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がんばれ新潟 *古民家で過ごす夏休み*

5.蝉の幼虫



 トイレに行こうとして、入り口近くで蝉の幼虫を見つけた。
 抜け殻かと思ってひっくり返してみたら、じたばたと暴れるので地面から出てきたばかりと判った。
 「蝉の幼虫、見つけたよー」
 「うそー」
 「見せて見せてー」
 「ほらっ」
 もぞもぞ動く意外に大きな茶色い幼虫をベンチに乗せてやる。
 「いじめちゃ駄目だよ、この幼虫はレナより年上なんだから」
 蝉は何年も幼虫の姿で地下に暮らし、やがて地上に出てきて木に登る。
 そして羽化してわずか一週間で死んでしまうことが知られている。
 蝉になるために一所懸命一所懸命暗い土の中で生きてきたんだから、邪魔しちゃ駄目だよ。
 目の前の木につかまらせてやったが、しばらくして見に行くと、蟻にたかられて苦しんでいた。
 可哀想なので蟻を落とし、蟻が少なそうな別の木に改めてつかまらせてやった。
 「触りたい」とレナ。
 もう駄目だよ。さっきの蟻との闘いで弱っているし、もし触って木から落ちたらまた一から登り直しだ。見てご覧よ、一所懸命登っているけど、ほんのちょっと登るだけでもこんなに時間がかかるんだよ。
 レナは不服そうだったが諦めた。
 子供の頃、母の実家の長野に遊びに来ては、よく蝉の幼虫を捕まえて網戸につかまらせた。
 そうすると網戸につかまったまま羽化するのだ。
 でもこの幼虫を東京に連れて帰り、東京で羽化させるよりここで羽化した方が蝉にとってよっぽど幸福だろう。
 東京の都心部でも蝉は鳴く。
 けれど時々思う。地面に潜ったときはそこは土の大地でも、いざ蝉になろうとしたときに出口がコンクリートでふさがれていてそのまま死んでしまう幼虫が沢山いるのではないかと。






3-6.体験工房つぶらやへ続く


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