◇◆秋の北志賀小旅行◆◇
工房の中ほどに楮(こうぞ)を溶いて白く濁ったすき舟が置かれていた。
ここに簀をはめた桁、すなわち簀桁(すけた)を入れて、紙を漉いていく。
入れるときは垂直に。
それから桁にたっぷりとすくって水平にし、前後左右に水平のまま何度か振る。
子供たちがキッザニアで体験していたときには、これの大きいものを30回ぐらい振っていたが、こちらでは桁も葉書3枚サイズで小さいし、振る回数も数回で良かったのでずいぶん楽だった。
桁の編み目から水分が落ちて、楮の繊維だけが桁に残ると、もう一度同じ工程を繰り返す。
2度すくいあげて出来上がり。
後は乾燥しきる前に、模様をつけていく。
これが面白い。
様々な色に染められた細かい和紙のかけらを、今すいたばかりの真っ白な和紙に自由に載せて模様をデザインするのだ。
カラーの和紙は好きな形にちぎって良い。
また、大きさが足りなければ何枚も重ねて乗せれば良い。
ちぎった形が味のある毛羽を産み、重ねた色が微妙なグラデーションを産む。
思わず四人、夢中になって作り始めた。
すき舟の中に垂直に簀桁を入れすくい取り、前後左右に振る
パパは子供に受けようと、ポケモン柄を作った(ちなみにフワンテ)。
私が蝶を作ろうかなと言うと、カナも蝶がいいと言い出した。
レナはニンジンとウサギを作った。
ちょっと行き当たりばったりに作りすぎたカナは後悔して、一度は作り直すと言ったがみんなで止めた。
葉書は6枚なので、各自が一枚ずつ作り終えた後は、パパとママ、カナとレナで組んで、残りの2枚をデザインすることにした。
パパは工房の外で四つ葉のクローバーならぬ三つ葉のクローバーを二つ摘んできて、ぶちっと葉をちぎり加工して、四つ葉のクローバーに見せかけて葉書の上に置いた。
「パパはこれでおしまい」と彼が言うと、子供たちは手抜きだとブーイング。
残りはママが花模様を入れて仕上げた。
カナのさっきの失敗を踏まえて、カナとレナは相談して、作り出す前にデザインを決めたようだ。
こつこつと細かく何を作っているのかと思えば、月夜を見上げた黒猫で、夜空の青いところは小さな青い和紙をいくつもいくつも重ねて貼ったものだった。
「これは力作だねぇ」
ちょっと絵本の一場面みたい。
6枚全てのデザインが完成すると、上からもう一度すき舟のとろみをそうっと上から掛ける。
これで模様は葉書と一体になる。
乾かすのに20分ほど。
パパはその間に食事して来ようと提案した。
すいた和紙が乾く前に、色の付いたちぎり和紙を自由に乗せる。