夏休み東北日記 二日目


7月26日(金)

 遠野は一泊だけなので、朝、荷物をまとめてホテルを出る。
 駅のホテルが気に入ったカナは、もっと泊まりたいと駄々をこねる。

 
 遠野は民話の町。交番の建物は顔だったり、郵便ポストの上にカッパが座っていたりする。

 まずは昨日通った道を花巻まで引き返す。
 天気は曇り。空は明るいものの一面の雲。
 昨日の大沢温泉の湯はよく効いていて、今日も肌はつるつる。

 遠野と言えば柳田国男であるように、花巻と言えば宮沢賢治。
 小さい子どもでも楽しめる施設ということで、宮沢賢治童話村へ行くことにする。本当は宮沢賢治記念館とか、私はいろいろ回りたいけど、子供達が大きくなってからの方が喜ぶかな。

 童話村の駐車場にはほとんど車が停まっていない。平日とはいえ、人気がないのだろうか。
 入り口は綺麗で、アーチに「銀河ステーション」と書かれている。いきなり「銀河鉄道の夜」に誘い込もうという魂胆。
 入場は無料で、中の施設、賢治の学校と賢治の教室に入るのに大人一人350円がかかる。

 賢治の学校の入り口にある、星座を模したモニュメント。
 大学の元地学愛好会会長のパパは、形を見て最初の星座が白鳥座で最後の星座が南十字星だという。ああ、これも「銀河鉄道の夜」ね。北の十字架(白鳥座)から旅は始まり、南の十字架(南十字星)で別れるのだ。

 学校の中に入ると、最初は白い部屋。おのおのの物語になぞらえた白い椅子が部屋を取り囲むように並べてある。音楽とともに薄暗くなり、子供達は、ちょっとドッキリ。

 
 次の間は、暗闇に星座。進む道もよく見えず、レナは恐怖でしがみつく。
 雲の部屋、昆虫たちのいるミクロの世界の部屋などを経て、最後は、「セロひきのゴーシュ」と「注文の多い料理店」を立体模型で順番に並べた通路に出る。
 本の場面一つ一つに丁寧に作られた模型があり、ほとんどの模型には、ボタンが付いていて、押すと動き出す。物語もパネルに一枚ずつ書いてあるので、「注文の多い料理店」をカナにボタンを押させながら読んであげた。


 これはそのうち一つ。
 二人の主人公が、問題の注文の多い西洋料理店を発見する場面。
 よく見ると、家の窓が顔に見えたり、両側にネコの足があったりするのが判る。
 クライマックスでは、カナはびくびくっ。

 宮沢賢治を知らない子供達でも楽しめるのかな?と思っていたが、結構面白かった。帰りに売店で「注文の多い料理店」の絵本を買った。

 花巻から盛岡までいったん高速に乗って、次は小岩井農場まきば園へ。


 なんだか急激に空も晴れてきた。青空に白い飛行機雲。

 メェメェはいる? モーモーは?
 カナもレナも羊を追いかけておおはしゃぎ。



 日なたはかなり暑い。
 ちょうどお昼時。バーベキューを食べようか。
 やはり大都市圏から離れているせいか、小岩井農場は、今まで行った伊香保グリーン牧場や赤城高原クローネンベルクなんかの観光牧場と比べて、施設の規模に対して観光客が少ないような気がする。
 人が少ないといいなぁ。別に何をしなくても、緑の牧草地を見ているだけでいい感じ。植えられている花も手入れが行き届いている。
 子供達は旅先ではあまり食べたがらないので、大人が食べている間にも、とっとと外で遊んでいる。屋外で食べるとこれが出来るからありがたい。従業員の方に、蝉の抜け殻がある場所を教えてもらって、切り株の上に沢山並べていた。
 締めはソフトクリーム。外気温が高いから、すぐ融けちゃう。急いで急いで。

 何だか、小岩井農場に来て、食べているばっかりで、シープ&ドッグショーとか、ポニー乗馬とか、乳搾り体験とか、トロ馬車とか、なぁんにもしてないなぁ。
 ま、いっか。

 田沢湖に向かう前に、一風呂。
 網張温泉か国見温泉か迷って、結局、国見温泉をチョイス。
 46号線を途中で右へ曲がる。子供達が寝そうなので、くねくね山道を急ぐ。ぐんぐん高度が上がり、沢は深い谷底へ。あまり勢い良くカーブを曲がっていたせいか、道の終点につく頃は、カナは「気持ち悪い…」。酔ったか?


