17.靴底がすべったわけ
出発前にそうそうとパパは思い出したように言った。
「切符、ブーツの中に入れておいたんだけど気付いた?」
えっ?
「いや、さ、自分は共同浴場一か所で先に帰ったじゃない? その時あなたのブーツの中に切符を入れておいたんだけど・・・」
「あーっ!!」
私のかみのやま温泉駅から山形駅までの切符が無かったのは駅で渡してもらってなかったからだったんだ。
それよりブーツの中?
どうりで歩きにくいはずだ。
新湯から葉山までアップダウンのある国道をてくてく歩きながらやけに片足だけ靴底がずるずる滑ると思ったんだ!
今更ながらブーツの底をのぞいたら、確かに左足の底から少しくしゃっとなった切符が出てきた。
「気付くわけないじゃないかっ!」
「絶対気付くと思ったんだよ!」
ええいもうっ。