子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★☆☆ 泉質★★☆☆☆ 露天風呂は適温、泉質は少し刺激あり
- 設備★☆☆☆☆ 雰囲気★★★★★ 赤ちゃん向けの設備は無いが景観の良い混浴露天風呂有り
子連れ家族のための温泉ポイント
車はスイッチバックしないと上れないような山道、中国の山水画のような断崖絶壁の景観、ラストは吊り橋。これぞ完璧な秘湯というものだ。
開湯は今から450年ほど前。創業は室町後期。
今は日本秘湯を守る会にも名を連ねる。
7、8年前に訪ねたときは、途中の滑川温泉から徒歩で昇った。
雪解け前の道の端には小さな蕗の薹がいくつも顔をのぞかせていて、山の春はもうそこまで来ていた。
当時は混浴に臆してついに女湯露天風呂にしか入らずじまい。それが後々まで心残りとなっていた。
あのときは滑川から先の道はダートコースだった。今はほとんど舗装されていて多少道幅も広くなり、スイッチバックのカーブも巧くハンドルを回せばスイッチバックしなくても登ることができるようになった。
それでも姥湯の手前はダートのままである。
ゴールデンウィーク最終日。
お昼過ぎだったが、かなり車の往来がある。この道の先にはもう姥湯しかないのだから、行き来する車はみんな露天風呂目当てだ。
岩の崩れた後のような、茶色く露出した崖が見えてくると、ああ、姥湯に来たんだなと思う。
道の途中で二台の車に追い抜かれたが、ほとんど無秩序に停められた駐車場のタイミング良く空いたスペースには、私たちを抜いていった赤い車がすっと入ってしまった。
呆れるほどに混んでいる。
だけど呆れるにはまだ早かった。
風呂の混雑は駐車場の比ではなかったのだ。
建物は見えているが、意外と離れている。吊り橋を渡って急な坂道を登らなければならない。宿泊する人の荷物はケーブルで運ぶので、吊り橋の横に荷物用のケーブルが見える。
桝形屋の入り口を開けると、待ってましたというように、中に入らなくても入浴料が払えるように係りの人が立っている。
寒いので体は冷え切りがたがた震えている状況で、混雑の中、狭い坂道を濡れた他の人とすれ違いながら行くのは難儀だ。
なかなかどうして辛い行程だった。
最初に右手に女性用露天風呂がある。そこを通り過ぎてさらに登ると混浴の露天風呂が二つ。混浴露天風呂の手前に、男性用も女性用もなくほとんど丸見えの脱衣所がしつらえてあり、これまたぎゅう詰め。女性は女性用露天風呂の脱衣所を使うのが得策。しかしそちらも嫌になるほど混んでいる。
混浴の露天風呂二つは上下に並んであるが、それほど景観に差はないと思う。上流の露天風呂の横に、源泉を冷ますための木の枠がある。
やっぱり景色だけは比類無き露天風呂。
このロケーションだけは滑川温泉もまるで歯が立たない。
山の見える露天風呂はいくらもあるけど、この切り立つ岩山は他にない。すごいと思う。
でもこの人混みはなんだよう(涙)。
町中のスーパー銭湯じゃないんだからさぁ・・・。
お風呂の中に入っている人は数人だが、どういうわけかお風呂の周りに人人人・・・。ぐるりとタオルを巻いたり、服を着たりした人がぎっしりといる。しかも雨なので、みんな濡れそぼって。
もうほとんど、私たち、何しに来たんだ?と自問自答。
お湯は青みがかった乳白色。滑川とよく似ている。湯の花は滑川よりずっと細かく、濁りももうちょっとあるので膝下までは見えない。
強いゆで卵臭。軽い酸味と苦み。刺激はほとんどない。
昨夜、滑川温泉の露天風呂で聞いた話。
「滑川のさらに先にある姥湯は、今も絶景とか言うけど昔はもっと凄かったんだよ。平成元年かな、あそこの岩が崩落してすっかり見える景色が狭まっちゃってね。そうそうその頃は、河原でもちょっと掘ると温泉が湧いて、これがまた雰囲気いいんだよ。今はもう危険だとかで河原に降りられなくなっちゃったんだけどさ」
当時は正真正銘の秘湯だったと懐かしそうに言った。
今はもう、秘湯の面影どこへやら。