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◇◆冬の群馬◆◇
雪煙と湯煙旅

1.迷い迷って湯宿温泉



初日 2008年2月9日(土)


 お金は無くても旅が好き。
 節約したり工夫したりしながら毎月のようにどこかしら旅に出ていた私たち一家。
 ところが楽しみにしていた年末年始。
 例年のように新潟県の松之山温泉近くにある貸民家で過ごす予定だったのだが、あいにくとパパが体調を崩し、あえなく旅行予定は消えてしまった。

 といっても、年末年始は貴重な休暇で、去年後半から土曜日も仕事のあるパパは、もうなかなか次の連続休暇が取れない。
 2月の三連休だって土曜日は出勤・・・。

 いや、それでも行くのだ。
 友人達が待っている。
 夕方仕事を終えたパパは家族を乗せて、黄昏の関越道を北上する。
 東京ではぽつりぽつりとフロントガラスに雨粒が当たっていたが、埼玉に入る頃にはそれは白い雪に変わっていた。


 「ただ今、自宅を出て湯宿に向かいます」
 到着が遅れることは幹事のえんぴつさんに伝えてあったが、一応出発したときにメールを送ることにした。
 宛先はえんぴつさんと、友人のyuko_nekoさんの携帯。
 えーと・・・
 そこまで書いてふと思った。
 そういえば泊まる宿はどこだっけ?
 湯宿温泉だってことは知っている。でも宿名を忘れちゃった。
 「・・・あれ? なんて名前の宿だっけ?」と続けた。
 即座にyuko_nekoさんから返信が来た。
 「みよしやですよ〜」
 おお、サンキュ。というか、宿名確認しないで出発するのは私ぐらいか。
 おまけにyuko_nekoさんからはその後すぐに湯宿温泉の共同浴場の画像が添付ファイルで届いた。
 もう一風呂浴びてるのね。
 くーっ、羨ましがらせようと思って〜。

 まもなく花園IC。
 空はますます暗くなってきた。
 ヘッドライトに照らされたところだけ、フロントガラスにぶつかってくる雪が光っている。
 車酔いをするレナが寝付いて、つまらなくなったのか姉のカナも寝てしまった。
 湯宿温泉に到着する前にどこかで夕食をとろうと思っていたが、これはレストランではなくコンビニか何かを探した方が良さそうだ。
 寝起きで機嫌の悪い子どもたちを連れて、店に入るのはやめにしたい。車の中で食べさせちゃった方がいいかもしれない。

 再び車の中からyuko_nekoさんにメールを送った。
 「月夜野から湯宿への道すがら、店あった?」
 すぐに折り返し電話が掛かってきた。
 「食事処は月夜野ICより沼田ICの方がいろいろあるよ。どっちから来ても時間は同じくらい。コンビニなら両方にあった」
 電話の後ろでがやがや言う声が聞こえる。
 もうみんな集まって飲み始めているのかもしれない。
 「何故か納豆ならいっぱいあるよ。小枝パパが持ってきてくれたの。蕎麦もあるよ」
 小枝子パパは四万温泉の蕎麦屋の主だ。
 「ありがと〜う」



 湯宿に着いたのは夜の7時過ぎ。
 もうあたりは真っ暗だ。
 国道17号線を走っていると大きな赤い橋の下を潜る。
 すると右側に斜めに入る細い道があり、湯本館の矢印が見えた。
 湯宿温泉と言えば湯本館と金田屋ぐらいしか名前を知らない。とにかく曲がってみよう。

 暗いのでよく判らないが、どうやらこの道の両側に民家に混じって温泉宿が点在しているらしい。
 みよしや、みよしや、みよしや・・・。
 なかなか見つからない。すぐに判るかと思ったんだけど、おかしいなぁ。
 細い道は行き止まりになった。正面が湯本館。
 駄目だ、湯本館に入っちゃいけない。
 仕方なく左折する。左折した道はすぐに17号に出てしまう。

