1.ほったらかし温泉とかつぬまぶどうまつり
夜明け前の首都高。
久しぶりだ、この景色。
「このところずっと関越にばかり乗っていたからな」とパパ。
無機質なビルの窓に朝焼けが映っている。
今回の旅行先は山梨県。
甲府盆地から河口湖方面に伸びる御坂路沿いにある御坂路さくら公園キャンプ場に友人のyuko_nekoさん一家と遊びに行く。
初日 2007年10月6日(土) |
「もう渋滞始まっているのかな? 圏央道渋滞?」
八王子ジャンクション手前。だんだん詰まってきたかと思うとほとんどのろのろ運転になってしまった。
まだ6時を過ぎたばかりだよ。みんな早起きだな・・・と思ったら、違う違う、事故渋滞だ。
反対車線で大型トラックが思いっきり横転している。
これの見物渋滞だったのか。
でも安心したのもつかの間、相模湖ICの手前では2キロほど本物の渋滞に突っ込んでしまった。
行楽日和の秋の三連休。
ドライバーはみんな眠そうに目をこすっている。
ここで少し本日の予定を書いておこう。
yuko_nekoさんたちは用事があるので遅く出発して、夜の6〜7時を目処にキャンプ場に入る予定。
私たちは渋滞回避のために早朝に出発したので、これから真っ直ぐに
ほったらかし温泉に行って、その後は勝沼ぶどうまつりを覗いてみようかなと思っている。
ほったらかし温泉は日本一の絶景露天風呂として名高い。
山の
馬曲温泉や海の
不老ふ死温泉や絶景風呂にはいろいろ入ってきたけど、日本一の山、富士山が見える温泉には敵わない。
以前に一度、埼玉の秩父でキャンプした後ほったらかし温泉に行こうと思ったことがあるが、山梨に入ったら急に曇ってきたので、結局
正徳寺温泉初花に行ってしまった。
やっぱりほったらかし温泉に行くのは晴れ渡った日じゃないと。
朝7時過ぎ、石和温泉近くのマクドナルドで朝食。
それから140号線を越えて、山を登り始めた。
ちょうど甲府盆地の東側、笛吹川とその支流が作り出した平地を挟み、対岸に盆地と富士五湖の間にそびえる山地が見えていて、その山の間から小さく富士山が端麗な顔を覗かせている。
富士山を見ると言えば山梨か静岡というイメージがあるが、甲府盆地の辺りから見る富士山は、頭の方を他の山の間から覗かせているだけでインパクトが薄いという印象があった。
ほったらかし温泉もこんなものなのかなぁと思ったが、自分が高度を上げていくに従い、富士山もせり上がってきて、笛吹川フルーツ公園まで登るとかなり見晴らしが良くなってきた。
確かほったらかし温泉はこの笛吹川フルーツ公園の近くにあるはず。
ほったらかし温泉の
公式サイトを見ると、「!!!カーナビで当温泉の検索をすると別の場所に案内されます!近隣施設を参考にお越し下さい!!!」と書いてある。
わざわざここに書くということは、よっぽど道に迷う人が多いと思われる。
近隣施設っていうのはつまり、笛吹川フルーツ公園のことだろう。
ということは、とにかく笛吹川フルーツ公園まで行けばあとは看板があるんじゃないかな。
そう思っていた。
そう思ったのはたぶん私たちだけじゃないと思う。
何も考えず道を登り、笛吹川フルーツ公園の入り口ゲートを潜り、笛吹川フルーツ公園の第二駐車場を過ぎ、第一駐車場を過ぎたところで、はたと車を停めた。
第一駐車場の入り口を過ぎた目の前に『カーナビが間違いです ほったらかし温泉 少し戻って「笛吹川フルーツ公園」の中を通り抜けて下さい。公園内「ぷくぷくの湯」より1キロ先です』と書かれた看板があり、その文字の下に右側に矢印の矢の着いた下向きのUターンマークが書かれていた。
案の定、迷ったのは私たちだけじゃないようで、私たちの後ろから来た大宮ナンバーの車も同じ看板の前に停まってしげしげと文字を読んでいた。
「???」
山を登り出す前の曲がり角にはほったらかし温泉の看板だか幟だかがあったよ。
でもフルーツ公園のゲートを潜ってからは、どこにもほったらかし温泉はこちらといった看板も幟も見あたらず、いきなりこの「間違いです」看板でしょ。
フルーツ公園の中を通り抜けるのはよく判ったからさ、今既に公園の敷地内にいるのだから、どこで曲がったらほったらかし温泉に着くのか、そこんところを明記して欲しいよ、この「間違いです」看板と、本来のほったらかし温泉に続く曲がり角とかに。
Uターンマークに従って私たちはUターンした。
公園入り口のゲートを潜ってから2箇所ぐらい曲がり角があったような気がする。そのどちらかかなぁ。
一応その曲がり角を両方曲がってみたが、どちらも正しく無いようだった。
あの大宮ナンバーはどうしたろうか。私たちより先に正しい道を見つけて温泉に着いちゃっただろうか。
ぐるぐる回ってパパもいらいらしてきたみたいだし、子どもたちも後部座席から「ねぇ、道に迷ったの? 同じところを何度も通っているよ」と言い出した。
おっかしいなー、どこで曲がればいいんだろう。
仕方なく、車の中でパソコンを開いてほったらかし温泉公式サイトのアクセス頁を見た。
地図は公園内に入ってからどう行けば良いのかの参考にはならなかったが、文章でアクセスを書いてあるところに「笛吹川フルーツ公園第一駐車場の中に入り通り抜ける」の一言が。
だ、第一駐車場だー?
