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田貫湖キャンプ場便り


最終日 2005年9月25日(日)

 朝7過ぎ・・・眠い。
 まあ当然だろう。昨夜は2時ぐらいまでみんなで飲んでたから。
 晶ちゃんの心理テストが大受け。
 パパだけやたらと出来過ぎた答えを言うと思ったら、会社の研修でやらされて先に答えを知っていたんだって。
 ちぇっ。
 本心を聞きそびれた。

 パパは早々に朝風呂に行ってきたらしく、首からタオルを下げて、「今ならまだ間に合うよ」と言う。
 行ってくるか、朝風呂。
 しゃきっと目が覚めるだろう。
 まだロッジの方のお風呂に入ったことがなかったので、そちらにしようかと思って行ってみたが、本当に展望のない妙に圧迫感のある浴室だったので、結局また白峰会館の展望風呂に行ってしまった。
 いっそ循環湯ならここ、露天風呂作ったらいいのにな。
 これだけ景色がいいんだもの。

 朝食も夕食同様質素な感じだった。
 雨は降った様子が無く、空には僅かながら晴れ間も見える。
 流石に予定外の一泊をしてしまったこともあり、yuko_nekoさん一家は早々に帰ることになっていた。
 ちび姫ちゃんはもう涙顔。
 みんなで並んで記念撮影をしようと話していたが、これ以上引き留めるのは酷だろう。
 さよならと別れることにした。
 まあまたすぐに会えるよ。
 11月には一緒に四万温泉に行こう。
 だださんや晶ちゃんも車に乗り込み、それぞれ山を下っていった。



 我が家はせっかく南アルプス市まで来たのだから、せめて午前中は遊んで帰ろうと思っていた。
 中央道は混むから、連休最終日、昼には高速に乗った方が無難だろう。
 さあ、限られた時間、何をしようか。

 秋に甲府盆地でしょ。
 やっぱりぶどう狩りだよね。

 山を下る途中で桃源天恵泉 白根桃源天笑閣という日帰り温泉を見つけた。
 日本第二位の高アルカリ泉掛け流し。
 気になる感じ。
 一度は駐車場に車を入れたが、朝早すぎてまだオープンしていない。
 パパはぶどう狩りの後に戻ってくるかと言ったけど、怪しいなぁ。

 実は南アルプス温泉ロッジのロビーにちらしが置いてあった中込農園という観光農園を目指していた。
 ところが、ちらしの地図はあまりにも判りにくい上に、行けども行けども中込農園の農場はあるのに受付が見つからない。
 農場は葡萄、サクランボ、桃などいくつかに別れて点在していて、どこかに味覚狩り専用の受付があるのではないかと思われるのだが。

 適当に探し回っているうちに中込農園ではなく何故か田中園という農園の受付に着いていた。
 いや、元々別に中込農園である必要は無かったのだ。
 これも何かの縁と田中園に入ってみることにした。

 帽子を被った品の良い奥さんが一人で店番をしている。
 「あのう、ここはぶどう狩りは出来ますか?」
 「食べ放題というのはやっていないのだけど、狩って購入していただくことはできますよ。試食は自由に出来ます」
 今までは、ただ自分で取るだけでは詰まらないと食べ放題の処を選ぶことが多かったが、よく考えてみると試食が自由なら別に食べ放題に拘る必要はないのかしら。
 「まあ食べ放題と言ってもそんなには食べられないんですよ」と奥さん。
 確かに。
 試食用にと出してくれた籠の中には、紫や黄緑の葡萄がどっさりと入っている。
 もしかしてあれ全部食べて良いの?
 「料金はいくらですか?」
 「1キロで1,200円です」
 「1キロでどのくらいの量ですか?」
 「二房ぐらいですかねぇ」
 確か中込農園のちらしでは食べ放題一人1,000円だった。家族四人で4,000円は痛い(実際は子供料金設定とかあるのかもしれないが)。
 それにパパは果物嫌いでほとんど食べないし、だからと言って農園の外で待っていてもらうのもつまらないからなぁ。
 これは狩りだけであとは試食の方が絶対お得だ。
 「この場合、人数とかは関係ないのですか?、家族四人なんですけど」
 「はい、どうぞどうぞ」
 奥さんは葡萄畑の中に置かれた白いテーブルセットに試食用の葡萄を運んでくれた。
 これはいいや。
 奥さんの見ている前だと流石に試食もあまりできないけど、ここなら思う存分(こらこら)、それに葡萄の木の下に置かれた白いテーブルセットって何だかいいじゃない。

