沖縄・子連れで体験旅行!
*子連れ沖縄旅行記3*
不安が大きくなってきた頃、ようやくパパが戻ってきた。
「しばらく川を登ってみたけどこの先に滝なんてありそうにないよ」
みんな絶望的な顔で肯いた。
とにかく脱落者を出さずに元の駐車場まで戻らなくてはならない。
帰り道も大変だった。
もう思い出すのも嫌なほどだ。
不安な道を行くときは、行きよりも帰りの方が短く感じるものだと思っていたが、このときの帰りはとてもそうは思えなかった。
行きの段階でパパが変だと思ったのは、とにかく蜘蛛の巣が多いこと。先頭のパパが蜘蛛の巣払いの専用棒を作って振り回しながら進んだほど、道は蜘蛛の巣だらけだった。
もしこの川の中の道が行楽客などに定期的に使われているものだったら、こんなに蜘蛛の巣が張っているのはおかしいと思ったらしい。
さらに駐車場には数台の車が停まっていたのに、他に誰の姿も見えないことも不安を呼んだ。私たちの前に出発した人たちはどこにいるのだろうと。
でもこれらも後から思えばの話で、そのときはなんだかんだでこの道の先にター滝があると信じていたから歩いてしまったわけだ。片道およそ1時間半もの間、厳しいリバートレッキングコースをほとんど休まずに。
行きは協力して難関を乗り越えた姉妹も、流石に体力的に限界が来ていたので何かとぶつかり合うようになってきた。
パパと手を繋ぐかママと手を繋ぐか、こんな些細なこともトラブルの種になる。
カナが少し遅れ始めた。
レナはパパとどんどん先に行ってしまう。
ふてくされると、わざわざ遠回りしてみたり、通りにくいところを通ってみたりする。
ふいにカナが悲鳴を上げた。
子供の手の平大の白い鳥の羽のようなものが岩に張り付いてもぞもぞと動いている。
彼女は慌てて私の方に走ってきた。
その不気味な物体はもぞもぞと岩の下の方へ移動したが、私たちが離れると、再び岩の上に登り始めた。
「何あれー」
「・・・毛虫か何かかな」
「気持ち悪いよう」
恐怖からか、それから彼女は大人しく歩くようになった。
流れが合流しているところまで戻ってきた。
あと少しだ。
この期に及んでも私たちはまだ、このルートのどこかにター滝があるんじゃないかと思っていた。
でももう一本の川筋はやっぱり登れそうにないし、どこで迷ったのか検討もつかない。
少し落ち着いてくると、川にいる生物に気を配る余裕も出てくる。
昆虫とか、カタツムリとか。
子どもたちの興味はもっぱら宝石ことリュウキュウハグロトンボ。
「見て!!」
レナの指先にリュウキュウハグロトンボがとまった。
ちょっと得意そうなレナ。
ちょっと羨ましそうなカナ。
流れが広く浅く穏やかになってきたところで、いきなりばらばらと雨が降り始めた。
天候までが邪魔をする。
もう今日は散々だ。
みんな水着やラッシュガードを着ているし、ここまでの行程でずぶぬれなので、今さら雨ごときでひるんだりしないが、それでも陰鬱な気分になった。
レナがサトイモ科の植物の大きな葉っぱを見つけた。
「ほら、傘みたいだよ」
キミは本当にムードメーカーだね。