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◇◆冬の群馬◆◇
雪煙と湯煙旅

3.旅館たにがわの贅沢なひととき



三日目 2008年2月11日(日)


 三日目の朝はいい天気だった。
 9時半頃に片品の旅館こばやしをチェックアウトした我が家とyuko_nekoさんちの車は、昨日しんめいの湯に行くときに通った川場村経由の道を沼田方面に向けて走っている。

 今日は三連休の最終日で、もう一泊する私たちはともかく帰るyuko_nekoさんちは渋滞に巻き込まれる前に群馬を後にした方が良い。
 空は青、山に雪。
 「何時まで一緒にいられるの? 今日まだ遊べるよね?」とちび姫ちゃん。
 とりあえずこの辺りに詳しいyuko_nekoさんの案内で、子供の遊び場もあるという川場の道の駅を目指すことにした。
 今回も子供たちは一緒にいることを望んだので、ちび姫ちゃんはうちの車の後部座席にいる。

 本当ならあまり時間的な余裕もないし、真っ直ぐ道の駅に向かうつもりだったが、そうはならなかった。
 途中で私の携帯が鳴る。
 出てみると前を走っている車のyuko_nekoさんから。
 「温泉寄ってっていい?」
 「もっちろん」
 道の途中に小住温泉という日帰り温泉があり、そこはがっちゃんの大のお気に入りなので寄っていきたいということ。
 「がっちゃんは、ここを通らなくてもわざわざ立ち寄ることもあるくらい気に入っているんだよ」
 私も滅多に来ない片品・川場方面に来たのだから、ひとつでも多く入りたいと思っていただけに渡りに船。



 小住温泉は県道の川向かいで、細い橋を渡ったところだった。
 埼玉の白寿辺りと同様、湯郷グループの経営する日帰り温泉だ。
 ちょっと小綺麗な建物で、中には休憩室、レストランなどもある。
 がっちゃんとyuko_nekoさんはここの食事も美味しいんだよと教えてくれた。

 案の定子供たちは車から降りないと言いだした。
 予想されたことなので、何かあったら携帯電話に連絡してもらうことにして、大人だけで小住温泉に入館した。
 男女入れ替え制ということで、今回は女湯はより川に近い側になった。
 この日男湯に設定された方は源泉風呂のような小さな浴槽がもうひとつあるそうだ。川の眺めなどはどちらも大差ないという。

 小住温泉のお湯もすっきりと無色透明。湯の花も見あたらない。
 少し痛みかけたようなゆで卵の臭いがして、肌触りは強いきしつき。今回の旅行で入っている温泉は全部透明なお湯だが、きしきしする感じはここが一番強かった。
 施設の規模や内湯のサイズからすると、露天風呂はかなり大きなものに感じられた。
 川の眺めはおまけ程度だが、なかなか雰囲気の良い岩風呂だ。
 お湯の良さもあってがっちゃんが気に入っているのが判るような気がする。
 ただ何故か見上げると屋根近くの岩の上の方に絨毯のようなものがまるめて押し込んである。

 川が見えるのは部分的に岩のない縁だけで、ちょうどベストポジションであるそこに年輩の女性が一人いた。
 私とyuko_nekoさんがすべすべする美肌温泉ならどこが良いかなどという話をしていると、新潟の清津峡温泉は知っているかと話に入ってきた。
 清津峡温泉なら旅館が日帰り温泉になった湯処よーへりと食堂がやっている湯元苗場館がある。
 よーへりはともかく、苗場館はかなりマニアックだ。
 苗場館を知っているだけでただ者じゃないという感じだが、雪のシーズンは入浴を受け付けない冬季の苗場館に入浴したことがあるということで相当な温泉通らしい。
 一人でも車を運転してどこへでも行かれるのだそうだ。
 私も年を取ってもこのくらいアクティブでありたい。
 まずはペーパードライバーを返上しなくては。
 「新潟ですべすべする温泉なら・・・」私も思いだした「そうだ、大沢山もあるよ」
 それを聞いてyuko_nekoさんが相づちを打つ。
 「それだよそれ、大沢山。昨日この名前が思い出せなくてさ」
 昨夜、今日泊まる宿を検討したときに、大沢山温泉の大沢館もyuko_nekoさんは候補に挙げようとしたようだ。大沢山温泉には数軒の宿があるが、私も高七城に日帰りで寄ったことがあるのみで、増してや日帰りをいっさい受け付けていない大沢館には泊まったことがない。
 大沢山温泉も脅威のすべすべ温泉だ。
 「後は塩河原温泉渓山荘も美肌でいいんだよねー」
 「入ったことないんだよー」と私。
 泊まるにはやっぱり予算オーバー。ちなみに塩河原温泉はここから近い。
 「子供たちを川場の道の駅で遊ばせておいて、よしかさんと私でちょっと立ち寄り入浴してきちゃおっか」
 素敵な提案だったが、もちろん残念ながら現実にはそんな時間は無かった。



