沖縄・子連れで体験旅行!
*子連れ沖縄旅行記3*
もう川沿いの道を何回往復しただろう。
10回以上行ったり来たりしたような気がする。
川の近くの暗がりを覗き込んでみたが、ホタルの光は見えない。
パパは「あと一回往復したら帰ろう」「それでも見つからなかったら帰ろう」と言い始めた。
私は違うと思っていた。
ホタルは暗くならないと出てこないのだ。こんな薄明の中では例えいたって光らないはずだ。光が見えないんじゃなくてまだ光らないのだと思う。
モンパの木のRyuさんが言っていたじゃないか。ホタルは光でお話しするって。光で異性を呼んだりコミュニケーションするのならば、明るいうちに光らせても目立たないのだから意味がないはず。
絶対もっと暗くなれば出てくると思っていた。
でもパパは今日は何もかも上手く行かない日だから、ホタルも見えないのだと思ったのだろう、もう帰ろうと言い出した。
そんなとき、カナが川の方を指さした。
「あそこ、光った」
最初の光に気が付くと、だんだん他の光も見えるようになってきた。
あそこにぽつり、こちらにぽつり、ポウッと小さな光が点滅してふわふわと空を飛ぶ。
いつの間にか辺りは隣の人の顔もよく判らないくらいの暗さになっていた。
私たちが夢中でホタルを探していると、正面から数人の人影が近づいてきた。
どうやらホタル見学に来たエコツアーの一団らしい。
ガイドはRyuさんのようにも見えたが暗かったので判別が付かず、またお仕事中なので邪魔をしてはいけないと思い、声を掛けるのを控えた。
川沿いのホタルは、去年私たちがRyuさんに連れてきてもらったときよりはずっと数が少ない。
日によって見られる数が違ったり、台風の影響などもあるのかもしれない。
去年のように辺り一面で光が点滅するような光景は見られなかったが、今年のホタルに会えたことで私たちは満足した。
今日はもう、することなすこと裏目に出て散々だったけど終わり良ければ全て良し。ふわふわと飛ぶホタルの幻想的な光を見ていると、そう思える。
ふとレナがホタルを捕まえた。
今日のリュウキュウハグロトンボといい、不思議とレナには昆虫が寄ってくる。
またちょっと羨ましそうなカナ。
両手で捕まえたホタルを確認しようとレナがそっと指の間を覗き込んだら、その隙間からホタルの光がスーッと出てきた。
「あっ」
ホタルは飛び立とうとしてレナの胸元にぶつかり、それから上の方に舞い上がっていった。
帰りがけに道の脇でまたひとつ私はホタルの光を見つけた。
ちょっと様子がおかしい。
点滅しているがまったく移動しない。
どのホタルも人間が近づけばふわふわと飛び立つのに。
ホタルの幼虫も光るが、この光は地面ではなく空中で点滅しているように見える。
何があるのかとデジカメで撮影してみた。
フラッシュの光に浮かび上がったものは、なんと蜘蛛の巣だった。
このホタルは蜘蛛の巣に捕らわれたばかりだったのだ。
思わず指で蜘蛛の巣を払った。
ホタルの光は一瞬その場で点滅したと思うと、ふわふわと登っていった。
「ママ、ホタルさん、助けてあげたの?」
そう。
今日、私たちがここに来なかったらあのホタルは蜘蛛に食べられて終わっていただろう。
そのかわり、あの巣の主は今夜の食事は抜きになってしまったが。