 子供たちを車から降ろして葡萄園の中に連れていった。
 田中園ではここでは甲斐路と巨峰を栽培していて、既に巨峰の季節は終わりとかで甲斐路だけが生っている。
 レナはすぐにむしゃむしゃと食べ始めたが、カナはなかなか手が出ない。
 「どうしたの?」
 「食べたくない」
 「葡萄、好きなのに」
 「・・・外では食べたくない」
 「何で?」
 「・・・虫が来るから」
 蜘蛛が怖いという。
 蜘蛛なんかいないってば。
 どうしても出てきたら退治するからとなだめると、おずおずと食べはじめ、ひとつ食べるとあまりの美味しさに止まらなくなってしまったようだった。
 籠の中には赤紫の甲斐路と濃紫の巨峰、それに黄緑色のロザリオブランカが入っていた。
 このロザリオブランカが大好評。
 皮をむかなくても食べられる大粒の葡萄なのだが、上品ですっきりした甘さに一番人気。
 そこで受付の奥さんに、ここで生っている甲斐路ではなくロザリオブランカの狩りはできないかと尋ねてみたところ、ロザリオブランカは少し離れた農園で作っているので狩りは難しいけど、今朝収穫したばかりのここに並んでいる分は買うことができると教えてもらった。
 狩りをすることを前提に試食させてもらっているのに、狩りをせずに購入だけでもOKかしら?
 「もちろんそれでも構いませんよ」

 安心してまたばくばく試食を続ける私に呆れて、パパは、そんなに食べて良いの? さっき店頭に来たお客さんは一粒、二粒ぐらいしか食べなかったぞ、試食ってそういうものじゃないのか? と言った。
 「えっ、駄目なの? 試食はご自由にって言っていたよ」
 「あのね・・・とにかくさっさと買ってきなさい」
 「はーい」
 財布を手に奥さんの処へ戻る。
 ロザリオブランカの大きめの房を三つほど選んでいると、パパが三つとも別々の品種にしたら?と言ってきた。
 ええ? でもこれが美味しいんだよ。
 結局三つのうちひとつだけ巨峰にしてみた。
 全部でちょうど2キロ、2,400円だった。
 さらに気前の良い奥さんは、今取ってきたばかりだからこれも試食してみて、と新しい一房を差し出した。
 「ワインなんかに使う葡萄で甲州っていうのよ」
 知ってる。甲州種のワインは刺身に合うんだ。
 「試食って・・・一粒ですよね」
 「ああ、房ごとあげるわよ」
 ほ、ほんとうですかい? 他の試食用もあんなに沢山食べちゃったのに。

 私たちががつがつと葡萄を試食している間、パパは奥さんから温泉情報を聞き出していた。
 「ここから15分ぐらい行ったところにある、やまなみの湯ってところがいいんだって。プールもある立派な施設らしいよ」
 ・・・まさか南アルプス市まで来るとは思わなかったからどこがいい温泉なのかさっぱり判らない。
 「本当にいい温泉なの?」
 「奥さんはお勧めだって言ってたよ、自分もときどき行くって」
 お勧めにもいろいろあるからな。施設充実度で計る人も多いし。
 個人的にはさっきの桃源天恵泉の方が気になるんだが・・・。
 パパはもう、やまなみの湯に決めてしまったようだ。
 果樹園を出るとさっさと車を走らせた。

 途中でガソリンを入れた。
 ついでにもう一度道を確認する。
 ガソリンスタンドの親父さんも、「やまなみの湯に行くの? あそこはいいよ」と太鼓判を押してくれた。
 「ほら、地元の人がみんないいって言うぞ」とパパ。
 と、そこへちょうど昨日別れた紺碧七さんから携帯メールが入った。
 「今日はどちらへ?」
 もしかしたら行き先の評価が聞けるかもしれないと思い急いで返信する。
 「やまなみの湯というところへ向かってます。評判はどう?」
 するとやまなみの湯に着く直前にまたまた返信が入ってきた。
 「可もなく不可もなしってな感じです。源泉浴槽あり。リバートピアよしおかみたいなところかな」
 えーっ、しくじったかな。
 いやまあ、リバートピアは嫌いではないけど。

 駐車場はまあまあ混雑していた。
 料金には温泉のみ2時間、プールとセット、さらに大広間休憩のついた一日券といろいろある。
 今回は水着を持ってこなかったし時間もないのでプールは無理だが、大広間でお昼が食べられる方が良いかなと一日券を購入した。

 大広間の場所取りをしてからお風呂へ。
 お風呂はかなり広く盛りだくさんだ。
 内湯には普通の浴槽と、ミクロ粒子のエステバス、圧注浴のリラックスバス、ジェット噴流の寝湯などがある。もちろん露天風呂とサウナもついている。