 国見温泉 石塚旅館
 車を降りるともう、温泉の匂い。

 大浴場の方ではなく、小さい浴室と露天風呂のある方へ向かう。
 もしかして、混浴なのかな。
 サンダルに履き替えて外に出る。
 適当に石で囲った露天風呂と、一応、外と、風呂の両方から見えないようになっている簡易な脱衣所。結構どっちも丸見え。気のよさそうなおじさんが二人入浴中。
 まあ、いいか。せっかく来たんだから、入っちゃえ。

 とにかく緑の湯とは聞いていたけど、本当に目の覚めるような明るいグリーン。
 かなり強烈で印象的な色。


 おじさん達がぬるめだよ、というので、安心して子供達を入れる。後で判ったが、水のホースが引き込まれていた。薄くなるかもしれないけど、適温だったので、私たちにはありがたい。本当はかなり熱いのかも。

 匂いはかなり強い灯油臭。なめると苦い。もの凄い量の湯の花。廊下に「生の湯の花を勝手に持ち帰らないで下さい」といった張り紙があったっけ。すくうと、手のひらいっぱいに緑の粉。さらさらと融けて湯が緑ににごる。レナは面白がって、せっせとすくっている。

 突如、アブの襲撃。
 逃げまどうカナ。きょとんとしているレナ。
 一緒に入っていたおじさんが、撃墜してくれた。

 国見温泉を出ると、予想通り子供達は爆睡。
 のんびりと田沢湖への道を行く。
 道の先に湖が見えてきた。あと信号をひとつ。湖畔への道に出る。

 ああ、田沢湖でも湖水浴ができるんだ。砂浜があり子供達が浮き輪で遊んでいる。夏はそういう遊び方もできるのね。

 今夜の宿泊地は田沢湖沿い。木立がじゃまで、田沢湖はちらちらと見えるだけだけど、テラスもついている。ハーブガーデンのある田沢湖ハートハーブに隣接していて、宿泊者はタダでハートハーブのハーブバスに入れるらしい。

 夕方、ハートハーブに行ってみた。ここは入園料無料。ハーブガーデンやハーブのレストランの他、木の遊具やウサギ小屋がある。目玉はハーブバスで、これは通常400円。

 
 レナはウサギに草をやるのに夢中。カナは大きな木のブランコでハイジ気分?(注 田沢湖スイス村はこれとは違います)

 戻って一休み。早めの夕食の後は、そのハーブバスに行ってみよう。今日のハーブはラベンダー、ローズ、ローズマリー。
 たまには温泉と違ってハーブもいいかも。いい匂いでリラックスできそう。
 もう夜だからか、バスはそれほど香りが強くなかった。
 湯口のそばに、巨大なティーバッグのようなものが二つつるされている。近づいてみると、それは洗濯ネットにハーブを入れたものだった。もんでみてもあまり香りはない。既に出涸らし(笑)。
 浴槽はまあまあ大きく、レナがぎりぎり立てる深さ。それでもレナは嬉しそうに上向き加減で自由に歩き回っているので、周りの人はみんな笑ってみていた。レナは益々調子に乗って、「お顔出てるからダイジョーブ」とか言いながら、飛び跳ねている。

 お風呂の後は、外へ。
 隣のオートキャンプ場でJR秋田が花火をやるらしいのだ。
 どんどーんという、打ち上げの音が聞こえてきた。早く早く。

 
 数こそは多くなかったものの、ナイアガラなどかなり本格的な花火。しかもほとんど私たちの見ている真上に打ち上げられるので凄い迫力。

 二日目にして、こんなに遊んでいて良いのだろうか…?

つづく


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