9.赤湯温泉 大文字屋
しかし体力的にももう限界。
お昼時になって空腹もあってか、もう倒れそうな気がしてきた。
楽しいするする感も、上がるときにふき取るとむしろ少しべたつく。
これで赤湯の外湯は定休日のあずま湯を除いて制覇した。どこかでお昼ご飯を食べなくちゃ。
赤湯元湯の周辺には、やぶ食堂とかもらんぼんとかいう食事処があるようだ。というのは、元湯の駐車場にそっちの客は温泉の駐車場を使わないでだったかその逆だったかの貼紙があったから目についたのだ。何となくそれを見たらそれらの店に行く気分ではなくなった。そもそも、もらんぼんとかいう名前は気に食わないし。
もう一つ気になっていたことがあった。
それは洗髪。昨日の昼間にあれだけかみのやま温泉の外湯を回ったので泊まったビジネスホテルの部屋のお風呂なんて入らなかったし、今日も帰宅した後、自宅のお風呂でせっかくの温泉成分を流してしまいたくない。
だから帰る前にどこか一ヶ所、シャンプーリンスが備え付けてあるような旅館の立ち寄り湯でゆっくり髪を洗いたい。そういうわけ。
そこでチェックしたのが
大文字屋。
伊能忠敬、新渡戸稲造と言った歴史上の人物が定宿にしていたという由緒正しい老舗で、現在地からほど近く、立ち寄り料金も良心的、そのうえ源泉掛け流しをうたっている。良さそうだ。
場所はね、赤湯元湯の駐車場前に立っている私からは道の突き当りの丹波館という旅館がよく見える。あのちょうど裏あたりに位置するらしい。
丹波館の前を通り過ぎて、酒井ワイナリーのある丁字路を左に曲がると丹泉ホテルと御殿守が建っている。細い路地の奥に大文字屋はあった。路地の突き当りなのだが、何だか両側の建物に遠慮して縮こまっているようにも見える。
大文字屋は思っていたよりは小ぢんまりとした建物に見えた。
しかし新館も建てているようなので、ここに見えているのは一部だけなのかもしれない。
昔の温泉地は旅館内に風呂を作らず宿泊客も共同浴場を利用することが一般的だったと言うが、大文字屋は赤湯温泉において一番先に宿内に温泉浴槽を作ったいわゆる最初の内湯旅館だったと言う。
玄関から入り、古びた下駄箱にブーツを入れ、スリッパを履いて帳場の前に来たが、お昼過ぎという時間帯、ここには誰もいなかった。宿自体がシンとしている。
明日は金曜日だし、それからすぐに年末を迎えて混雑するだろうから、今日はすっぽりと穴場になっている日で、増してや昼間では館内に留まるお客さんもいないのだろう。