17.温泉饅頭占い師
部屋に戻るとカナがこっちこっちと小部屋に呼ぶ。
子供たちの部屋でレナが何かを占ってくれると言う。
カナが客引きの役らしい。
小部屋の中央には座布団が置かれ、その上に水晶玉の代わりに何故か温泉饅頭がひとつ乗っていた。
カナがそこに座るように言うので座布団に座ろうとすると、そこは駄目だと言われる。占いに使う玉(だから温泉饅頭なのだが)を乗せる台なんだそうだ。
「何を占ってほしいですか?」
「カナとレナがどうしたら喧嘩しなくなるのかを占ってほしいです」
カナはもう部屋の外に出ていて、レナだけが残っている。
レナは神妙な顔で立ち上がると、やおら踊りだした。
「ぴたぴたぴたりん、あたりんちゅ」
とっとこハム太郎の似非占い師ミステリーちゃんの真似だ。
「どうですか?」
ひとしきり踊り終えた後でレナは言った。
「その占いは、占えません」
おいおい。
そうしている間に、パパは既に一風呂浴びてきた。
特に階段下の硫黄泉がパパ好みだと思うと教えたので、とりあえず硫黄泉に入ってきたようだ。
「お風呂入ってきていいよ」と私にも言ってくれる。
「あっ、外でもいいよ」
これは、外湯なり、余所の宿の風呂なりに行ってもいいよという意味だ。
「外湯と言っても、この辺りは自由に入れるのは
鹿の湯ぐらいなのよ」
「どういうスケジュールを考えてるの?」
・・・歩いて回れる範囲だと、鹿の湯と
老松温泉喜楽旅館の二つを考えている。
「今日これから喜楽旅館へ行って、明日の朝一番で鹿の湯に行きたい」
那須湯本の共同浴場、鹿の湯はとにかくべらぼうに混んでいると聞いている。
教えてくれる人、教えてくれる人、みんな例外なく凄く混んでいてお湯はなまるし写真は撮れないと口を揃えて言うのだ。
でも那須湯本と言えば鹿の湯と言うぐらい、絶品のお湯で雰囲気も素晴らしいらしい。
どうしても入りたい。
だから朝一番を狙おうと思っていた。
30分ぐらい前に並んでいればきっと一番に入れるだろう。
子供たちを連れていかなけりゃ迅速に行動できるし。
「そこ、何時からやってるの?」
「朝8時から」
「じゃ、無理だよ」
えっ、何で?
雲海閣から徒歩10分ぐらい。佐野の稲刈り受付は10時半。さっと帰ってくれば十分間に合うんじゃない?
「ETCの通勤割引を使うんだから9時までには東北道に乗らなきゃ。8時半を過ぎると宿をチェックアウトした客で那須街道が混むかもしれないし、8時過ぎにはここを引き払わないと」
・・・。
「今から鹿の湯、行ってくれば?」
だってこんな時間帯じゃもう絶対混んでるよ。
「だから?」
うー。
「・・・じゃあこうしよう。明日の朝は8時にチェックアウトして車で鹿の湯に行く。それでさっと入ってから佐野へ向かえばいいだろう?」
うん・・・まあね・・・。
でも子供たちに支度をさせたり、みんなで車で行ったりしたら、絶対に30分前についてオープンまで並んで待っているなんてできっこないよなぁ。
これは当日になってみるまでもなく、きっと思っていたようには入れないに違いない。