後でHIROさんに聞いた話では、男湯は先客がいて、既に適温までぬるめられていたそうだ。
そして窪湯を出るときに私は気づいた。
ドアの内側に木の板が打ち付けてある。
これを回転させて挟めばドアが閉まりきらないようにできるのだ。
男湯はこれを挟んで開けっ放しにしてあったようだ。
湯宿温泉の共同浴場は基本的に鍵が無いと入れないが、地元の方や鍵を持っている人がこの板を挟んでくれた場合だけ、鍵のない外来者でも入ることができるというわけか。
ということは、とにかく湯宿宿泊者をのぞき、
共同浴場に入りたい人は行ってみないと入れるかどうか判らないわけだ。夕方の入浴客の多い時間帯なら開いている確率は高いだろうが、今回の窪湯のように男湯だけ入れて女湯は鍵が無いと入れないということもあるし。
ドアの横に手書きの張り紙があった。
「ドアの止めてある木をいじらないで下さい 世話人」
これは木を挟むなという意味だろうか?
それとも挟んである木を外すなという意味だろうか?
どちらにせよ、地元の人でない私たちは触ってはいけないという意味だろう。
この木がドアの横から外されて、完全に鍵無しでは入れない日が来ないよう、私たちはもらい湯の精神を忘れてはいけない。