1.九尾の狐伝説と殺生石
その昔、玉藻の前なる絶世の美女が時の支配者、鳥羽の院の寵愛を受け、やがては国を滅ぼそうとしたと、謡曲殺生石にうたわれる。
正体を現した玉藻の前は、白面金毛九尾の狐の姿となり、那須へと逃れ、ついには魔力を持つ矢にて討ち果たされる。
死してなお、九尾の狐の妖力は衰えず、石となった後も瘴気を撒き散らし、源翁和尚なる高僧に三つに砕かれた今も、石の置かれる辺り一面草木も生えぬ白い地獄の様相を呈している。
これが那須湯本に伝わる九尾の狐伝説と殺生石の謂われだ。
あの松尾芭蕉もおくのほそ道で「蜂蝶のたぐひ真砂の色の見えぬほどかさなり死す」とその光景を詠んでいる。
つまり昆虫などが近寄るとみんな死んでしまうという、硫化水素などの毒ガスが噴き出し続ける那須湯本の様子を表している。
まあとにかく九尾の狐のおかげで那須湯本温泉が湧いているわけだ(ちょっと違うか)。
那須湯本の共同浴場 元湯鹿の湯は、その殺生石から道を渡った谷間にある。
今泊まっている
雲海閣の硫黄泉浴槽と同じ、鹿の湯・行人の湯混合源泉のはずだが、せっかく那須湯本に来たのだから一度は入ってみたい。