「最初の30分はまだよく煮えておらず、また時間が経つと煮詰まってきてしまいますから、ちょうど良い頃合いでございますよ」
メガネを掛けた真面目そうな男性スタッフが囲炉裏の炭で温められた鉄鍋から湯気の立つみそ汁をよそってくれた。
旅館たにがわでは早朝にロビー横の囲炉裏でまいたけのみそ汁をサービスしてくれる。
私とパパが椀を受け取ると、男性スタッフは宜しかったら記念写真をお撮りしましょうと私のカメラを預かった。
35室しかないのだから、もしみんな朝寝坊だったらおじさんは待ちぼうけで、おみそ汁は侘びしく片づけられちゃうんだろうかなどと余計な心配をしてしまう。
そんな心配は無用なのか。私たちの他にももう一組夫婦がふらりと現れ、やはりみそ汁をよそってもらっていた。
「あら、いい歯ごたえね」と、奥さん。
「まいたけは別に茹でて入れるんですよ。塩を入れて茹でるのがポイントらしいです」スタッフのおじさんはにこにこと教えてくれる。みそ汁を作ったのは料理人で、自分では無いと言うが、ここで火加減を見るのも大変なんだと言う。何しろ熱源はコンロやバーナーではなく炭だから。
旅館たにがわのスタッフはみんな一流だ。客人の気持ちを考えて穏やかに接してくれる。
最終日 2008年2月12日(火)
朝食も昨夜と同じ大広間だった。
夕食同様意外と子供たちは食べた。
いつもこのくらい食べてくれれば二食付きの料金も惜しくはないのだが、かなりむらがあるのでリスクが大きい。
私は朝風呂にも入れて大満足だ。
さて、今日はスキーに行こうと思っている。
一日スキー場で滑って、それから帰路に就く予定。
谷川温泉から最も近いスキー場はホワイトバレースキー場。
二番目は大穴スキー場。
それから天神平とか、水上奥利根スキー場だと思う。
でもパパは昨日から水上宝台樹スキー場に行くことに決めていた。
「何で宝台樹なの? ホワイトバレーとか大穴の方が近いよ」
「だってどっちもリフト二本ぐらいしか無いよ。なのに料金は宝台樹と大差ない。宝台樹の方がお得だと思うよ」
「天神平スキー場は大きいんじゃない?」
「あそこって確かロープウェイか何かで登らないと行かれないスキー場でしょ?」
そういえばそうだ。
天神平は昔、職場の人たちと行ったことがある。
別のスキー場に行こうと出発したのに、途中の路上で谷川岳天神平スキー場の割引券をもらって急遽目的地を変更したのだ。
下は晴れていたのにロープウェイで登った山頂は大荒れで、吹雪が凄くて遭難するかと思った記憶がある。
確かにファミリー向きではないかも。
宝台樹は前に夏にキャンプに来たことがある(
宝台樹キャンプ場日記参照)。
そういえばキャンプ場の近くでリフトを見たような。
水上宝台樹スキー場の規模はこの辺りではかなり大きい方で、リフトも7本。うち2本はクワッドだ。料金的にホワイトバレーや大穴と大差ないならお得感はあるかもしれない。
「じゃ、宝台樹に行こうか」
「うん、それで帰りにどこか温泉に入って帰ろう」
これで今日のスケジュールは決定したようだった。