修善寺ポマトランドでウィンターキャンプ

3.まるで竜宮城みたい

　残りの車は消しゴムさんを先頭に伊豆長岡を目指した。
　温泉街に入って左に曲がり、消しゴムさんは迷わず真っ直ぐ南山荘に導いてくれた。
　如何にも由緒ありげな建物だ。日帰り500円の幟が立っている。
　伊豆の温泉に500円で入らせてもらえるだけでも破格だと思ったのに、こんな立派な旅館だとは思わなかった。
　消しゴムさんの車は門の手前で右折し、坂を上っていった。
　駐車場は坂の上なのかなと思ってついていくと、ちらりちらりと木の間から見える南山荘の全容は驚くべき広さだった。
　斜面に庭園を囲むように増改築を繰り返したと思われる数奇屋造りの棟の群は、まるで竜宮城のようだった。
　「凄いねぇ」と溜息をつく私に、えんぴつさんが「泊まって下さいよここ、一泊朝食つき4,500円ですよ」と言った。
　ええーっ、よんせんごひゃくえん～!?
　何かの間違いじゃなくて?

　yuko_nekoさんが、昔は高級旅館だったのが採算がとれなくて、格安プランを作ったらネットで大当たりしたらしいよと教えてくれる。
　なるほど。
　安代・渋温泉の安代館や那須湯本の雲海閣みたいな感じか。
　古びてがたが来ても、修理費用を出すために宿泊料を上げるより、最低限のメンテナンスだけでぎりぎり回していくやり方だ。

　ちょうど雨が降ってきたところだ。
　ポマトランドにいたときは、傘もいらないような細かい雨がたまにぱらついたりしていたが、今になって本格的に降り出した。
　みんな車を降りて玄関前までいちもくさん。
　玄関を入るとすぐ左手に日帰り入浴用の券売機がある。
　私たちが集団で入ってきたのを見て、宿の人が慌ててスリッパを準備してくれた。

　えんぴつさんと消しゴムさんが、露天風呂と富士見風呂は男女交代制で離れていると教えてくれたので、みんな一緒に移動して入るには内風呂が良いということになった。
　まあ今日は雨なので露天風呂より屋根がある方がいいだろう。
　消しゴムさんの言うとおり、館内の階段は多かった。
　色が褪せかけた赤い絨毯の急な階段がくねくねと続き、窓の外を見ると倉庫のような建物の窓をガムテープで補修してあるのが見えた。
　この辺が、維持しきれなくなった高級さみたいな感じで哀れを誘う。