今回の忘年会の幹事は紺碧七さん。サポートに、前回の幹事であり、密かに裏幹事とおぼしきだだ星人さん。さらに裏々幹事に四万温泉の重鎮、そば屋中島屋の主である小枝子パパがいる。
その小枝子パパの店は四万温泉の新湯、ちょうど
四万たむらや
積善館があって賑わっているあたりから近い狭い通り、レトロな食事処やスマートボールが軒を連ねる落合通りにある。
一昨年はここで昼食を食べてから会場に行こうとしたら、参加者ほぼ全員が中島屋で昼食を食べていた。示し合わせたわけでもないのにだ。
今年はもう昼食を終えていたので真っ直ぐ四万たむらに向かった。
いや本当に真っ直ぐ。
だって新湯の道は真っ直ぐ走ると、そこはいつの間にか公道ではなくたむらの入り口で、ただ走っているだけで坂の上では正面に茅葺き屋根の堂々としたたむら正面玄関が待っているのだから。
その日本的でありながら高級感溢れる玄関口に車をつけると、さっと二人ほどの従業員が寄ってきてお泊まりのお客様ですか?と慇懃に尋ねてくる。
「全国温泉友の会ですが・・・」
このちょっと口にするのも恥ずかしい冗談のような名称は・・・本当に冗談だ。全国温泉友の会などという秘密結社は実態が無く、この四万たむらでの忘年会時に予約名称として使われている。
「はい、承っております」
既に幹事達がチェックイン手続きを済ませてくれたようで、私たちは下足を履き替えるためだけに四万たむらの入り口を潜った。
そう、下足を履き替えるためだけに。
私たちが泊まるのはゴージャス四万たむらの本館右隣に控えめに建つ花湧館。四万たむらは高級旅館で知られているが、この四万たむら花湧館はむしろリーズナブルなお宿であり、かつお風呂だけは四万たむら本館や系列の
四万グランドホテルに泊まった人たちと分け隔てなく、それら全てのお風呂に入れる。
だから大変にコストパフォーマンスが良い。
ただひとつの問題があるとすれば、隣に建つ四万たむら本館があまりにきらびやかなので必要以上に卑屈に感じることぐらいだろうか。お風呂に行くだけなら「借りている」という気分でそれほど気にならないのだが、最初のチェックインの時にたむらのロビーに入ると雰囲気に圧倒されてしまって、その後案内される花湧館館内の慎ましい様子にショックを受ける人も多い。重ねて言うが、最初からお値段相応なのだからたむら本館と比較さえしなければ何も問題ないのだが。
今回もチェックインは済んでいるのだからたむらのロビーに行く必要は無いと思ったのだが、「下足はこちらで」と案内されて仕方なくたむらに入った。