子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度☆☆☆☆☆ 泉質★★★★☆ 朝一番で訪れたら激熱だった 泉質は特に刺激なし(滑りやすいので注意)
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★★★☆ 脱衣所も棚のみで狭く、赤ちゃん連れはきついかもしれない
子連れ家族のための温泉ポイント
大江山の鬼、酒天童子の逸話は有名だ。京の町を荒らしまわる鬼の一味を源頼光以下、四天王と呼ばれる武者たちが、山伏に扮し退治に出かけた。四天王のメンバー構成は、渡辺綱、坂田公時、碓井貞光、卜部季武の四名。このうち碓井貞光が四万温泉発祥伝説の主人公である。
上州と信州の境である碓氷峠の出身とも伝わる碓井貞光が、この地で仮寝の宿をとった折り、その夢枕に童子が立ち、お前の忠誠心に感じ入り、ここに四万の病に効く霊泉を授けようと教えてくれたのがこの御夢想の湯だと伝わる。
四万の病を治す効能があると言われたことから、四万(しま)温泉と呼ばれた。
四万温泉には温泉口、山口、新湯、ゆずりは、日向見といくつかの地区があるが、御夢想の湯のある日向見はその中でも最奥に位置している。
日向見地区の無料駐車場に車を置いて細い坂道を登っていくと、10分も歩かないうちに群馬県内では唯一の国の重要文化財に指定されている寺院建築、日向見薬師堂に出る。
これは茅葺屋根の風情あるお堂で、この薬師堂の道を挟んで正面に誠に慎ましやかに御夢想の湯はある。ちょうど中生館の看板が手前に建っているので、まるで中生館の建物の一部かと思ってしまうほどだ。
入り口を入ると男女別の脱衣所に分かれる。脱衣所も狭く古そうだ。脱衣籠もなく棚だけだ。
浴室のドアを開けると、外観からは想像もつかない木造りの感じの良い浴室が待っていた。湯口のところが白っぽく盛り上がっていて、遠目にはまるめた手ぬぐいでもおいてあるのかと思ったら、湯気が消えるとそれは鍾乳石のようにごてごてと芸術的に固まった析出物だった。
河原の湯と同じで何段か階段を降りて湯船に至る。
3人くらいでいっぱいの木の浴槽と、プラスチックの洗面器。他には何もないシンプルな施設だ。
降りていってお湯の温度をみようと手を入れてみれば…
激熱!!。
ここまで熱い湯は久しぶりだ。入れた手がじんじんしている。とてもとても子供の入浴などできない。
見れば壁にひとつだけ蛇口があり、短いホースが繋いである。
基本的には水でうめるのはご法度だが、いくらなんでもこのままでは入れないのでとにかく少し冷やすことにした。
何しろ床に立っているだけで、掛け流されてくるお湯で足の裏が火傷しそうだ。
やっと入れる温度になったので、そろそろと体を沈める。
これは吃驚。
オイルの臭いがする。
四万温泉でアブラ臭のするお湯があるとは思わなかった。
それも石油・灯油系の臭いではなく、淡いながら柑橘系・機械油系の華やいだ臭いだ。加えてちょっと海苔の佃煮みたいな臭いも混じっている。
石膏泉らしく、湯中ではきしきしとするが、上がるとぬるぬるするのも驚きだ。
アルカリ・重曹のにゅるにゅるではなく、オイル系のぬるぬる。羽根沢温泉や有馬療養温泉みたいな感じだ。臭いとあわせて、オイルの働きだろう。そういえばここは木の床も、木の浴槽の底もとてつもなくよく滑る。実は二人の子供たちは入ってきてから一回ずつ転倒した。床は石ではなく木なのでダメージはほとんど無かったが、流れてくるお湯のオイル成分で、ちょうどワックスを引いたみたいになっているのだ。
外観を見たときには、河原の湯や山口露天風呂と比較して、あまりに質素な佇まいに見えたが、浴室とお湯は一級品。今のところ、四万温泉の中で一番のお気に入りだ。