第一駐車場と言えば、例の「間違いです」看板が立っていた所じゃない!!
つまり「間違いです」看板から3メートルバックして左に見えている駐車場の中に入れば良かったわけ?
酷い・・・。
だったら「間違いです」看板にそう書いてよ。あの看板を見る限り、もっと手前に曲がるべき道があるみたいだし、おまけにあのUターンマークは右の方に曲がる錯覚を覚えさせる。曲がるべき方角は右じゃなくて左でしょ。せめて矢印をもっと正確に書くとかさ!!
何より「間違いです」なんて書かないで、その看板に「フルーツ公園の第一駐車場を通り抜けて下さい」って書くべきじゃない!!
っていうか、第一駐車場の入り口に「ほったらかし温泉はこちら」って一言書けば「間違い」云々からして不要じゃない!!
ぶつぶつ言っても仕方がない。時間のロスも勿体ないけど、諦めて正しい道を行こう。
駐車場の中を通り抜けると、今度は一本道にも関わらず、数メートルおきに「ほったらかし温泉→」の看板がある。
腹立つなー。一本道に看板を置く暇があったら第一駐車場の入り口に置いてくれ!!
笛吹川フルーツ公園、フルーツパーク富士屋ホテル、窯元 六鵬窯とどんどん高度を上げ、ついに突き当たりにほったらかし温泉があった。
でもこれはまた、早朝の山の中とはとうてい思えない大混雑。
駐車場の車の数はいくつぐらいあっただろう。
280台のキャパのところ、既に100台ぐらいは停まっていたような気がする。
車から降りたパパは信じられないという顔をした。
「なんでこんなに混んでるの?」
なんでって・・・有名だから。
それに考えることはみんな同じだから。
秋の三連休。渋滞必至。道路が混み始める前に家を出て、朝早く現地に着きすぎたとしても、なんとほったらかし温泉は日の出の一時間前から営業している。ここでお風呂に入って小休止。観光地がオープンする時間に山を下りればいい。
ほったらかし温泉は平成11年にオープン、さらに4年後には浴場をもうひとつ増やして、以前からあるものを「こっちの湯」、新しく作ったものを「あっちの湯」と名付けた。
「あっちの湯」と「こっちの湯」は両方とも富士山を望む絶景ぶりは変わらないが、使用源泉と浴槽の広さ、営業時間などが異なる。
今回目指したのは「あっちの湯」。
朝10時から夕方5時までの「こっちの湯」と違い、「あっちの湯」は先ほども書いたように日の出前からオープンしている(終了も甲府盆地の夜景が楽しめるように夜10時まで)。
駐車場から建物のある方へ歩いていくと、やけにリアルなかかしのような人形が立っていて、その側にサイコロが置いてある。
サイコロの目には「あっち」と「こっち」しかない。
つまりどっちに入るか迷ったらサイコロを振れということらしい。何しろ一回600円の入浴料では片方しか入れないから。
でも今回は迷いようがない。
朝8時半では「あっちの湯」しか開いていない。
「あっちの湯」はかかしに向かって左手。階段を降りていくようになっている。
ここからも山並みの上に綺麗に富士山が見えている。
湯船からもあの景色が見えるのかしら?