 川場の道の駅は、田園プラザ川場という。
 広く施設も充実しているのでとても人気がある。
 人気があるせいか、目の前の駐車場は満車だった。
 yuko_nekoさんたちはよく知っていて、別の駐車場に車を入れた。そのとき見つけた看板。
 「県立森林公園 21世紀の森 10キロ→」
 カナが「21世紀の森だってー」と騒ぐ。「どっかで聞いたことあるよー」
 うん。沖縄の名護市にある21世紀の森公園と同じだね。

 空は晴れているが芝生の上は雪が積もって真っ白。
 早速子供たちはがっちゃんをターゲットに雪合戦を始めた。
 パパは何故か一人で道の駅ホールの方へ行ってしまい、yuko_nekoさんはお目当てのミート工房の方へ行ってしまった。
 私はどっちについて行ったらよいか迷ったが、結局yuko_nekoさんの後を追った。

 ミート工房はドイツ風のハムやソーセージを手作り販売している建物で、ショップと食事処に別れている。
 yuko_nekoさんが入っていったのは食事処の方で、山小屋のようなすきま風の入りそうな質素な室内に簡易なテーブルと椅子が並べられ、決して綺麗とは言い難い場所だが既に座席はほとんど埋まって人気のほどがうかがえる。
 ここの名物は山賊焼き。
 ハム・ソーセージ・ベーコンなど10種類近くをミックス焼きにしてくれて使い捨ての容器にどさっと積み上げてくれる。
 すぐにがっちゃんとちび姫ちゃんもやってきたので、私もパパを呼んできた。

 食後はまた子供たちは雪や遊具で遊び、大人は適当に散策した。
 物産センターには無料の甘酒も置いてあった。地元の酒蔵の酒粕を使った甘酒と書いてあったが、やっぱりここだと「水芭蕉」かな。



 ちょうどこのとき、イベントが始まった。
 田園プラザかわばの道の駅ホール前に人だかりができて、何か配られている。
 パパが子供たちを呼んでおいでと言うので私がカナとレナを呼びに行った。

 カナとレナとちび姫ちゃんで一緒に遊んでいるのかと思えば、何故かみんなバラバラだった。
 ちび姫ちゃんはお母さんのyuko_nekoさんに呼ばれて一緒に行動していたようで、カナは遊具の所、レナは離れた雪の上でそれぞれ別々に遊んでいた。
 声を上げて呼ぶと、カナはやってきたがレナがなかなか来ない。
 「早くおいで」
 「なんでー?」
 なんでと言われても・・・私もなんでかよく知らない。
 「とにかく何か始まったみたいだからおいで」

 なかなか集まらない子供たちをようやくホールの前に連れていくと、係りのおじさんが先の方に白いものをつけた棒を配っている。
 カナとレナが行くとちょうど配り終えてしまったようで、次の回にしてと言われてしまった。
 「・・・」
 そこへパパがやってきて、カナとレナの分も貰っておいたからと二本の棒を差し出した。
 棒の先についているのはパンの元で、これを伸ばして棒にくるくると巻き付けて自分たちで焼くらしい。
 レナはすぐ棒を受け取ったが、カナは受け取らない。
 来たくないのに呼ばれたとか、自分で受け取れなかったとか、何か気に入らないことがあって拗ねているようだ。
 仕方なくカナの分は私が焼いた。
 バーベキューコンロを大きくしたようなものが二つ設置されていて、炭の上に棒を突き出してくるくる回しながら焼く。
 子供はついつい火に近づけすぎて焦がしてしまうことが多いようだ。少し遠火にしてじっくり焼くのがいいみたい。
 パンの材料はちゃんとしたパン屋で作っているものだそうで、しばらく回しているといい具合にきつね色になってきた。
 出来上がりはふっくらぱりぱりで美味しかった。
 この焼き方、キャンプの時なんかでもできそうだ。



