6.四万たむらで迷子になる
みんなが出てきたことでまたレナは恥ずかしさが先に立ったようだ。早く部屋に戻ろうと力尽くで私を引っ張った。
仕方なく私は彼女に引きずられるように歩き出した。
子どもたちもぞろぞろとついてくる。
例によって方向音痴の私は部屋までの道をよく知らない。でもまあ、みんな一緒なら誰か知っているんじゃないかとたかをくくっていた。
レナは廊下を進み、それから階段をどんどん降りようとする。
ふと振り返るとまりなちゃんの姿が無かった。
「あれ? まりなちゃんは?」
心配はしたものの、たぶんyuko_nekoさんたちと一緒にいるのだろうと思って、私たちはさらに階段を降りた。
でもどうも様子がおかしい。本当にこの道、合ってるの?
だって階段の出口が非常口の防火扉みたいになっている。客が出入りする雰囲気じゃないよ。
ちょうどその防火扉の前にたむらの従業員のおじさんがいた。
「えっ、どちらへ?」
「花湧館に戻りたいんですが」
「そうしたらねぇ、この階段じゃなくて・・・」
おじさんは親切に行き方を教えてくれた。と、そこへまりなちゃんが追い付いてきた。どうやらyuko_nekoさんたちと一緒ではなく一人きりのようだ。
「道間違っているのにみんなどんどん行っちゃうんだもん」
まりなちゃんは一人で私たちの後を追ってきた上、正しい道もちゃんと知っているしっかりものだった。
ちなみにカナは間違っていることも、どこで間違ったかも判っていたようだが、レナとちび姫ちゃんは判っていなかったようだ。私に至っては最初から何が何やらさっぱり判っていない。
部屋に戻った子どもたちはまた遊び始めた。テレビを見る子あり、ゲームを開く子あり。
くららさんもようやく目を覚まし、お風呂に行ってくると部屋を出ていった。
帰るために荷物を全部まとめ上げてしまった後、暇になった私はyuko_nekoさんの部屋の様子を見に行った。
「チェックアウトが10時だと思ったら11時なんだって」とyuko_nekoさん。
なんだ、まだ1時間以上ある。「そうと知っていたらもう一風呂浴びてきたのにー」
それを聞いてがっちゃんとyuko_nekoさんは、これから
応徳温泉に入りに行くんだからいいじゃないかと笑った。
そう、今日はこれから真っ直ぐ帰るのではなく、六合村の応徳温泉に寄っていこうという話になっていた。
榛名山麓から四万、草津辺りに掛けての気軽な日帰り温泉はかなり沢山入ってきたけど、この応徳温泉はぽつりと抜け落ちていて、前々から機会があったらぜひ立ち寄りたいと思っていた所だった。