トタン屋根を貼った板の階段を降りていくと、プレハブの受付があって、三角の笠を被ったおじさんが番をしていた。
入り口の横にある券売機でチケットを買って支払うようになっている。
下駄箱付近にも大勢の観光客がいた。
脱衣所がまたちょっと不思議。
もちろん建物の中にもあるのだが、一部は建物の外にある。
外の方が空いているようだったので子どもたちを連れて外に出た。
「おおー」
思わず声が出てしまうほど見晴らしが良かった。
外の脱衣所は屋根はついているが本当に外で、一段低くなったところに広い岩の浴槽が、また右手には脱衣所と同じ高さのところに木の浴槽がある。
ちょうどこの外の脱衣所自体がお風呂と広がる景色をいっぺんに眺められるベストポジションだった。
それにしても凄いなー。
二段になったお風呂の下は、うっすらと霞む甲府盆地。
そしてその向こうには、青い山々が屏風のように連なり、その一角から完璧な形の富士山が・・・。
この開放感は、他では有り得ない・・・有り得ないよねぇ。
実は子どもたちはお風呂には入らないと言っていた。
昔は親が言うままにどんな温泉にも入っていたが、最近は入りたいときは入るし、入りたくないときは入らないとはっきり言うようになっている。今日も朝からお風呂に入る気分では無いようだった。
それがカナもレナもこのお風呂を見たとたん目を丸くしてしまい、「入ってもいい?」と言い出した。ほったらかし温泉には思わず子供も入りたくなる力があるみたい。
子どもたちはさっさと岩風呂の方に行ってしまったので、私は先に上段の木のお風呂に入った。
長方形の湯船でこれもかなり広い。
木の湯口から出るお湯はぬるめでのんびりと入っていられそう。
すっごいなー。
もうこの言葉しか出ない。
いや本当にえらいところに露天風呂を作ったものだ。
景色には感心しきりだったが、やっぱり朝早いにも関わらず少々混みすぎ。昼間や夕方はもっと混むかもしれない。
このお風呂を独占して入れればもう何も言うことはないが、町からも近いし名前は売れているしで仕方がないのだろう。落ち着くかどうかという点では、もっと山の中にある馬曲温泉の方が個人的には好きだ。
階段を降りて下の岩風呂にも入ってみた。
下の方が広いようだし、隣にもうひとつ半身浴できそうな浅めの浴槽がついているが、眺めの点では上の木の浴槽に劣る。
上より少しばかり熱めだが、それでも基本的にはぬるめの温泉だ。
お湯はすっきり無色透明。但し細かい湯の花はお湯の中に沢山漂っている。
肌触りはきしつく感じで、乾くとさらさらしてくる。
誠に残念に思うのは水道水のような塩素の臭いが強いこと。
揺れるススキと秋桜が秋の色。
三連休の天気予報では、三日間のうち最後の一日を除いて晴れることになっていたが、それでも快晴とはいかない。
青空に綿を散らしたような白い雲がいくつも。
見ているうちに雲の一つが富士山にまとわりつき、ゆっくりとその姿を隠してしまった。
朝一番に来て正解。
真冬でもない限り、ここから日中にくっきりと富士山を見るのは厳しいかもしれない。
洗い場と内風呂もあったが、景色に満足してしまったのでそちらは通過しただけ。
ほとんどを上段の木の浴槽で過ごしてしまった。
のんびり入ってあがると、もうパパと先に上がった子どもたちは展望テラスで涼んでいた。
私たちは事前にほったらかし温泉の公式サイトを見て、軽食スタンドはあるが営業時間が10時から22時までだと知り、ここに来る前にマクドナルドで朝食を済ませてきた。
ところがいざ来てみると、朝食処きまぐれ屋と書かれた看板が立っていて、こちらも日の出からの営業だった。
メニューはご飯とみそ汁、又はパンとカレースープ。値段はどちらも400円。
きまぐれ屋という名称からして、もしかして常にやっているというわけではないのかもしれないが、ここで朝食が食べられると知っていたら真っ直ぐ来たのに。
何となくフルーツ公園第一駐車場前の「間違いです」看板といい、その場しのぎが多くトータルでの計画性に少々欠けるところがある施設だと思う。
本日、次の目的地は甲州市かつぬまぶどうまつり会場。
かつぬまぶどうまつりは50年以上の伝統を持つ勝沼の祭りで、勝沼の名産品である葡萄の収穫を祝い、ぶどうの無料配布、ワインの試飲、鳥居焼、花火などのイベントが行われる。
かつぬまぶどうまつりは一昨年までは勝沼町最大の祭りだったそうだが、町が塩山市や大和村と合併して甲州市となったため、今は甲州市かつぬまぶどうまつりと名を変えている。
会場である甲州市勝沼中央広場公園は旧勝沼町の中心部に近く、当日は隣接する中学校の校庭も臨時駐車場となる。
ところがカーナビにこの勝沼中央広場公園を入れたところ、住宅街の中のような渋い細道ばかり案内し始めた。
呆れたパパはせっかく渡った笛吹川をまた戻ってまで国道に出た。
細い道は何故かゼッケンをつけた若者が沢山歩いていた。何か歩く大会みたいなものをやっていたのか?