 yuko_nekoさんに泣きつくことにした。
 電話を掛ける。
 「湯宿に着いたところなんだけど、みよしやってどの辺?、今ね、斜めの細い道を湯本館前まで来て、直角に左折したところ。また17号に出るけど・・・」
 yuko_nekoさんだけでなく、やっぱり後ろでがやがや聞こえる。
 「えーとね」
 雑音が多くて聞き取り難いし、向こうも私の電話の受信状態がよくないらしく途切れ途切れになっているようだ。
 とにかくやりとりの結果、さっきの細い道に入るところまでは合っていることが判った。
 「義満さんに代わるね」
 電話がyuko_nekoさんから義満さんに代わった。義満さんも草津や四万のオフで何度もお会いしているよく知っている方だ。
 「石畳の道を入って、右手に駐車場があるよ」
 まず石畳の道と言われても暗いのでどこのことだか判らなかったが、話の流れからして斜めに入った細い道のことだろう。
 右というのはどっち向きに走った場合だろう。
 「登って行くなら左手だ」
 えーと、斜めに入った場合は登りになるから左か。
 ・・・みよしや、みよしや・・・。
 「あー、もう湯本館に着いちゃうよ。それじゃ行きすぎですよね?」
 「行きすぎ行きすぎ」
 「でもみよしやなんて無いですよ。今、ちょうど左手にみやま荘の駐車場って書いてあるあたりにいます」
 「何言ってるの、だからそれだよ」
 へ!?
 「だ、だって、『みやま荘』じゃなくて『みよしや』だって・・・」

 と、電話口で言ったところで、走ってきたちび姫ちゃんが見えた。
 ちび姫ちゃんは小学五年生のyuko_nekoさんの娘だ。
 「こっちこっち」

 とにかくみやま荘の駐車場に車を停めて、私たちはちび姫ちゃんの後をついていった。
 ところがこれまた・・・。
 「あれー?」
 いきなりちび姫ちゃん、道に迷ってしまった。
 ・・・。
 曲がる道を一本間違えていた。みやま荘は、駐車場から徒歩20秒のところにあったというのに。



 みやま荘という名前からして、民宿に毛の生えたような古い宿を想像していたが、意外にもとても綺麗な宿だった。
 こぢんまりとしているが、改装したてということで、外も中もぴかぴかだ。
 私たちが案内されたのは三階の「和み」という部屋で、ちび姫ちゃんの部屋は斜め向かいだった。
 既にお布団が敷いてあって炬燵もある。広くは無いが居心地が良さそうだ。

 早速夕食を終えたというちび姫ちゃんが早速カナやレナと遊び始めたので、パパと私は子供達を部屋において、みんなが夕食を食べている一階の宴会場に降りていくことにした。

 「遅くなってごめんなさ〜い」
 がらっと宴会場の戸を開くと、みんなが一斉にこちらを見た。
 お会いしたことがあるのは幹事のえんぴつさんと消しゴムさん、それから義満さん、yuko_nekoさん、がっちゃん、ちび姫ちゃん、小枝子パパ、hiroさん、初対面なのはakemiさん、きんちゃんさん、きんちゃんさんの奥さんのぶーちゃんさん、あかがねさん。
 「ごめんなさいっ」とyuko_nekoさん。
 「でもね、でもね、私だけのせいじゃないんだよ。メールに『みよしや』って書くときに、隣にいた幹事のえんぴつさんに『みよしやだよね?』って確認したんだよ。そうしたら、えんぴつさんが『そうです』って言ったんだもん」
 「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」とえんぴつさん。
 幹事自らかいっ。
 「あーでも、元はと言えば泊まるところも確認しないで出てきた私が悪いんだよね、ごめんごめん」
 でもさ、私いつも旅行に出るとリアルタイムで旅行記をアップしちゃうじゃない。既にメールのやりとり含めてネットに『みよしや』に泊まるって出ちゃってるよ。

 というわけで、この後しばらくはえんぴつ幹事は「みよしや女将」と呼ばれるのであった。

 夕食が終わって部屋での宴会の前に一風呂浴びてきたい。
 目当ては湯宿の共同浴場。
 湯宿温泉はこぢんまりとした温泉地にも関わらず、四つも共同浴場を有している。
 以前は今以上の頻度で群馬に通っていた私は、前々から湯宿温泉の共同浴場に入ってみたいと思っていたが、子供に向かない熱い湯であるということと、何やらシステムがよく判らなかったことから、未だに一ヶ所も入ったことがなかった。
 ものの本によると、鍵が掛かっているらしい。
 また、鍵が掛かっているが、前の人が開けておいてくれるので鍵を持っていなくても入れるという話も読んだことがある。
 また、別のガイドブックに寄れば夕方でないと入れないという記述もあった。
 またまたとある本では無料で入れるとも記載されている(これはその本が誤りで、外来者は湯宿温泉宿泊者であろうとなかろうと100円を払うのが基本・・・というか礼儀である)。

