2.フルーツラインと四季の里
二日目 2006年8月27日(日) |
「朝風呂行ってくれば? 晴れているから気持ちいいよ」
「うん」
昨日は夕方から寝る前まで三回も
湯川荘のお風呂に入ったし、途中で浴室が男女入れ替えになったから桧と岩と両方入ったのに、結局お湯がプール並に塩素臭い状況は変わらなかったから、今朝もそれほど気乗りはしなかった。
でもここはロケーションだけはいいから行ってくるかな。
朝も夜と同様、女湯は岩だった。
桧と岩だと桧の方がいい。
浴槽もそうだけど、洗い場もそう。
昨夜はちょっと酷かった。
桧の内湯はちゃんとしたシャワーが三つあるのだが、岩風呂の方はシャワーが二つしかない。しかもひとつは壊れていてお湯が出っぱなし。もうひとつはもっと壊れていて捻る部分が外れている。つまりお湯がまったく出なくて使えない。
しかも昨夜は満室だったそうだ。
子どもたちを寝かせる前にお風呂に連れていき、髪を洗おうと思っていたのに、当然夕食後のお風呂は混雑していて使えるシャワーはひとつだけと来た。
女性はみんな時間をかけて髪や体を洗うから、何時まで経ってもシャワーなんか空きやしない。
結局髪を洗うのは諦めて、掛け湯だけさせてお風呂に入れた。
せめて宿泊客が集中的にシャワーを使う夜だけでも、女湯の方を桧にしてくれればいいのに。
朝の浴室は誰もいなかった。
もちろん露天風呂も貸切り。
臭いをかぐと、ほんの僅かに塩素の名残はあるけれど、昨日のような強烈なことは無かった。
ああ良かった。
ホッとすると、如何に塩素の臭いが入浴の興をそぐかよく判った。
お湯は沢水のような、はたまた薄い汚水のような臭いが少しする。これが元々のこの温泉の臭いなのかもしれない。
内風呂も露天風呂も底から吸引しているが、吸い込む力は弱い。特に露天風呂は外に溢れる分も多そうだ。
肌触りきしきし。
ごく僅かに白っぽい濁り。
急にくるものはないが、のんびり出たり入ったりしているとぬるめなのにのぼせてくる。
木々の緑が目に眩しい。
どこからか沢音が聞こえている。
朝食は8時からだと思ってぎりぎりまで入っていたら、5分も前に準備ができたと電話があったそうだ。
朝食は全員食堂だった。
「どこに行くか決まった?」
何しろ今回は下調べの時間がなかったから手持ちのカードが何もない。
「フルーツラインで果物狩りをして、四季の里という公園で何か体験学習をして来るっていうのは?」とガイドブックを捲りながらパパ。
昨夜のニュースで福島ではぶどう狩りがスタートしたって言っていたな。桃のシーズンでもあるし。
「いいんじゃない」
でもニュース番組の中で一番印象に残ったのは、福島の川俣町で世界で一番長い焼き鳥を焼いたってローカルニュース。和歌山の方の町と、常に一位を競っているらしい。ばかばかしいというか、平和だというか。
子どもたちが朝風呂に行きたがったので、朝二度目のお風呂に入ることになった。
露天風呂は森の中だから、野鳥が来るかなと思ったけど、トンボと蝶しか来なかった。
それほど強い印象のないお湯だけど、二度も入るとどっとくる。
湯上がりに階段を上るのも息が切れそう。
廊下で昨日いろいろ世話をしてくれた仲居さんとすれ違った。
レナがぐずぐず言ったら、お部屋に用意してあるお菓子をくれた。
「女の子はいいよねぇ。大きくなると話し相手になってくれるし。息子よりずっといいよ。娘はね、私が働いているから家のことをやってくれるんだよ。本当に感謝している」
うっ、しまった。
私の娘たちはどう育つか判らないが、私はそんなに親孝行していなかった。
さてフルーツラインというのは東北道福島西と福島飯坂の区間の西側を並行して走る県道5号線の名称だ。
道沿いに果樹園が並び、果物狩りができるとガイドブックに載っている。
ところが、行けども行けども果物狩りの看板がない。
果樹園は沢山あって、直売所も並んでいるのだが、売っているだけで狩らせてはくれないのか??