ようやく会場近くまで着いた時刻はジャスト10時。
お祭りの開始は9時45分で、催しはだいたい10時からだったから、ちょうど良かったのではないかと思った。
ところが、既に中学校の校庭を利用した臨時駐車場は満車だった。
私たちの前の車も入れず、交通整備をしていた係員に別の駐車場を教えてもらっていた。
私たちも窓を開けて教えてもらう。
この先をUターンして信号のところを左。シャトレーゼの駐車場を使わせてもらう・・・と。
Uターンして信号を左に曲がったがそれらしい駐車場は無い。あまり離れると会場まで歩くのが大変だ。
道の途中で右手からぞろぞろと歩行者が出てきた。
「あの人たちが来た方に駐車場があるはずだ」とパパ。
信号まで戻り、曲がらずに直進したらすぐにシャトレーゼが見つかった。信号で左に曲がるんじゃなくて、信号を越えたところで左手にあるんだった。
なんだシャトレーゼってお祭り会場の臨時駐車場になるくらいだから何か公共の施設の名称なのかと思ったら、フランチャイズ・ケーキ屋さんのシャトレーゼだったのね。
今まで知らなかったがシャトレーゼという会社は実は勝沼生まれだった。
正確にはシャトレーゼの前身である大和アイス株式会社と有限会社甘太郎の二社のうち、前者がそうなのだが。
そして洋菓子製造だけでなく、平成12年からはワイナリー事業もスタートし、このかつぬまぶどうまつり臨時駐車場に使われているのはそのシャトレーゼワイナリーの敷地だった。
ここは駐車場としてだけではなくぶどうまつり臨時送迎バスの発着所にもなっている。
どうりでここから祭り会場まで絶えることなく人の列ができているわけだ。
お祭りはまだ始まったばかりだというのに、駐車場もバス発着所も凄い人出で人気のほどが伺える。
「レジャーシート持った?」と私。
「いや、いらないだろう?」とパパ。
たぶん私とパパで想像しているかつぬまぶどうまつりのイメージが異なるような気がする。・・・まあいいか。
会場までは細い路地など抜けて行くが、その途中にあるぶどう園などでもこれ幸いと道ばたでぶどうを販売している。
また始まったばかりだというのにもう会場から戻って来る人の姿もある。手にはぶどうの入った大きな箱や袋を持っていて、既に目的は達したという顔をしている。
5分ほど歩いて甲州市勝沼中央広場公園に到着。
公園の入り口や通路には如何にもお祭り会場らしい焼きそばや綿あめの屋台が並んでいる。
そしてその空いた透き間や隅の方には個人のレジャーシートがぱらぱら・・・。
パパは怪訝そうな顔。何でレジャーシートが?
公園はただっ広い広場のような場所で、周囲にぐるりとテントが建ち、葡萄やワインや山梨の名産品を並べている。
前方にステージ。
中央に人だかり・・・。
よく見ると、そこが中央は葡萄の無料サービスを受けるための列らしい。
確かやまなしぶどうまつりの一番人気はこの、葡萄無料サービス。
「あそこに並んでくる」
私は真っ先にその列の後ろに付いた。
パパは「この列は何?」と私に聞く。
「並んでいると葡萄がもらえるんだよ」
「葡萄いらない」とカナ。彼女はお祭りには綿あめやポップコーンを期待しているようだ。
振り返ると最後尾にはプラカードを持った人がいる。まだそのプラカードは逆さに下げられたままだったけど、書かれている文字は「ぶどうサービスはここで終わりです」。用意されたぶどうの人数に達したら、プラカードを持ち上げるつもりらしい。
結局15分ほど並んで、10時30分から無料葡萄のサービスが始まった。
葡萄色のワンピースに白いエプロンをつけたぶどう娘と呼ばれる綺麗なお姉さんたちが葡萄を配ってくれる。
配られた葡萄は甲州種で、粒も大きく品質の良いものだった。うちでは私とカナとレナと三人で一房ずつ頂いたので、本当にタダでもらって良いのと思うくらい。
「あと、勝沼といえばワインだよね」
「すぐそこに無料ワインを振る舞うコーナーがあったよ」と言いながらパパは仏頂面。
