「どこから来たの?」
天狗の湯の休憩室で話しかけてきたおじさんは、私たちがそれぞれ東京や神奈川から来たと聞いてびっくりした。
「よくこんなところ知っているねぇ。普通は草津とか四万とか行くもんじゃないの?」
蛇の道はヘビで・・・いやいや、違う違う、「四万に行く途中なんです」
でもおじさんも地元の人ではなかった。群馬の人だったが、吾妻川流域には仕事で来ているのだった。
「ここ以外の八ツ場ダム関連温泉の場所を知りませんか?」と私たち。
まだ行っていない二つのうち一つ、横壁温泉はおおよその場所は知っているが、とにかく
林温泉の時に場所が記載された二種類ほどの地図を持っていたにも関わらず道に迷ってぐるぐると回ってしまった経緯があるから、目印やポイントがあるなら知っている人に聞いてみたいと思っていたのだ。
「そんなものあるの? ここだけだろう?」
ここは知っていても、あいにくと他は知らないらしい。
「おばちゃんに聞けば判るよ」がっちゃんは今度は天狗の湯の受付のおばちゃんに聞きに行った。
「えっ、ダム関係の温泉? ここだけじゃないの?」
意外なことに受付のおばちゃんも知らなかった。場所を知らないだけでなく、存在そのものを知らないらしい。
たまたまこのときに玄関を通りかかった地元の入浴客も「他にダムの温泉なんて無いよ」と笑っている。
みんな自分の地区以外にも同様の目的で作られた温泉があるとは思いもしないようだ。
天狗の湯で情報が得られたら横壁温泉に行ってみようと思っていたが、結局手持ちの地図で真っ直ぐ着ける自信が無いので私は諦めた。
横壁温泉なら今ここにいるメンバーの誰も入ったことがないので面白そうだと思ったのだが。
お気に入りの温泉をリピートするのも良いのだが、それ以上に自分がまだ知らない温泉にどんな驚きが待っているか知りたがるタイプなのが私、そしてたぶんくららさんも。
横壁温泉は私の希望だったが、yuko_nekoさんは
温川温泉に行きたがっていた。浅間隠し温泉の三軒のうち一軒だ。
浅間隠し温泉郷にはそれぞれ独自源泉を持つ三軒の宿がある。
三軒の宿はそれぞれ、レトロ感溢れる佇まいと木の浴槽の
鳩ノ湯温泉三鳩楼、茅葺き屋根と滝見の露天風呂で最近かなり知名度を上げた薬師温泉旅籠、そして最後がその
温川温泉白雲荘。温川温泉が一番素朴な雰囲気で、目の湯と呼ばれる露天風呂がある。
yuko_nekoさんはずいぶん前に温川温泉に入ったことがあるようだが、ぜひ再訪したいと言っていた。