まあ桃狩りだとしたら、食べ放題というわけにはいかないだろうけど。
途中で微温湯温泉入り口と書かれた信号があった。
あっ、微温湯ってこの辺なんだ。帰りに寄れるかな? と地図を見ると曲がって11キロも先だった。こんなに離れていちゃきっと無理だろう。
高湯温泉方面への交差点まで来て引き返すことにした。
さっき道の反対側にJAの直売所があった。あそこで果物狩りはさせてもらえないだろうか。
しかしやっぱりJAでも販売しか扱っていないようだった。
吸い込まれるように店の中に入ると、果物の入った段ボールがいっぱい。買い物客もいっぱい。大賑わいだ。
桃が一箱千円。や、安い。それも立派な綺麗な桃ばかり。やっぱり桃は沖縄じゃなくて福島だね(先月、
沖縄で路上の桃売りを見た)。
「果物狩りは諦めて、買っていくか」
結局、桃と梨とぶどうを購入。
桃を並べていたおばさんに、今夜食べるならどの桃がお勧めですか?と聞いたら、どの桃も朝取りで硬めだから、柔らかいのが好きなら少し置いた方がいいかもとアドバイスをしてくれた。
それから真っ直ぐ四季の里へ移動。
ああっ・・・高湯が遠のく。
まあいいか、他にも行ったことのない温泉が沢山あるし。
四季の里というのは福島県公営の公園だ。
中には遊具、じゃぶじゃぶ池、体験施設など子どもの遊べる設備の他、農作物直売所、ハーブ園、アイスクリーム屋にパン屋、レストランなどがある。元々のコンセプトが「農業分野の新しい展開を計るための施設」だというから。
入園料は無料。
これだけ施設が整っていて有り難いことだ。
夏休み最後の日曜日だということで、駐車場は満車に近かった。
ぞろぞろと駐車場に戻って来る人たちは、みんな直売所で買った農産物の袋を下げている。
「ここ、何ができるの? 面白いところ?」とカナ。
うーんそれは自分で判断してもらおうかね。
じゃぶじゃぶ池は流石にお子さま向けだったのでやめた。
ザイルクライミングというネット遊具があるのでそちらへ移動。
カナはもうさんざん沖縄でやったからいいという顔をしたが、レナがやりたいと言うので諦め顔でついていった。
遊具の隣に工芸館という体験施設が建っている。
子どもたちがネット遊具で遊んでいる間、そっと見に行った。
ここではこの日、ガラス風船体験(無料)、ガラスの似顔絵作り体験(無料)、土湯こけしの絵付け体験(1,000円)、トンボ玉アクセサリー作り(700円ぐらいから、使うパーツによっていろいろ)、ガラスのマドラー作り(500円)、ガラス絵付け彫り体験(1,000円から、使うガラス製品によって種類有り)の6種類を受け付けていた。どれも幼稚園児ぐらいから体験可能だと言う。
この中から無料のガラス風船体験と、ガラス絵付け彫り体験を選んでみた。ガラスの似顔絵作り体験も面白そうだったが、これは出来上がった製品を後日取りに来るか、郵送料を払って送ってもらわないといけないというのでやめた。
遊具のところに戻ると、子どもたちはまだ遊んでいたので今度はアイスを買いに行った。
遊具からもよく見える水車小屋がジェラートショップになっている。
農産加工品の手作りアイスはひとつ260円。二種類まで選んでコーンに入れてもらえる。
バニラ、抹茶、チョコレートなどの基本に加えて、もも、ラ・フランス、かぼちゃ、ブルーベリーなどの美味しそうなフレーバーが並ぶ。一番人気は塩味。
そこで塩とラ・フランスを選んだ。
遊具に戻ると子どもたちが目敏くとんでくる。
「ちょうだいちょうだい」
「これ何あじ?」
レナは両方、カナは塩味は一口食べて眉間にしわを寄せ、それからラ・フランスばかりをぺろりと食べてしまった。
美味しいジェラートアイスだった。
「次はどこ行くの?」
「ん? あの建物。ガラス体験ができるんだって」
ガラス風船体験というのは、ガラス吹き体験だ。
熱く溶けたガラスをシャボン玉みたいに膨らますのだ。
まあそれだけで、膨らんだガラスは目の前で割ってしまって終わり。