お祭り会場のあちらにもこちらにも「飲むなら絶対運転しない」「飲酒運転禁止」のボード。パパはドライバーだからどんなに飲みたくても飲めないのだ。
「いや、あの無料ワインコーナーじゃなくて、お目当ては有料の試飲なんだよねー」とワイン好きの私。
「ね、ね、行ってきて良い?」
「・・・どうぞ」
どうぞとは言うものの、顔はムッとしている。
ムッとしてはいるけど、でも私は子どもたちをパパに任せて試飲コーナーに近づいていった。
かつぬまぶどうまつりの有料試飲というのは、500円払って専用ワイングラスを購入すると、ワイン市場のワインを自由に試飲できるというもの。
ワイン市場というのはこのお祭り会場の1/3ほどを占めているテントのこと。
つまり500円払うと勝沼にある大小さまざまなワイナリーがそれぞれ出しているテントで、各ワイナリーお勧めのワインを好きなだけ飲むことができるのだ。
私はワインは大好きだけど、特別お酒に強いわけじゃない。
だから無料試飲コーナーで同じ種類のワインをグラスになみなみ一杯頂くよりは、500円で一口ずつ違うワインを片っ端から試してみて、自分が美味しいと思う味を探してみたい。
ワイン市場のテントは全部で24。それぞれ三つのグループに分かれていた。
グラス売場に一番近い中央は、サントリーやメルシャンなど大手。左右が中小のワイナリーのようだ。
自由になるのはパパが子どもたちと他の会場を回っている間だけなので、とても全部は回れない。向かって左側のテントに絞ることにした。
左側にテントを出していたのは、錦城ワイン、ダイヤモンド酒造シャンテワイン、中央葡萄酒グレイスワイン、麻屋葡萄酒、大和葡萄酒デリアンワイン、フジッコワイナリー、シャトー勝沼の7社。
それぞれのワイナリーが5〜8種類ぐらいのワインを並べていて、好きなものを選んで試飲させてくれる。だから左側のテントだけでも端から飲んでいたら40〜50種類ぐらい味見できる計算になる。全テントを回れば100〜130種類ぐらい飲めるのかも。これはもう500円なんてまったく安すぎだ。
でもさっき書いたように時間も無いし一人で回っても楽しくないので、結局私が味見したワインは7軒×2種類ぐらい、全部で14種類だった。
その中で気に入ったものを三本買い求めてしまった。
- 1.中央葡萄酒グレイスワインの周五郎のヴァン 2,700円
- 高かった。高かったけど買いたかった。辛口好きの私が甘口を買うなんて・・・なんだけどやっぱり買いたかった。ワイン離れした味がすると言えばそうだし、ワインらしい味がすると言えばそうかも。ちょっと冬に暖炉の前で飲みたい味がする。
- 2.フジッコワイナリーのフジクレール クラノオト デラウェア 1,500円
- フジッコってあのお豆のフジッコ。無濾過生ワインで天然微炭酸。熟成したのが好きな人には向かないかも。ちなみに私は大好きな味。さわやかでぷちぷち。
- 3.麻屋葡萄酒の麻屋甲州(甲州特別限定醸造1017) 1,500円
- 私が思い描く甲州種の辛口白ワインそのもの。シンプルに美味しい。和食と一緒に楽しみたい。刺身や甘エビで一杯。えへへ。
「三本も買ったのー!?」とパパ。
でもこんなにいろんな種類のワインを好きなだけ味見してから買えるチャンスはそんなに無いし、特に大手以外のワイナリーは。
「さ、もう帰るぞ帰るぞ」
よっぽどパパは詰まらなかったらしい。まあ葡萄(というか、果物全般)は好きじゃないし、ワインは飲めないしだもんね。
私もこの祭りはできたらワイン好きのyuko_nekoさんと一緒に回れたらもっとずっと楽しかったはず。味見しては「これが美味しい」とか「これは○○と合わせたい」とかおしゃべりしながら回るの。
「お腹空いたー」と子どもたちが言ったので、お祭り会場を出る前に焼きそばを買って食べた。
私が試飲している間にパパと子どもたちは何かゲームをやっていたようで、後から賞品のポケモン人形を見せてもらったが、どう見てもこれってぱっちもん。
