◆◇桜の古都巡り◇◆
奈良観光旅行記
東大寺の南大門は近づけば近づくほど巨大さを増した。
威圧感をおぼえる。
正直、遠くから見ていたときはこんなに巨大な門だとは思わなかった。
派手な色をしているわけではない。凝った装飾を施しているわけではない。
でもこの巨大さは度肝を抜かれる。
こういう迫力は写真で見てもわからない。その場に来て歩いて近づいてみると、え、ええ、えええーと驚嘆の声を上げて見上げることになる。
南大門に近づくと、鹿の様子が変わってくる。
公園でひなたぼっこして座ってばかりいたはずの鹿が、南大門の近くでは馴れ馴れしくじりじりと寄ってくる。
近くに数か所、鹿せんべいを売っている店があるので、せんべいがほしいとねだっているのだ。ちょっと怖い。
カナは以前こういう公園にいる鹿に、お土産を入れた紙袋を食べられてしまったことがあるのでびびっている。
鹿せんべいの店だけでなく、みたらし団子や甘酒を売る屋台もあった。
みたらし団子が食べられるかもと思って聞いてみたが、まだ団子が生なので待ってくれと言われてしまった。
時刻はそろそろ9時になる。随分観光客の姿が増えてきた。
東大寺の南大門は国宝である。
多くの天災に会ってきている日本の歴史的木造建築の運命をこの門も免れたわけではない。
台風で一度倒壊し、現存する門は鎌倉時代に再建されたものだ。
それでも十分古いに違いない。
門を潜ると左右に阿吽の仁王像が通る人をねめつける。
運慶快慶の作と言われるこの二体の仏像は、教科書や歴史書によく掲載されているので見覚えがある。
ハニカムメッシュの檻に入れられてしまっているようで、フィルター越しになる分、現実感は薄れるが、それでも門を通る不届き物は決して見逃さないという審判に掛けられている気分になる。