大人もどうぞ。ガラスがどんなに柔らかいかぜひ体験してみて下さいと言われて、私もやってみることにした。
椅子に座っていると、係りの人が長い金属のストローを持ってくる。
先端にもうガラスが巻き付けてあって、力一杯吹いて下さいと指示される。
ふぅ〜と息の続く限り吹くと、バナナみたいに曲がって膨らんだ。
ガラス絵付け彫り体験はまず器を選ぶ。
手頃な1,000円のものは、タンブラー、マグカップ、足つきのグラスの三種類。
使い勝手を考えてマグカップを選んだが、実際に彫るときは持ち手が邪魔で彫りにくかった。
受付で料金を払うと、絵付け彫りに使う器を渡してくれる。それを持って工房へ。50人近く入れる部屋は園内の混雑からすると意外とがらがらで、他に二組ほどの家族がいるだけだった。
係りのお姉さんがやってきて指導してくれる。
最初にマジックでガラスに絵を描く。イラストを印刷した紙も沢山用意されていて、それをガラスの裏から写して描いても良い。失敗したらアルコールで拭けばマジックは落ちるから、何度でもやり直しがきくようになっている。
それからガラスリューターという道具を使ってマジックの線の通りに彫っていく。リューターの仕組みは歯医者の道具と同じで、丸くざらざらした金属を高速回転させているそうで、ガラスは削れるが万が一指などにあたってもこちらは怪我をしない。比較的安全な道具だ。
お姉さんは一通り説明を終えると退室してしまった。
あとは自由にやってくださいということらしい。
子どもたちは今、たまごっちに取り憑かれ中なので、描くキャラもウラたまのキャラだ。
カナはグラスの表面にウラめめっち、セレブっち、ウラふらわっちを描き、底にウラやんぐふらわっちを描いた。
レナはグラスの表面にウラまめっち、ウラめめっち、ウラふらわっちを描き、底にセレブっちを描こうとして何度も失敗した。
「底はスペースが狭いからもっと単純な絵柄にしたら? 幼児期のたまごっちから選べば?」
「ウラめめおっちにする」
線を描き終えたらリューターを手に削る。
これがまたちょっと難しい。リューターは回転しているので、力が弱いと引きずられてぐにゃぐにゃの線になってしまう。
いつもなら途中で上手く行かないと一泣きするところだが、二人とも最後までがんばった。難しいところは頼まれて少し手伝ったが、なんとか自分の力で完成することができた。
ところがこの先が問題だった。
園内のアサヒビールのレストランでジンギスカンを食べるつもりだったのだが、焼き始めてすぐにレナは姉と諍いを起こし、ぐずぐずと言い始めた。
終いにはがたがたと椅子を蹴ったり大きな声を出したので、私はレナを店から連れだした。
反抗期って幼稚園ぐらいまでかと思ったのに、このところ彼女はすぐに自分のコントロールができなくなる。
外の芝生の上で、泣きやむまで放っておこうと思ったが、最近はなまじ体力がついてきて、何時まで経っても泣きやまない。
心配して時々カナが様子を見に来た。
埒の明かない状況をパパに伝えたものか、ついにパパも諦めて店を出てしまった。
そしてパパは泣き叫ぶレナを抱え上げて車に連れ戻った。
帰路もずっとレナはわめいている。
土湯温泉も素通り、行きに通りかかって楽しそうなイベントをやっているのが見えた畜産試験場も素通り。
楽しい一日ではなく、何もかも台無しの一日。
どこにも寄らず塩沢温泉に着く頃、レナはようやく泣きやんだかと思えば癇癪を起こしたままうつらうつらしていたのだった。
ところが車は塩沢温泉への曲がり角を通り過ぎてしまった。
そのまま直進し、ついたところは昨日も立ち寄った
岳温泉だった。
岳温泉はまだ祭りの提灯が下がったままだった。
そう言えば昨夜、湯川荘の仲居さんが今夜は岳温泉の盆踊り大会だけど行かないの?と言っていたっけ。
既に運転手であるパパが飲んでいたので行こうと思わなかったが、岳温泉の盆踊り大会というと仮装行列なども出て賑わいを見せるらしい。
パパにつつかれて、レナは小さな声で「ごめんね」と言った。