カーナビには泊まるキャンプ場のある御坂路さくら公園を入力してあったので、黙っていたら盆地を離れて山道を登り出すところだ。
yuko_nekoさんたちが到着するのは夜だから、今のうちに今夜と明日の朝の食料を買い出しておいたほうがよい。
パパは「どこか近くに大型スーパーマーケットは無いかな」と呟いた。
「さっき石和温泉を通過したときにサティを見たよ」
「石和温泉はもう通らないよ。もっと手前に無いかなぁ」
無かった。
とりあえず国道20号線を流していると、ちょうど高架になったところで右手遠くにサティが見えたが、あれって結局石和温泉のサティじゃん。
「あのサティに行くしかないかな」
「うん、あのサティが一番近いと思うよ」
国道から石和温泉方面に曲がるとき、曲がり角に見覚えがあった。
「これって、今朝朝食を食べたマクドナルドじゃない」
何だか同じ場所をぐるぐる回っているような。
さらにそこで曲がって石和温泉の中心部に向かっていると、左手に気になる看板あり。
「あっ、新鮮市場だって。ここで買えるかも」
「そんな通り過ぎる瞬間に言われても遅いって。曲がれるわけないだろ。もっと早く言ってよ、もっと早く」
だって真横に来て初めて見えたんだもん。しょうがないじゃない。
「もう過ぎちゃったからサティに行こう」
結局食材はサティで買い出したが、帰りにその「新鮮市場石和」もパパがちらっと覗いてきた。そして「面白い店だった。これは絶対明日yuko_nekoさんとがっちゃんを連れてこよう」と言っていた。
御坂路さくら公園は御坂みち沿いにある。
御坂みちというのは甲府盆地の一宮御坂から富士五湖の一つ河口湖まで御坂山を越えて延びる道で、今は新御坂トンネルがあるが以前は日本百峠の一つ御坂峠の九十九折りを越えなくてはならなかった。
又の名を鎌倉往還とも呼ばれ、古くはいわゆる幕府のあった鎌倉と各地を結ぶ鎌倉街道のひとつだった。
御坂路さくら公園は一宮御坂ICから5〜6キロ、その御坂みちを登った辺りにある桜と紅葉の名所で、バーベキュー設備やオートキャンプ場が併設されている。
12時40分。私たちは御坂路さくら公園に着いた。
そして・・・
公園の第一駐車場に車を停めて、歩いて公園の中に入った。
公園は笛吹川の支流 金川がすぐ脇を流れている。
そして公園入り口の手前、川のすぐ近くで釣りでもしているのか二人ほどの大人がテーブルと椅子を出して食事をしている他は、大きな公園なのに人けが無い。
公園の入り口は車が入れないように半分封鎖してある。オートキャンプ場はこの中では無いのだろうか?
私とパパは子どもたちを車に置いたまま、公園の中に入り、入り口脇にある管理棟の前まで来た。
管理棟には公園利用料金が記されたボードが貼られている。
研修センター、バーベキュー施設、鱒釣り、オートキャンプ場、キャンプ場・・・。
なのに管理棟の入り口は固く施錠されたままだった。
ど、どうするんだ〜??
よく見るとボードの上に、緊急連絡先として公園の管理を委託されている石原グリーン建設という会社名と電話番号が載っている。
よし、ここに電話すれば良いんだな?
早速携帯電話を出して掛けてみた。
プルルルルプルルルル・・・。
ところがこの電話は自動音声の案内で転送された上、いきなりぶつっと切れてしまった。
・・・なんか不自然な切れ方だったな。
仕方なくもう一度ダイヤルする。
プルルルルルプルルルルル・・・。
再び自動音声で転送されたかと思うと、今度は電話サービスの案内で「ただ今この電話はお出になることができません」と来た。
なんじゃそりゃー。
yuko_nekoさんたちがちゃんと今夜の予約を入れてくれているはず。
私たちの脳裏には、その昔、予約を入れたキャンプ場が予約日を間違えて、いきなり何も当てがないまま放り出されてしまった数年前の事件がよぎった。
[
今度こそ紅葉の温泉を探せ 榛名湖日記7参照 結局そのときは
片品温泉に泊まった]
まさか今回はそんなことはないよね?
きっと昼食か何か取りに行っていて留守しているだけだよね?
