那覇空港に着いてすぐ、カナがトイレに行きたいというのであっちだと指さした。
カナがトイレに行っている間にレナがポケモンスタンプの台を見つける。羽田空港とはスタンプの絵柄が違うようだ。
「やったー、パチリスだ。これも押して良い?」
「どうぞどうぞ」
羽田と違い那覇では台紙も十分用意してある。
レナがインクの位置がずれちゃったとぼやいたとき、カナが走って戻ってきた。
トイレが終わったのかと思えば、
「流し方が判らない~」
・・・自動洗浄なんじゃないの?
「とにかく一緒に来て」
泣きそうな顔で訴える。
仕方ないので手を引っ張られるようにしてついていった。
「レナも行く」
レナもついてきた。
結局トイレは私の予想通り自動洗浄式だった。
なんのことはない。用を足し終えればどこも押さなくても流してくれる。
ついでにレナのトイレも済ませた。
ところがみんなのトイレが終わった段階でレナがバッグが無いと騒ぎ出した。
「ママに渡したよね?」
「渡されてません」
ママが持っているのは自分の荷物と、パパから預かったカナのバッグだけだ。
カナはトイレに行くときにパパに預けて、パパも席を外したときにそれをママに預けていたから。でも、レナのバッグはレナが自分で持っていたはずだ。
「トイレの中に忘れてきた?」
ううんとレナは首を振る。カナもトイレに着いた段階で既にレナのバッグは無かったと証言する。
それでも念のためもう一度使ったトイレの個室をのぞいてみた。やはり無い。
すると・・・
「ポケモンスタンプの所だ!」
やばい。
子どもたちのバッグの中にはポータブルゲーム機のニンテンドーDSが入っている。
というか、それしか入っていない。
バッグ自体がDS専用の物なのだ。機内やレンタカーでの移動中に大人しくさせておこうと持ってこさせたものだ。
ニンテンドーDSは手に入れるのに苦労した(苦労の詳細はこちらで→
ニンテンドーDS
Lite販売の店を探せ)。
お金の問題もさることながら、もうあんなに探し回るのは嫌だぞ。
一度は壊れて修理にまで出したんだぞ。
探し回らなければ手に入らなかったということは、空港なんて場所に置き去りにすれば、二度と戻ってこない確率が高い。
ああ、やばいやばい、どうしよう。
旅の最初からこれかい。
レナにもう出てこない可能性が高いことを何度も言い含めた。
スタンプ台の所に向かって歩きながら、どうかそのまま残っていますようにと祈った。
・・・やっぱり無かった。
さっきまで子どもたちが群がっていたスタンプ台はがらんとして、スタンプと台紙の他は何も残されていなかった。
ああ、やられたー。
ゲーム機も、レナがゲームの中で今まで育ててきたポケモンも、全部おじゃん。
すっかり意気消沈して、諦め半分、スタンプ台のすぐ側にあったANAのカウンターに聞いてみた。
「あのう・・・このバッグと色違いの黒いバッグがこちらに届いていませんでしょうか」
「はい、これですね」
カウンターのお姉さんはにこやかにバッグを取り出した。
そ、それっ。
「それです」
良かった。
誰か親切な人が届けてくれたのだった。
中身のDSもソフトもそのままだった。
お姉さんにお礼を言って受け取った。
「今回は親切な人が届けてくれたからいいけど、いつでも出てくると思わないように。バッグは手から放さず必ず持っていなさい」
「・・・ママに預ける」
判った。預かる。
まったく着いた早々冷や冷やさせられる。