 何が何だかよく判らないが、とにかく今回は湯宿温泉そのものに宿泊するわけだから、大手を振って入らせてもらえると思っていた。
 外来者が共同浴場に入れるのは夜の9時までだそうだ。
 みんなの夕食が終わったのが8時近く。
 私はそわそわと鞄からタオルを取り出した。

 既に夕食前に共同浴場の松の湯と竹の湯に入ってきたyuko_nekoさんが連れていってくれることになった。
 子供達は寝る前に宿のお風呂に入るだけでいいと言うので、私とパパとyuko_nekoさんとがっちゃんの四人で出かけることにした。
 「共同浴場っていくら?」と聞くパパに、
 「百円」と返答して、それからちょっと考えると私は自分でも三つぐらいの百円玉を袋に入れた。
 入るのは一ヶ所だけとは限らないものね。

 私たち四人はタオルを手に雪がはらはらと降っている夜道を歩いた。
 さきほど迷って何度かぐるぐると回った石畳の道だ。
 街灯がぼうっと辺りを照らしていて、木の枝や蔵の屋根に積もった雪が白く光っている。
 いつの間にかがっちゃんの手には共同浴場の鍵。
 私は滑らないように足下に注意して歩いた。

 「あれー、おかしいな」とyuko_nekoさんが呟いた。
 どうも今日はみんなで道に迷う日と決まっているらしい。
 「この辺で右に入るんだよ。狭くて判りにくい道なんだけど・・・」
 がっちゃんがもう過ぎちゃったんじゃない?と言うが、yuko_nekoさんはもっと先かもしれないとずんずん歩いた。
 しかし、
 「・・・竹の湯まで来ちゃった。やっぱり行きすぎだ」と溜息をついた。

 石畳の道の左手に野沢辺りにありそうな共同浴場の建物が建っている。
 「ここじゃないの?」
 「ここは竹の湯。さらっとしたお湯なのよ。先にとろっとしたお湯の松の湯に連れていってあげようと思っていたんだけど」とyuko_nekoさん。
 竹の湯にも興味がありそうな私を見て、がっちゃんが鍵を渡してくれた。
 鍵を開けると、シンとして見えた竹の湯だったがたたきには一足の靴が揃えておかれていた。
 「誰か入っているみたい」
 私たちは竹の湯を後にして、もう一度松の湯に至る小径を見つけようと引き返していった。

 「この辺かなぁ」
 雪の夜道は何処も同じように見えてとにかく判りにくい。石畳の道は一本だし、距離にしたってほんの十数メートルのことだと思うのに。
 ところが迷っているのは私たちだけじゃなかった。
 前方からえんぴつさんとakemiさんの二人が歩いてくるのが見えた。
 あれっ? お互いお風呂ー? なんて会話を交わしてすれ違い、ふと後ろを振り返ると、何とえんぴつさんたちも竹の湯の前で立ち止まり、「行きすぎたー」と叫んでいた。
 ・・・目的地は同じかい。
 しかも同じパターンで迷っているし。
 笑い話か?

 ようやく私たちは松の湯に至る道を見いだした。
 本当に道だか他人の家の敷地内だか判らないような道だった。これは知らなかったらとても辿り着けない。
 引き返してきたえんぴつさんとakemiさんも追い付いてきた。

 小径の右手に松の湯は建っていた。
 外観を撮影しようにも、全体が入らないくらいに道が狭い。
 ちょうどお風呂上がりの地元の方が一人出てきた。
 「今、ちょっと混んでいるわよ」
 それを聞いてえんぴつさんたちは松の湯を諦め、他へ行くことにしたようだ。
 私たちはせっかくだからと、まずは中の様子を見せてもらうことにした。

 松の湯は竹の湯と異なり扉そのものに鍵穴はなかった。
 かんぬき式になっているようだ。そして今は地元の方が入っているせいか、かんぬきは掛かっていなかった。
 ここは扉を開けるといきなり浴室だ。
 狭い脱衣所がそのまま浴槽のあるスペースに繋がっている。
 そのせいか全体にむわむわと湯気が籠もり湿度が高い。
 野沢、草津など共同浴場にはときおり見られる作りで、防犯効果も高いと思われる。難点と言えば、服が湿ったり床がびしょびしょになりやすいことだろうか。