とにかく目の前の公園のゲートを車が通れない以上、オートキャンプ場は別の入り口があると見るべきだ。
そっちを探してみよう。
私たちは車に戻り、さらに坂を上った。
ここは御坂みちから左に曲がった細い道で、舗装はしてあるがほとんど山道だ。
途中に大きな駐車場のような場所があったり、民家がぽつぽつ建っていたり、どこからどこまでが公園の敷地なのか判らない。
少し登ったところで子供の遊具のある場所があってそこで諦めた。これ以上登っても何もなさそうだ。
もう一度第一駐車場のある公園のゲートまで戻ってきた。
ここで管理棟に人が来るまで待っているしかないだろうか。
パパと二人で公園内を散策してみる。池があって水が流れていたりととても綺麗に作られている公園なんだが、子供が遊べるでもないし、斜面にあるのに絶景が見えるでもないし、桜と紅葉時意外はふらりと町から来て散策するにも中途半端、ましてや観光客の寄るスポットというほどでもなく、いまひとつ存在意義が判りにくい。
私たちはオートキャンプ場の場所を探してこの公園の池の横を通り、さらに奥に続く坂を上ってみた。
するとそこにはこれまた小綺麗なバーベキュー場があって、パパが、「おい、あそこ」と指さした。
バーベキュー場の隅に白い軽トラックが停まっている。
車体に書かれた会社名は「石原グリーン建設」
そして四阿のベンチで気持ちよさそうに昼寝しているおじさんは・・・
「あーっ!!」
そう、キャンプ場の管理人のおじさんは、ここで昼寝の真っ最中だった。
ようやく目を開けたおじさんは、私たちの姿を認め、トラックを運転して坂を下り、ゲートの近くの管理棟に戻っていった。
さてはさっき、呼び出し音が昼寝の邪魔だとばかり携帯電話を切っただろう!!
まるでマイペース。まったく!!
オートキャンプの料金は、3,300円。
車一台持ち込みでも、テント一張りでも同料金になっている。
私たちは普通にテントを張るつもりだが、がっちゃんたちはトレーラーだ。
トレーラーと聞いて管理人のおじさんはしばらく何かを悩んでいた。
私は料金体系をどうするか悩んでいるのかと思ったが、パパはキャンプサイトの場所決めで悩んでいるんだと思っていたようだ。トレーラーはどこにでも停まれるわけじゃないから、なるべく入り口近くの入りやすい場所にするとか、そういうことなんじゃないかと。
「で、オートキャンプサイトはどの辺なんですか?」
さっきぐるぐると辺りを探したけど見つけられなかったから。
「ああ、今から車で案内するから」
車で行く場所なんだ。この公園とは独立しているのだろうか。
おじさんは軽トラックに乗り込み、私たちも車でその後ろをついていった。
さっき管理人やキャンプサイトを探して登った細い山道をちょっと登り、それからさっきも見かけたただっ広い駐車場に着いた。
「ここだよ」
・・・ここーっ!?
そこはどう見てもオートキャンプ場ではなくて、ただの駐車場だった。
数十台の車が停まれそうな広さがあって、隅の方に実際にどこかの施設の送迎マイクロバスみたいなのが停まっている。
広さはあるけど、広さ以外何もない。
駐車場でなければ校庭かグラウンドという感じ。殺風景このうえない。
っていうか、これじゃトレーラーを何処に停めようとまったく問題ないじゃない。しかも連休だっていうのに私たちの他はほとんど予約も入っていないみたいだし。
さっきの御坂路さくら公園がなまじっか綺麗に整った公園であっただけに、このキャンプサイトとのギャップは激しい。
おまけにすぐ道を挟んだ処に墓地が見えているよ。勘弁して〜。
管理人のおじさんは、炊事場をチェックして、しばらく使っていなかったのか数分間水を出しっぱなしにした。
炊事場と言ってもこれも単なるグラウンドの隅にある水道という感じだ。
トイレは階段を降りたところ。こちらは綺麗だった。でもその夜は宿泊者も私たちを入れてたったの二組で、行く道の電気の付け方も判らず、使うのがちょっと怖かった。
良かったこともある。電源は無料で使えた。オートキャンプ場で電源サイトを借りると高いことが多いけど、ここはそのまま使えるみたい。
何故か敷地内に巨大な鉄塔が建っている。NTTドコモの鉄塔だそうだ。
でもこの管理人のおじさんは決して悪い人じゃなかった。
「イノシシが出るんだよ、この辺は。まあ隣の人が犬を連れてきているみたいだから心配ないとは思うけど」
しばらくしてもう一組のキャンパーを案内してきたときに彼はそう教えてくれた。
イノシシは同じ獣どうし、犬がいると寄ってこないらしいのだ。
