宿に着くと先ほどの女将さんらしい女性が受付をして、部屋へ案内してくれた。
扇風機の置いてあるシンプルな和室で、窓の外はすぐ隣の建物の壁でまったく展望が無かった。
とりあえずその展望のない窓の側に座って、これからどうしようかとつらつらと話をする。
「パパ、
御座之湯、どうだった?」
「いや、良かったよ。さすがは草津だね」
「そうかなー。私はなんか物足りなかった。たぶん草津だからハードルが上がってるんだよ。他の温泉だったら十分凄いって思うもん」
「気が付かないところに傷があったみたいで染みた染みた」
あっ、それは判る。私も傷があったら嫌だなぁって、ちょっとビビりながら入った。
さて19ある外湯の未湯を回ろうと考えていたが、まず最初の
躑躅の湯で躓いてしまったので、次はどこに行くか・・・。
宿の玄関わきに置いてあった草津温泉の観光マップを出し、古いガイドブックと照らし合わせる。
入ったことのない外湯はさっき女神様とかち合って断念した躑躅の湯の他、
碧乃湯、温泉街を抜けて六合村方面の道沿いにある
睦乃湯、
こぶしの湯、
恵の湯、そして町の北東にある
長栄の湯の6ヵ所だ。
長栄の湯は歩いて行かれそうな気がする。
ただここは以前は町営の湯という名称で19のうち唯一町民専用とも言われていた場所だ。
現在は同じ読みでも「長栄の湯」と改名して、ここだけ特別に外来者を拒絶しているとは聞かない。
ダメもとでこの長栄の湯に行ってみるか。
観光マップに長栄の湯の位置を書き込むと、タオルと小銭を持って出発。
今夜は草津泊で時間ならたっぷりある。
パパも行くと言うので方向音痴の私はパパに地図を任せた。