 「お金、ちゃんと入れた?」
 へえーと物珍しそうに辺りを見回していた私はその一言でハッと我に返った。
 「そこよ」
 入浴中の地元の方が壁を指さすと、確かにそこに善意の箱なる料金箱が据え付けられていた。
 もちろん無銭入浴しようとしたわけじゃない。
 でもそう思われたのかなと思うとちょっと悲しい。
 といっても、管理人のいないのを良いことに無銭入浴どころか浴室の備品まで盗んでいく悪いやつがいるという話をあちこちの共同浴場で聞かされている。地元の方が疑心暗鬼にかられる気持ちも分かる。
 とにかく100円玉をチャリーンと箱に入れて、私たちは浴室に入った。

 浴室に入るか入らないかのうちに、男湯側から声がした。
 「おーい、タオル持ってない?」
 パパはどうせ私が何枚か持っているだろうと、自分はタオルを持たずに入ってしまったらしい。
 ちょうど男湯と女湯の境の壁が、天井との間、少し隙間が空いている。
 背伸びしてそこからタオルを出した。

 松の湯の浴室は共同浴場らしい質素な造りで、床と風呂の底はタイル張り、浴槽の縁はコンクリを固めて長方形にしてある。
 横に小さな源泉槽のようなものが付いていて、もっとお風呂に近づくと、お風呂そのものは下で男湯と繋がっていることが判った。
 一応格子がはまっているが、手や足を突き出せば反対側から触れそうだ。

 お湯はとても熱いことを覚悟していたが、意外にも適温だった。
 どうも先に入っていた地元の方が加水していたようだ。
 何か甘い石の臭いがする。
 どこで嗅いだんだか、石の臭いが甘いというのも変だけどとにかくそんな感じの懐かしいような臭い。
 とろみがあって無色透明ながら、ところどころ茶褐色の湯の花が少し舞っている。
 肌触りは軽いきしきし感。
 私の横で、既にyuko_nekoさんは地元の方と話し込んでいる。
 地元の方は、湯宿に来たのは初めてなのかとか、どこのお風呂に入ったのかなどいろいろ聞いてくる。
 しまいには、私たちがみやま荘の客だと知ると、7時頃に駐車場に着いた車からファミリーが降りたとか(私たちのことだ)、5時頃にカップルが連れ立って歩いていたとか、なかなかチェックが厳しい。小さい温泉地ゆえ、何もかも見張られているような気すらしてきた。
 「湯宿がね、明日テレビに出るのよ、NHKの」
 「ふだん着の温泉でしょ」とyuko_nekoさん。「どこが出るんですか?」
 「ここじゃないけど、窪湯がね、映るのよ」と、その地元の方。
 窪湯というのはこの松の湯同様、湯宿温泉にある四つの共同浴場のうちひとつだ。私はまだ場所を知らない。yuko_nekoさんは以前来たときに入ったことがあるようだ。
 「テレビに映ったらまた人気が出ちゃいますね」
 「・・・まあね」
 地元の方はちょっと複雑そうだった。

 私たちが入っている間に一人二人上がっていって、また一人二人新たに地元の方が入りに来た。
 ここは一種のサロンになっていて、何となくこの時間帯は客足が途絶えることはないようだった。

 男湯からのそろそろ上がるよコールを聞いて、私たちも上がることにした。
 とてもよく温まっている。
 凍てつく雪道に出ると、自分からほわほわと湯気が立ち上りそうだ。
 パパとがっちゃんとyuko_nekoさんの三人は真っ直ぐ宿に戻るというので、私は一人、さっきちらっとのぞいただけの竹の湯に寄って帰ることにした。
 がっちゃんがオレンジ色のバーとピンクのプラスチックのタグのついた共同浴場の鍵を渡してくれた。
 バーには「湯宿共同湯維持会」と、タグには「みやま荘」と書かれていた。

 細い脇道沿いにある松の湯と違って、さっきのぞいた竹の湯は、まさに石畳の道沿いの目立つところにあるので、方向音痴の私でも迷うことはない。
 松の湯を諦めて竹の湯に行ったと思われたえんぴつさんたちの姿もなく、竹の湯はシンと静まり返っていた。松の湯の賑わいとは対照的だ。