駐車場の処に屋台が並んでいた。
さらにヒマラヤ大通りを下っていくと、「きらり」という高級宿の前から御輿が出るところだった。
きりりと鉢巻きをしめた上半身裸の若い衆がみんなで御輿を担いで通りを登っていく。
なに、ほんの数軒行ったところで小休止、御神酒が振る舞われている。たぶん終点は坂の上の甲子大黒天だ。すぐに着いてしまう。
途中途中でバケツを手に待っていた女性たちが御輿を担いでいる男たちにばしゃんと水を掛ける。
後ろからはちっちゃな子ども御輿もついてきた。
屋台で買い物をするにもすったもんだ。
パパが何か一つ気に入ったものを買って良いよと言ってくれたのに、今度はカナがぶつくさ。
彼女はこういうとき、ほしいものがあるのにはっきり言わない。
言わないで「えーっ・・・えーっ・・・」とか後ろに引いていく。
しまいには「ほしいものは無い」とか言って、本気にすると「やっぱりある〜」とか泣く。鬱陶しいったらありゃしない。
レナはというと、こういうときは図々しいくらい素直にほしいものを指さす。
しかしそれがまた、たまごっちキャラのついた光る玩具で、くだらないのに如何にも高そう。
やっとカナがプラスチックのダイヤモンドがついたペンダントを選んだのでレナも同じものにさせた。違うものを選ばせると絶対喧嘩になるから。
ペンダントも屋台料金で一個500円。
パパは小声で「普通100円だよな」と呟いた。
お祭りでけちるのは粋じゃないよ。
宿に戻ると、お昼を食べ損ねてお腹を空かせた私とレナのために、パパは肉を焼いてくれた。
焼くったってどこで? と思うでしょ。
湯川荘の駐車場のはずれでいきなりバーベキューコンロをセッティング。
何だかキャンプに来たような気分。
何故か昼食はしっかり食べたはずのカナまで夢中で食べた。
そしてこんな時間に食べたせいもあり、案の定、宿の夕食時間には子どもたちはお腹を空かせていなかった。
仕方なく、部屋で待っているという子どもたちを置いて、大人二人だけで食堂に降りていった。
昨夜は満室だっただけあって、食堂も、子連れ家族に割り当てられた和室もいっぱいだったが、今夜の食堂は三組だけだった。
子どもたちが食事に降りてこられないことを伝えると、仲居さんは子どもの分を部屋に持ち帰っても良いですよと言ってくれた。その上、トレーごとラップをかけてくれた。なんとありがたい。
大人だけだと心からくつろいで食事することができる。
何だか食事内容も満室だった昨夜より良いような気がした。
固形燃料で温める肉は、昨日は豚肉だったが今日は牛だった。
のんびり二人で食事を済ませ、部屋に戻ると流石に子どもたちはお腹を空かせていた。
ちょうど良いタイミング。
そして食後はお風呂に連れていこうとしたのだが、お風呂から帰ってきたばかりのパパが言う。
「また入れ替えがあったみたいで、今日も夜は女湯が岩だよ」
二重の意味で、えーっ。
ひとつは、子どもたちは昨夜と今朝と湯川荘のお風呂に入っているが、そのときはどちらも女湯が岩だったから今度こそ桧の方に入りたいと言っていたこと。
もうひとつは、岩の内湯はシャワーがひとつしか使えなくて、髪を洗ったりするのには不便だということ。
「いいよ、今夜は俺が子どもたちを入れるよ」
とりあえず家族四人で浴室に行ったが、カナもレナも今度は木のお風呂に入れるということで、いそいそとパパに付いていった。
確かに今夜も女湯は岩だった。
昨日も今日も昼間は夕方4時ぐらいまで桧だったが、5時頃行くともう岩になっていた。そしてそのまま朝風呂も岩だ。
だから桧に入ろうとすると、昼間明るいうちに行かなくてはならない。桧の方が好きだからちょっと癪だ。
泊まり客が少ないからお風呂には誰もいないんじゃないかと思っていたが、洗い場に誰かいる。入浴客じゃなくて従業員らしい。
うずくまってごそごそと何をしているのかと思えば、シャワーのところをいじっていた。
おや、直しに来てくれたのかな?
