◆◇桜の古都巡り◇◆
奈良観光旅行記
二の鳥居から続く参道は長くはなく、御祓川に架かる小さな橋を渡ると大神神社の末社である祓戸神社のごく小さなお社があり、そのまま石段を昇るとすぐに拝殿だ。
石段の最上段にしめ縄の鳥居があった。鳥居にしめ縄が飾られているのではなく、鳥居の横の棒自体がしめ縄でできている形のものだ。
そもそもこれを鳥居と呼ぶのかどうかはわからないが、鳥居の原型のような素朴で良い意味で古い印象を与えている。
まず手水舎で身を清め、石段を昇ると拝殿が現れた。
ちょうど背から夕陽が差し、茅葺屋根の拝殿が照らされている。
拝殿前の境内にはもう誰もいなかった。
風が吹いているだけであとは静かだ。
大神神社には本殿は無い。
ご神体は三輪山そのものだからだ。
拝殿の後ろにそびえるはずの三諸の神奈備こと神山の三輪山の姿は拝殿からでは近すぎてかよく判らなかった。
三輪山の神を代々祀る三輪一族は大和の豪族であり、初代天皇 神武天皇の皇后 媛蹈鞴五十鈴媛命(ひめたたらいすずひめのみこと)、二代天皇 綏靖天皇の皇后 五十鈴依媛命(いすずよりひめのみこと)を輩出している。これは三輪一族が当時大変な権力を有していたことをうかがわせる。
二人のひめは姉妹であり、父親は大物主神。すなわち大神神社の主祭神であり三輪山の主。
日本の神々の系譜で行けば天照大神から現在の皇室に続く天孫系ではなく、出雲系。
また、ひめたちの名前に「たたら」や「いすず」が入っていることから製鉄産業と深いつながりがあると思われる。
そして綏靖天皇の5代あとの孝霊天皇の娘が前述の箸墓伝説の主人公 倭迹迹日百襲姫命になる。
とても面白い。興味深い。
そんなことを考えながら大神神社を参拝すると、伝説の中を歩いているような気がしてくる。
大神神社の拝殿のすぐ左に「くすり道」と記された岩が立っており、階段の混じる細い砂利道が続いている。
霊泉の湧く狭井神社へ至る道だ。行ってみよう。