 男湯と女湯の戸の間に、可愛らしい赤いポストがある。
 このミニチュアのポストは郵便物を入れるためのものではない。詠んだ俳句を入れるためのもののようだ。
 中は松の湯と異なり、ちゃんと脱衣所と浴室が別れている。
 誰もいないので真っ暗で、電気のスイッチを探してしばし逡巡した。

 お湯はこちらはすっきりと熱く、熱い分、とろみとか肌触りを楽しむ余裕は無い。そのかわり何故か甘い臭いはこちらの方が強く感じる。
 浴槽はほぼ正方形。床は松の湯同様タイル張りだが、浴槽と壁は石でできている。全体的に松の湯より新しく綺麗な感じだ。
 湯の花は見つからない。完全な無色透明。
 男湯の方は誰か入浴しているらしく、ざざーっとお湯を流す音が聞こえるが、女湯は独占貸切状態。
 ふぅ〜。
 温泉に入るのは年末のさやの湯処以来、旅行に来たのは11月の四万たむら花湧館以来だから3ヶ月ぶりか・・・。
 家のお風呂は疲れたときは入るのも面倒くさくなっちゃうけど、やっぱり温泉はいい。それも旅先の温泉は。
 久しぶりの温泉が湯宿の共同浴場で幸せだ。

 帰りがけにもう一度松の湯に寄って、もし誰もいなかったら浴室の写真だけ撮らせてもらおうと思った。
 でも、やっぱり松の湯は大盛況で、ドアを開けるまでもなく外まで賑やかな話し声が聞こえてくる。
 まもなく9時・・・地元の人たちだけの時間になる。

 粉雪が降り続く中、みやま荘に戻った。
 フロントには誰もいない。
 鍵の返却場所が判らず、フロントの台に置いておいた。
 たぶんもうみんなは宴会しているだろう。
 でもまだ私にはやらなきゃいけないことがある。

 やらなきゃいけないこと、それは・・・
 子供たちをお風呂に入れること。
 相変わらず部屋で遊んでいる三人を連れてみやま荘の大浴場に行くことにした。
 大浴場はさきほどみんなが夕食を食べた宴会場の先にある。
 真っ先に服を脱いだちび姫ちゃんが、お風呂に手を突っ込んで「ぬるいよ」と教えてくれた。

 みやま荘の脱衣所と大浴場も、みやま荘自体がリニューアルしたてなのだから同様にとても綺麗で清潔だった。
 本当に宿泊予算から言うと有り得ないぐらいの設備だ。幹事のえんぴつさんと消しゴムさんはよくこんなに良いところを見つけたなぁ。
 木の縁を持つ長方形の浴槽はかなりの高級旅館と言っても不思議は無いような造りだ。
 先ほど松の湯で同浴した地元の方によると、湯宿の源泉は一本だけということなので松の湯も竹の湯もみやま荘も同じお湯ということになる。
 ただ、みやま荘では適温になるよう最初から加水されている。子供たちにもちょうど良いお風呂だった。
 私は入ってきたばかりだから子供たちの引率だけで入らなかった。
 夜、寝る前か、明日の朝風呂のお楽しみにしよう。



 ようやく必要なことを全部全部終えて、みんなが宴会をしている部屋に私が着いたのはもう9時半頃だった。
 私をのぞくメンバーはとっくに飲み始めていて、後から来た私が座る場所も無いくらいだった。
 振り返ると部屋の入り口はスリッパが折り重なるように散乱している。

 みんなのおしゃべりの中身はここには書かない。
 そのときその場にいた人たちだけが共有した瞬間と言うことで流してしまおう。
 ただ、とにかく楽しくて可笑しくて、何度も笑い転げていたような気がする。
 いつの間にかがっちゃんが消え、うちのパパが消え、その後私ももう限界と部屋に戻って寝てしまった。
 他の他の人たちは午前五時頃まで飲んでいたようだ。
 がっちゃんが五時頃ふと目を覚まし、「朝だから」という一言メールをyuko_nekoさんに送ったことからお開きになったらしい。
 ちなみにakemiさんが部屋に戻ると、ずいぶん前に部屋に戻って寝ていた同室のえんぴつさんが目を覚まし、二人でまた夜明けまで話を弾ませてしまったということで、たぶん今回の鉄人賞はakemiさんと思われる。

二日目「湯宿から片品へ」へ続く


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