2.甍の湯
「あれ?」
がっちゃんが足を止める。
真っ正面が甍の湯の入り口だが男湯と書かれている。
普通は隣に女湯があるものだが、ここでは見あたらない。
タオルを手に浴衣姿で朝風呂に急ぐ周りの女性達はみんな甍の湯男湯の手前にある「森のこだま」と書かれたドアを出ていく。
がっちゃんは、「ごめん、ここしか判らないや」と謝りながら男湯の中に消えてしまった。
仕方なく私も森のこだまの方に行きかけて、背後にある幅の広い階段に気づいた。
甍の湯の女湯は二階だったのだ。男湯とは隣り合わせではなく、上下二階建てになっていたのだ。そういえば露天風呂の森のこだまも同様だ。下が男湯で上が女湯。
判れば話が早い。私はそそくさと階段を上がり、ちょうど男湯の真上にある甍の湯の女湯に入っていった。