子連れ旅行温泉日記の目次子連れ温泉ガイド地熱愛好会 > 子連れ旅行温泉日記 > 那須の紅葉旅 > 2-9廃業した遊園地のジェットコースターは絶滅した恐竜の骨格のように

那須の紅葉旅

9.廃業した遊園地のジェットコースターは絶滅した恐竜の骨格のように



 栃木の旅最後の温泉は、小山温泉思川にすることを前から決めていた。
 小山温泉というのは、小山ゆうえんちの温泉だ。
 小山ゆうえんちは子供の頃から「おや~まゆ~うえ~んち~♪」というフレーズのCMでお馴染みだったが、中途半端な距離と規模で一度も行ったことがなかった。特に行きたいとも思っていなかった。
 そうこうしている間に、今年はじめ資金繰りに難儀したあげくつぶれてしまったらしいのだ。
 なんとも残念な話だ。
 だけど、東京ディズニーリゾートなどが熱心なリピーターで日々溢れかえる中、郊外にある昔ながらの遊園地が存続していくことは、綱渡りするより難しいことだったんだろう。
 遊園地興隆のために温泉も掘ってはみたが、結局遊園地は閉鎖して温泉だけを続けていくことになってしまった。

 逆説的だが、遊園地が営業していたら今回も小山温泉に行くことは無かっただろう。
 いつも佐野に行くのは苺狩りなり何かしらの目的があるので、遊園地でゆっくり遊ぶ余裕は無い。
 でも子供たちは遊園地を見たら温泉ではなく遊園地で遊ぶまで納得しないだろう。
 だからつぶれてしまったのをこれ幸い、今回は小山温泉に行ってみることにした。
 稲刈りの後の汚れを落とし、帰宅前に髪などを洗ったりするには最適な規模の温泉施設だと思っていたので。

 佐野から小山へは国道50号線を東へ十数キロ。
 広くまあまあ空いていて快適な道だった。
 小山市内で4号線に曲がる。
 すると低いビルの並ぶ向こう、歩道橋の奥に古びた鉄塔が見えた。
 「あれじゃないか?」
 てっぺんにUFOのようなものを乗せた鉄塔は、近づいてみたら遊園地の乗り物の一つだった。
 そのUFOみたいなところからチェーンで乗り物をぶら下げて、ぐるぐると回るのだろう。もちろんもう動いていない。


画面中央、UFOのように遊園地のタワーが見える


 住宅地の中に遊園地はあった。
 もう動くことのない観覧車、ジェットコースター、なんだか涙を誘うような光景だ。
 子供たちは窓から見つけて、ねえねえ、あれなに? と期待に弾んだ声を出した。
 これから遊園地で遊べるのだと思ったのだ。

 「あれはねぇ、もうつぶれちゃった遊園地なの。動いていないでしょ」
 「えーっ、なんで?」
 「なんでかな。続けていくお金がなくなっちゃったんだと思うけど」
 当然カナには納得がいかなかったようだ。
 「どうして?」

 小山温泉思川と書かれた大きな看板に従って曲がると、たぶん以前は遊園地の駐車場だったと思われる場所に出た。
 ジェットコースターの線路が死滅した恐竜の骨格のようにそびえている。
 見上げると今にも動き出しそうなカラフルな観覧車の下に錆びたメリーゴーランドもあった。
 「遊園地に行くんじゃないの? 何しにここに来たの?」
 「お風呂に入るため」
 カナとしてはますます納得がいかない。


町並みの向こうに、かつては小山ゆうえんちであったモノが見えてきた




2-10.遊園地だった温泉へ続く


那須の紅葉旅 目次 | 子連れ温泉ガイド地熱愛好会HOME