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◇◆四万たむらの休日2◆◇

9.四万温泉の冷静と情熱のあいだに








四万温泉の落合通り



 名残惜しかったが適当なところで切り上げて、今度は私たちは落合通りの中島屋へ向かった。
 河原の湯から中島屋はすぐだ。
 そういえば四年前、私が初めて河原の湯に行ったのも中島屋の小枝子パパにすぐ近くだから入ってから帰ればと勧められたからだった。
 当の小枝子パパは実は今の河原の湯に建て替えられてから(何年前だ?)まだ二度しか入ったことがなかったとは、後から聞いた。
 後からと言うか、つまり話が前後するが今夜、飲んでいる席で聞いた。
 「いつもグランドホテルの風呂にばかり入っているからさー、今更と思って久しぶりに入ったら、凄い良い湯でやんの」
 いやはやもったいない話。

 もうそろそろ3時を回って店の入り口はカーテンが引かれているようだ。
 蕎麦は売り尽くして店じまいだろうか。
 そうっと覗こうとすると、待ってましたと言わんばかりのいたずらっ子のような小枝子パパが顔を出した。
 「もしかして、見えてました?」
 中島屋の店先やグランドホテルの坂など、実はグランドホテル屋上などに中島屋が設置したライブカメラで一部始終が撮られている。ついでに言うとその画像はインターネットでリアルタイム全国公開中だ。
 と言っても画質的に人の顔まで判別できるわけではないから問題は無いはず。
 ただまあそんなわけで、小枝子パパは私たちの来訪をライブカメラにて密かにチェックしていたらしい。
 「よく来たねぇ」
 まあまあ中へと誘われ、私たちは客でもないのに図々しく店の椅子に腰を下ろした。どうやら中島屋ではそろそろ店じまいして後片付けに掛かろうとしていたところらしい。
 小枝子パパは奥から赤い包みを持ってきた。
 「これ、ごりるさんからの差し入れを預かっていたから」
 ごりるさんというのは私の掲示板に時々来て下さる方で、たまたま中島屋のキャンペーンで特盛り四段蕎麦が当たり、先日ここに食べにいらしたのだ。そのときに忘年会の差し入れにと、この包みを置いていって下さったようだ。
 包みの中身はお煎餅。
 醤油で有名な野田の「大川や」という煎餅屋のもの。煎餅の名前は「とね川」。
 こちらは子連れの家族で有りがたーく分けさせていただいた。

 そこへ何故かyuko_nekoさん登場。お風呂に入りに来たわけではなく、薬を買いに来たという。薬と言っても誰かが病気になったわけではなく、飲み過ぎ防止に「うこん」の錠剤を求めてのこと。ところが当てにしていた薬屋が閉まっていたらしく、困っていた。
 「まあまあ一杯どうぞ」
 何故かyuko_nekoさんに生ビールのジョッキが渡される。
 ちなみに私たちは女将さんにコーヒーを頂いていた。


ごりるさんに頂いた差し入れ



 中島屋の看板といえば年を感じさせない元気なおばあちゃんの笑顔だった。
 去年おばあちゃんが亡くなってから、看板役を引き継いでいるのは齢三つのあおいちゃん。
 小枝子パパの孫娘だ。
 今日もパッチワーク風のスカートでご機嫌。物怖じせずにこにことお話ししてくれる。
 奥からあおいちゃんのママもあらわれた。あおいちゃんのママというのは、つまり小枝子パパの娘さんだ。
 腕にはちょうど一ヶ月前に生まれたばかりのじゅんせい君を抱っこしている。
 あおいちゃんとじゅんせい君・・・すぐ判る人もいると思う。私たちは判らなかったが「冷静と情熱のあいだに」だそうだ。
 タオルにくるまれたじゅんせい君はふにゅふにゅだ。髪の毛はしっかり生えそろって、小さなお口はぎゅっと結ばれている。
 というか、あれ?
 「産後一ヶ月ってまだ無理しちゃいけないんじゃないの?」とyuko_nekoさん。
 「いやー・・・産後すぐに店の手伝いとかしてましたから」
 「安静にしていないと駄目だよー」
 みんな口々に言う。彼女はお腹が大きいときにも笑顔で仕事をしていたもんな。
 「ねぇねぇ、じゅんせい君、抱っこさせてもらってもいい?」
 「どうぞどうぞ」
 抱っこすると本当に軽い。それにこの甘いような酸っぱいようなミルクの匂いが何だかとっても懐かしい。
 ついつい手放したくなくてしばらく揺すっていると、じゅんせい君は眠ってしまった。
 こんな顔も軽さも赤ちゃんのうちだけだよね。可愛いなぁ。











1-10四万グランドホテルのお風呂へ続く


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