 道の駅でyuko_nekoさん一家とはお別れ。
 がっちゃんは関越道を飛ばし、渋滞に引っかかる前に自宅に帰り着いたそうだ。
 私たちはこれから谷川温泉に向かう。
 沼田まで南下し、関越道に沿って北上。
 空は薄ぼんやりとしてきた。1時半過ぎに水上を通過する。2時のチェックインを目指すならちょうど良い時間帯だ。

 「水上温泉って・・・大きな旅館が並ぶ温泉街で川沿いで電車でもアクセスしやすい・・・なんか印象が鬼怒川と被るね」
 そんなことを話しながら水上の温泉街を見下ろして、利根川の支流、谷川を遡る。
 山に挟まれた正面に真っ白の谷川岳。綺麗だ。
 途中、左手にペンション街へ降りる道があった他は、ほとんど建物は無く、水上から約3キロ、道は真っ直ぐ谷川温泉に続いている。

 「あれ、ここって・・・」
 前に立ち寄ったことのある日帰り温泉、湯テルメ谷川の真ん前。
 本当に目の前が旅館たにがわだった。
 目の前の道は狭く、それほど良いロケーションには見えない。
 でもどことなく品の良さそうな玄関だ。
 もちろん車をつけるとさっと宿の人が近づいてきて、お泊まりのお客様ですか?と慇懃に尋ねてくる。
 しょっちゅう旅行に行く我が家だけど、その分安いところにしか泊まっていないから、高級そうなところは久しぶりでドキドキだぁ。

 車から降りた子供たちが真っ先に気づいて駆け寄ったのは玄関横の番犬。
 ドロボウが来てもワンとも吠えない可愛らしい雪の番犬で、尻尾がぴんと立っている。
 何より子供たちを喜ばせたのは、雪の番犬の横に雪の餌皿が置いてあり、ちゃんと雪のドッグフードが入っていたことだ。
 か、かわいいね。
 玄関にいた従業員のお兄さんが、「私が作ったんです」とちょっと照れながら教えてくれた。

 旅館たにがわの玄関の玄関を一歩入ると、周辺の雑然とした雰囲気が消えて空気が変わったような気がした。
 きっちりとスリッパが並べられている。
 パパは車を駐車場に入れるため遅れていたので、私は子供たちを連れて上がった。

 品の良さそうな仲居がどうぞこちらへとティーラウンジへいざなった。
 昆布茶と和菓子が出される。
 どうやらティーラウンジでチェックインを行うようだ。
 宿帳に記載していると、パパもやってきた。
 レナがこのお菓子美味しいよとパパに勧める。
 和菓子は練乳を葛で包んだ和風ゼリーのようなものだった。

 聞かれたのは貸切風呂の利用時間と、夕食の岩魚を焼くか揚げるか。そして子供の食事を大人に近いものにするかお子さま用のものにするか。
 旅館たにがわには貸切露天風呂が二つあり、それぞれ「ひのきの湯」と「谷川の湯」と名付けられているらしい。
 どちらが良いか聞くと、お勧めは谷川の湯とのこと。谷川の湯からだけ、谷川岳が臨めるのだそうだ。ちなみに貸切でない男女別大浴場とそこに併設された露天風呂からは何も見えない。
 せっかく晴れているのでできるだけ早い時間にとお願いして、3時から谷川の湯に予約を入れて貰った。
 流石に2時チェックインでは一番乗りかと思われたが、日帰り利用の人がその前に借りていたようだ。
 夕食の岩魚は私とパパとでそれぞれ焼くと揚げるに分けて貰った。仲居は「揚げるのはなかなか珍しいですよ」と教えてくれた。

 部屋までのアプローチも、廊下や踊り場に飾られた野の花が目を楽しませてくれる。
 とにかくこの宿の良いところは花の飾り方に気を抜かないことだろう。
 もちろん子供たちのサイズに合わせた浴衣も用意してくれて、仲居は引き上げた。
 部屋は広々としていてとても綺麗だ。座布団がふっかふか。残念ながら窓からは谷川岳は見えないようだ。