「畑の農作物とか荒らされてね。この辺の畑の柵は電気を流してあるくらいだよ」
「イノシシって頭がいいんですよね。鹿とは段違いに頭がいいって、私の前の上司が教えてくれたことがありますよ。イノシシ狩りが趣味の人でね。そういえば上司は山梨出身でした。この辺だったりして」と私。
「へー、何て言う名字?」
い、いきなり名字か。地元の人なら名字を聞いただけであの辺の出身とか判るんだろうなー。
とにかく管理人のおじさんは、さっきは「あのねー」と思ったけど、実は話好きで世話好きのおじさんだった。
「蚊が出るかもしれないから。あと、夜は冷えるから気を付けてな」
はいはいと軽く返事をした私たちだが、この冷え込みは笑えないと後で知った。
かつぬまぶどう祭りの会場では、10月だというのに半袖でも暑いとぼやいた陽気だったが、盆地の夜は半端じゃなく冷える。
それはもう、だんだん日が傾き、ついには日が落ちて、寒がりの私は半袖の上に長袖を着て、その上に長袖を着て、さらにその上に上着を着て、そのまた上にショールを被ったくらいだった。
今年はあまり短期の旅行に出ていないのみならず、キャンプに一度も行かれなかった。
10月にして初めてテントを出した。
最近は四人で寝られる小川テント製の本格的なテントは出さず、トレーラーの友人に甘えさせてもらって、子どもたちはトレーラーで寝かせてもらい、私とパパは3千円程度で買ったどこのメーカーとも知らぬ安物テントばかり使っている。理由は組み立てるのがとっても簡単だから。
これまでで一番寒かったキャンプの思い出と言えば、10月後半だか11月初旬だかに本栖湖でキャンプしたときのこと。
まだ夫婦二人だけでキャンプしていて、夜はテントの中でもぶるぶる震えていた。寒がりの私だけでなく流石のパパすらも未だに語りぐさにしているぐらい。
信じられないほど寒かった夜が明けて、朝、テントの外に出たら、昨日まで青かった富士山が真っ白に雪化粧していた。
だからとにかく山梨を馬鹿にしてはいけないのだ。
東北だの、長野の山の中だのじゃないから大したこと無いだろうとたかをくくっていると酷い目に遭う。
山梨の夜の冷え込みは強烈だとしか言いようがない。
ちょうど小学四年生のカナが、理科の授業で星座や星の動きについて学んでいるところで、この週末は星を見る宿題が出されていた。
パパは昔の望遠鏡を積んできた。
暗くなる前にこれを組み立てて、星が出るのを待つことにしよう。
トレーラーを引いたがっちゃんのデリカがもうすっかり暗くなったキャンプ場に現れたのはほぼ予定通りの夜7時ちょっと前。
車から降りてきたyuko_nekoさんはあまりの寒さにびっくり。
でしょー、寒いのよ、山梨はー。
それから夕食。
電話で「新しい炊飯器を買ったからご飯は任せて」とyuko_nekoさんが言っていたけど、今から研いで間に合うのか?・・・と思ったら、新兵器のガス炊飯器は早い早い。あっと言う間にほかほかご飯が炊きあがった。
他にもその炊飯器を使うためのカセットガスを五つ組み合わせてプロパンガスみたいに使う装置や、炉端焼き大将っていうやっぱりカセットガスで網焼きができる装置など、新しいキャンプ道具がいっぱい。
寒い寒いと言っていたら、カセットガス式のストーブも出してくれて、パパは災害があってもがっちゃんのうちは一週間以上普通に暮らしていけそうだと感心した。
しかし何でもかんでもカセットガスで、カセットガスが尽きたら火力がないよ〜。
おかずは芋煮と先日、埼玉の
サイボク天然温泉で買ってきたベーコン。
このベーコンは生でも食べられるんだけど、yuko_nekoさんが炉端焼き大将でちょっと焙ってみようと軽く火を通したら、これまたとろけるようで美味しい。
沖縄の古酒も開けてみた。
瑞泉酒造の瓶入り古酒。実はこれは
瑞泉公式サイトで毎月プレゼントしている抽選で当てたもの。
その理由がね、今年の7月に
沖縄に行って運悪くもカナがビーチでハブクラゲに刺されて、帰宅してからハブクラゲのことをネットで検索したら、たまたまハブクラゲに関するクイズを出題していた瑞泉のサイトに行き当たったというもの。
これも何かの縁だろうとクイズに解答してプレゼントに応募したら、本当に当選しちゃったわけ。
言うなれば、カナがハブクラゲに刺されたおかげで泡盛古酒が当たっちゃったのよね。ごめんカナ。
「じゃ、この古酒、マンゴージュースで割ろうっと」
「それ、許せない」とyuko_nekoさん。
ゆ、許せないですか? いやー、困ったな。
そんな感じで夜は更けていった。