 脱衣所にもちゃんとベビーベッドがあったが風呂場にもベビーバスがふたつほど置いてある。
 昨日の初花でも感じたが、山梨の温泉は赤ちゃん連れに寛容だ。
 お湯の見た感じも初花によく似ている。
 モール泉らしい琥珀色で、表面に白っぽい鉱物的な湯の花が沢山浮いている。
 肌触りはちょっとべたつき、初花のようなにゅるにゅる感はまったく無い。ウィスキーとぬれた落ち葉のような臭いがする。
 加水加熱循環湯で、一応お湯が減った分は源泉を投入しているとあるが、湯口から出ているお湯自体がどう見ても源泉そのものとは思えず、残念だ。
 それでも温泉らしさはきっちりある感じで、人気施設なのは頷ける。
 結構温まるので、しばらく入った後で露天風呂へ移動してみた。
 外気が涼しい。
 台風らしい強い風が時々吹き荒れる。
 青空は見えるが残念ながら「やまなみ」は見えない。
 本当に紺碧さんに教えてもらったとおり可もなく不可もない温泉だけど、まあいいよね。
 というか、悪くない温泉だよね。
 ただ、甲府盆地にはもっといい温泉がいっぱいあると思っているから、ハズレを引いたような気がしちゃうんだよね、きっと。
 風に揺れている竹林がやけに爽やか。
 他にも楓や栗の木も植えられている。
 カナがもう出たいというのでレナと先に出ていて良いよと体をふいてやると、二人は連れ立って脱衣所へ戻っていった。

 一人になったので似非泡付きを体験しようとエステバスに入ってみたり、低温の圧注浴槽へ入ってみたりして、最後にもしかして掛け湯辺りに源泉があるかなと見に行ったら、案の定そうだった。
 おっ、このお湯、すごくいいじゃない。
 このまま源泉でお風呂を作ってくれたらいいのにと思いながら何度も何度もざばざはと掛け湯をしていると、お湯の臭いはまるで浴槽のそれと違う。
 少しゆで卵みたいな臭いがするしオイルの臭いもする。味は重曹と金属っぽい感じも。
 脱衣所のドアに手を掛けたらドアは反対側から開いた。
 他の入浴客かと思ったらカナだった。
 泣きべそをかいている。
 「チルットがいなくなっちゃった」
 チルットというのはカナがお風呂に持って入ったポケモンの人形だ。
 服を着た後、冷水サーバのところで水を飲んで、そのときにレナの人形と一緒にサーバの横に置いた。
 そしてそのまま人形を置いたことを忘れて扇風機に当たっていたという。
 レナが先に人形のことを思い出し、二人で取りに戻ったが、レナの人形は残っていてカナの人形だけ消えていた、と、こういうことらしい。
 冷水サーバと扇風機は1メートルぐらいしか離れていないので、本当にちょっと目を離した隙になくなってしまったようだ。
 レナの人形は残っていたのだから、たぶん知らずに他の子供が持ち去ってしまった可能性が高いのだろう。

 泣き続けるカナを連れて、レナと一緒に大広間休憩室まで戻ると、既に湯上がりに温泉豆腐まで平らげたパパが待っていた。
 事情を話して、二人がかりで何とかカナを落ち着かせて、何か食べるものを買おうと売店に行った。
 やまなみの湯には食事処はついていない。
 持ち込みも可だし出前を取るのもOKだ。
 おはぎとチーズ蒲鉾と小倉ミルクを買った。小倉ミルクというのは小倉餡の入った牛乳ゼリーのようなもの。
 さっきお腹いっぱい葡萄を食べたのでお昼は軽めに。
 周りを見回すと、他の客は大きなタッパーに食べ物を入れて持ち込んでいたり、焼酎も瓶のまま、館内で売っている胡瓜をその場で洗っていきなりぽきりと折って味噌をつけて食べている人までいる。
 パパもトマトを買ってきた。
 何故かトマトや胡瓜は朝市くんと書かれたロッカーみたいな自動販売機で売られている。

 館内にはちょっとした図書コーナーもあり、カナとレナは大人が食べている間そこで絵本を読んだりしていた。
 ロビーにはテレビの他に子供向けの番組を写すスクリーンなどもあって面白い。
 お値段も手頃だし、近所に一つほしい系の温泉だ。



 やまなみの湯からは甲西バイパスを通って甲府昭和ICまですぐ。
 パパはインターまでの近さも考えて最後の温泉はここを選んだ。
 1時には中央道に乗ろうと思っていたが、やまなみの湯で思いの外のんびりしてしまったので2時になってしまった。
 それでも渋滞はまだ無い。
 そして甲府盆地とさよならして笹子トンネルを抜けたとたん・・・
 「ありゃ、雨だよ」
 今回も旅の終わりは雨の締めくくり。
 昨日はどうなることかと思ったけど、今日のぶどう狩りなど雨に降られず済んで良かった。

 雨を抜けると山の間に淡い虹。

 この日、愛知では盛況のうちに愛・地球博こと愛知万博が幕を閉じた。

 まあ、ついに行かれなかったけど、昔、大阪万博がひとつの時代を作ったように、これもまた時代の区切りなのだなと思った。


 そしてまた、この週末を境に、東京でも夏の名残は全て消え、いつの間にか気づかぬうちに、街も空も秋の色になっていた。


おしまい


ところでこの同じ旅行記をyuko_nekoさんサイドから見たものがこちらから読めます。
yuko_nekoの温泉あしあと日記 よしかさんを救う会開催
私のよりか何倍も面白いので(抱腹絶倒)ぜひ読み比べてみて下さい。

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