 部屋で一息つく間もなく、パパは早速お風呂に出かけた。
 「あと1時間もしないうちに貸切風呂だよ?」
 「いいのいいの」
 私はやめておこう。
 大浴場は後でゆっくり入れる。なんたって2時にチェックインしたんだから。
 まずはやっぱり貸切露天風呂に入りたいじゃない。
 ちょっといい旅館に泊まるとなると、とにかくチェックイン時間になるかならないかのうちに到着する我が家。
 だって遅くに到着すると宿を楽しむ時間が少なくなっちゃう。

 旅館たにがわのサービスの一つに、「露天風呂で升酒またはアイスクリームが召し上がれます」というものがある。
 もちろんパパは升酒を頼んだ。
 もちろん私は升酒・・・も、いいけどアイスクリームを頼んだ。
 露天風呂でアイスクリーム・・・わくわくする。でもレナに全部取られちゃいそうな気もする。

 3時にパパがフロントに貸切露天風呂の鍵を取りに行き、私たちは貸切露天風呂に向かった。
 貸切風呂は階上にある。フロントとは逆の方向に廊下を歩き、さらに階段を上る。
 ちょっとした待合室のようなスペースがあって、右に谷川の湯、左にひのきの湯。
 当然谷川の湯の鍵では隣のひのきの湯のドアは開けられなかった。

 準備中の札を返して谷川の湯の戸を開ける。
 こぢんまりとしているが、きちんとした脱衣所がある。
 この脱衣所で面白いものを見つけた。
 防水のCDプレーヤーだ。
 へええ、音楽を聴きながら入浴して下さいってことかな。
 なかなか洒落ていると思ったが、何故か用意されているCDは赤ちゃんをあやすのに使うような日本の童謡とかディズニーとかで、結局使いものにならなかった。
 カップルの利用も多いだろうに、せめてクラシックとかヒーリングミュージックとかもう少し聴く人を選ばない音楽を置いた方がいいような気がする。

 お風呂は御影石に縁取られた長方形のもので、それほど大きくはない。
 白い塀が高いので圧迫感があり、さらに狭く感じる。
 ちょうど塀の奥の方が一段低くなっていて、そこから取って付けたように谷川岳が見える。
 なんというか、谷川岳を見せるために無理矢理作っている風にも見えないこともない。
 白い谷川岳は存在感がありそれは綺麗だけれど、やっぱり湯船に身を沈めたままではよく見えないのが残念。

 お湯は熱すぎずぬるすぎず、子供たちも喜んで入った。
 浴槽の底には磨いた大粒の玉砂利が敷いてあり、ちょっと歩くと痛い。
 でもこれはちょうど良い子供の玩具になって、しばらく二人はこれを浴槽の縁に並べて遊んでいた。

 お湯は無色透明・・・今回の群馬旅行では本当に全部透明のお湯だ。濁り湯でなくとも、茶色がかっているとか緑がかっているとか全然ない。湯の花が浮いている温泉もあったけど、とにかく全部すっきり澄み切っている。
 肌触りもきしきし。これも今回のお湯の特徴。片品方面など割とにゅるにゅるするお湯もあるのだが、何故か今回はきしきし系ばかり入っていた。この谷川温泉のお湯もさっき入った小住温泉に近いきしきしと引っかかるような感触がある。
 そして湯上がりにはなにかすべすべとするものがコーティングされたような感じが残る。

 私たちが脱衣所に入って直ぐに注文した升酒とアイスクリームが楕円形の樽に入って届けられたから、それを湯船に浮かべた。
 うーん、なんかちょっと贅沢な気分だぞ。
 アイスクリームは溶けてしまう前に食べなきゃいけないから少しばかり気が急くけれど。

 この貸切露天風呂は宿泊者は45分間2,500円で借りることができる。日帰り利用も可能だがその場合はもうちょっと高くなる。
 でも今回はトクーのプランに付いてきたので無料サービス(現在の旅館たにがわの宿泊料をちょっと見てみる? )。
 2,500円の価値があるかはお風呂のサイズや景観から微妙だが、それでもせっかく旅館たにがわに泊まるのならこんな贅沢気分にひたれるのは良いと思う。
 ちなみに旅館たにがわの温泉は、湯テルメ谷川でも使用している河鹿の湯と自家源泉の混合で、大浴場と大浴場に併設されている露天風呂では温度管理のため一部循環しているが、貸切露天風呂は完全掛け流しだそうだ。