昨日も説明したが、岩風呂のシャワーは二つしかない。しかも一つは取っ手が取れていてお湯が出ず、もう一つは調節が利かないらしくお湯が出っぱなしだ。
しかし従業員がいじっているのは、出ない方ではなくて出っぱなしの方だった。
「何をしているんですか?」
好奇心から聞いてみる。
「今、お湯を止めたところです」
「・・・?」
えーと、こういう解釈でいいのかな。つまり宿泊客や日帰り客の多かった週末はもう終わったから、シャワーのお湯を出しっぱなしにすると勿体ないので止めた・・・と。
ちょ、ちょっと待ってよ。
それはそうだけど、止めたらシャワー、使えないじゃん。
直したんなら問題ないけど、ただ、止めただけ?
「そのシャワーしか使えなかったんですけど・・・」
こっちは? という顔をして、従業員は隣の壊れたシャワーを指した。
「それ、回すところが取れているでしょ」
「・・・ああ」
抑揚のない声で、従業員は取れた取っ手を取り付け始めた。
取り付けるといっても、はめるだけ。根本的に直すというのとは違う。
従業員が作業している間、思わず昨日の状況を説明してしまった。
入浴客がいっぱいいるのにシャワーがひとつしか使えなかったこと。直せないならせめて宿泊客がみんな髪を洗いたがる夜は桧風呂を女湯にしてほしいこと。
「はぁ、女の人はみんな夜、シャワーを使いますね」と、興味の無さそうな声で返答された。まるで状況を改善する気がないみたい。
そして、不自由掛けて申し訳ないといった言葉もかけずにそそくさと出ていってしまった。
この宿は部屋もロケーションも気に入って、仲居や受付も感じよく、本当のところまた泊まりたいという気持ちもあるんだけれど、このときのやりとりと、初日の塩素臭いお湯だけは納得いかない。
彼女が行ってしまってから、直してもらったシャワーのお湯を出した。
一応お湯は出る。
但し、既に欠けている部品をはめ込んだだけだから、ちょっと力を加えればまたぽろっと取れてしまうだろう。
私は知っているからそろりそろりと回したけれど、知らない人が普通の力を加えてシャワーを出そうとすれば一巻の終わりだ。
全然解決になってない。
なんだかなぁ・・・。
露天風呂に移動すると塀の向こうから子どもたちの声がした。
塀の下に手が差し込めるぐらいの隙間がある。
「ここだよ」
カナの手が出てきた。
部屋に戻ってさっきの顛末をパパにかくかくしかじかと報告すると、「俺を一晩タダで止めてくれるなら、すぐにでもホームセンターに行って部品を買ってきて、ちゃっちゃと直してやるのになぁ」と言われた。
(注 別にパパはそういう仕事をしている専門家でもなんでもありません)
「だいたいお湯を出しっぱなしにするくらいなら、修理した方がよっぽど安く付くよ」
うん、まったくだ。
修理しようっていう観念がないのかな。
ちょっと残念なことだ。