・・。
「で、あなたは何て答えたの?」
レナが「ママが彼女だよね」と言う。
ちらちらとみんなでその子を見た。
きっと彼女は幼稚園のクラスメートかな。彼女できたのが嬉しかったから自慢したくなっちゃったんだよね。子供でも男の子だね。なんか微笑ましい。
もしかしてパパ、負けてる?
食後は部屋に戻って。
ちび姫ちゃんの部屋は突き当たりだけど、カナやレナと一緒にいたいから私たちの部屋に来る。
外と中の温度差で窓ガラスが曇っている。
そこにちび姫ちゃんが指で「すき」と書いた。
誰のことかなぁ。そういえばみやま荘のお風呂で誰かにチョコあげたって話を聞かせてくれたよね。
後から部屋に入ってきたうちのパパが「すき」の前に「パパが」と書いた。
それを見てレナが「すき」の後ろに「じゃない」と書いた。