11.迷子になって
元禄の湯の帰り道、あれ?と思うと道を間違えていた。
なんだか古い本館の湯治棟に迷い込んでしまったみたいだ。
本館の隣が私たちの泊まっている山荘なのだから、窓から外を見れば方角が判るはずと思い、廊下から外を見れば何やら植物の巻きついた渡り廊下のようなものが見える。
しかしそこに着いてみれば通行止め。随分と使われなくなって久しい通路だったのか。
あてずっぽうに歩いてようやく例の異界トンネルに着いた。
別に広い館内であるわけじゃないんだが、不規則な増改築は方向感覚を失わせる。
ま、それは方向音痴の私だけかもしれないが。
元禄の湯に行ったとき、本館に「館内歴史ツアー」とその集合場所が手書きで書かれた張り紙を見た。
また元禄の湯の帰り道、「本日4時より
積善館館内歴史ツアーを行いますので、ご希望の方は本館にお集まりください」という館内放送を聞いた。
歴史館内ツアーってどんなのだろう。
こういうの大好き。
絶対に参加したい。
早速パパに提案すると、面白そうだから行ってみようということになった。
午後4時。
さっきの異界トンネルを通って本館に移動、朱塗りの橋側の玄関に通じる階段を降りず、逆に昇って、集合場所になっている部屋に着いた。
廊下の左右に客室とおぼしい部屋が連なっているのだが、何か違和感がある。
既に数人の宿泊客が宿の浴衣を着て三々五々集っていた。