 旅館たにがわの良さは子供たちにも判るようだ。
 高級なところには泊まっていないけど、宿泊の数だけはやたらと多い。
 「ここ、いい」
 カナもレナも口を揃えて絶賛した。
 そりゃそうだよね。我が家的にはなかなか泊まれないクラスのお宿だから。
 客室数35室。
 このくらいが良いのかもしれない。
 同じ料金払っても、観光バスが大挙して押し寄せるタイプの高級旅館(和風ホテル)だと、こうはいかないような気がする。
 とにかくちょっとしたところが気が利いている。従業員の教育が行き届いている。
 お客様として扱われることの嬉しさ。
 なんとなくそんなものを感じる。

 チェックインをしたティーラウンジの横に足湯がある。
 パパは子供たちを連れて足湯に行った。
 私は入るつもりはないけどとりあえずついていく。
 足湯は雰囲気はあるかもしれないけど、そろそろ日も暮れて外の温度は下がっている。悪いけどそんなところで裸足になりたいとは思わない。
 ガラスの戸を開くと冷たい風が吹き込んできた。
 「ママは絶対入らないから」
 パパと子供たちは浴衣をたくし上げて足湯に入り、細長い足湯を端まで歩いてみたようだが、ちょっと深くなっているところで子供の浴衣がぬれそうになったこともあり、適当なところで切り上げることになった。
 「寒かった」とレナ。
 だろうねぇ。

 帰りに売店を冷やかして、降りてきたときとは違うエレベーターで帰る。
 売店には谷川岳温泉納豆なる品物が。
 温泉納豆があるのは四万温泉だけじゃないらしい。



 夕食前には大浴場にも行ってみた。
 夜には入れ替えになるが、この時間は手前が女湯。
 脱衣所の床が畳なのが変わっている。
 お湯は内湯がかなり熱くて逆に露天風呂は拍子抜けするほどぬるかった。後でパパに聞いたら男湯は逆だったそうだ。

 とにかく広々としたお風呂場には他には誰もいなかったので、好きなだけのんびりとくつろぐことができた。
 露天風呂は見晴らしも無いし特にこれといって良いところがあるわけでは無かったので、むしろ木の湯船の内風呂が気に入った。大きな丸太のようなところから湯の出る変わった作りだ。
 掛け湯槽がまたちょっと凝っていて、掛け湯槽の横に生花が飾ってある。
 この宿は本当に花の飾り方が素敵だ。

 湯上がりには無料で使えるマッサージチェアもあるし、谷川温泉の源泉を冷やした冷水を飲むこともできる。
 冷やした温泉水は、舌にまとわりつくような独特の感触とさっぱりした爽やかな味わいがある。



 お食事も評判がいいんですよとチェックインの時に仲居が自慢していたが、なるほど納得の夕食だ。
 見た目がひとつひとつ凝っているだけでなく、味も濃すぎず美味しい。
 引き出し型の陶器に入った箸附の河豚の皮の煮こごりが絶品。
 岩魚は塩焼きも美味しかったが唐揚げも美味しい。
 お酒は利き酒セットを頼んだら、谷川岳・利根錦・誉国光が出てきた。
 子供たちの食事はお子さま向けのものを選んだが、それでも卓上のメニューは大人と近いように思われた。
 いつも旅館の食事をあまり食べない子供たちもいつもよりは食べた。残した分を少しでも食べたかったが、こちらももうお腹いっぱい。
 やっぱり旅館たにがわにして良かった。

 夕食後は子供たちをお風呂に連れていき、ちょうど夕方とは入れ替わったもうひとつの浴室でのんびりし、ふかふかのお布団で寝ることにした。
 夕食後に部屋に戻ってみると、もう布団が敷かれているのは当然として、新しい浴衣、冷水、そしてキャンディーが準備されていた。
 パパは子供たちになめていいよなんて言ってしまったが、よく読むと、このキャンディーは朝用らしい。
 ふむ。血糖値が低くて寝起きの悪い人に気持ちよく目覚めて貰おうという飴なわけね。
 子供たちのアメニティ袋をのぞくと、専用の可愛らしい歯磨きセットも入っていた。
 こういうところが子供たちの気を惹く。
 「またここに泊まりたいよ」
 うん。気持ちはよーく判るよ。
 パパもママもできるならまた泊まりに来たいよ。

最終日「最後の最後まで旅館たにがわで」へ続く


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