それほど歩くわけではないから、私とえんぴつさんは花湧館の玄関に並べてあるサンダルを履いていた。
くららさんだけはサンダルだと歩くのに不安があるのか、たむらの正面玄関に寄って自分のロングブーツを出してもらってきた。
このサンダル、花湧館だけでなく、たむら本館のお客様もちょっと外へ出るときには同じものを使う。木の下駄とは言わないまでも、天下の
四万たむらのお客様が使うにはあんまりと言えばあんまりなシロモノ。
たむらの前の坂は意外と急で、確かに下手な下駄や草履では脱げてしまって危ないのだ。坂で結ばれている四万たむらと
四万グランドホテルは宿泊客が自由に両方のお風呂に入れるため、これら宿の履き物で行き来する人も多く、それなりに消耗も激しいだろうからあまり高級なものを使えないのは判らないでもない。
それにしてもあんまりだよ。
「だってこれじゃベンジョサンダルじゃん」と私たち。
たむらさん、もうちょっとこれは考えた方がいいよ。