◆◇桜の古都巡り◇◆
奈良観光旅行記
16.ならまち
ならまちというのは漢字で書けば普通に「奈良町」なのだが、ガイドブックなどでは「ならまち」とひらがなで記載されていることが多い。実際、奈良市観光協会もひらがなで「ならまち」と呼んでいる。
場所は近鉄奈良駅の東南から南に掛けてのエリアで、とにかくガイドブックに載るようなこ洒落た食事処、甘味処、ショップなどが多い。和風でありながら古臭くなく今どきのメニューや装飾の店が多く、また若い個人作家の陶芸やアクセサリーの店も多い。
そもそもは、ならまちエリアとは元興寺の旧境内だ。
今もならまちに元興寺は存在しているが、奈良・平安時代にはこのならまち一帯を全て含むほどの広大な境内を有する巨大寺院のひとつであった。
なお、ならまちという正式な地名は存在しない。今は一種の観光名所として、古い街並みや観光客相手の店舗が並んでいるこのエリアを総称してならまちと呼ぶ。
ならまちに関しては旅行計画段階であれこれあったのだ。
レナがスケジューリングに参加せず、興味があるのは食べることだけと言い放ち、せめてガイドブックで行きたいところに付箋を貼れと指示したところ、ひたすら食べ物関係に貼りまくったという話は最初にした。
そのことにカナが激怒し(スケジューリングは行くメンバー全員で考えて詰めていくべきだというのが彼女の持論)、一時は喧嘩になり、レナはもう奈良には行かないとまで言い出した。
レナの貼った付箋は当然のようにならまち界隈に多く(単純にガイドブックに載っている食べ物関係の店がならまちに固まっているため)、食べることにあまり興味のなかったカナはならまちなんて詰まらないから行きたくないとばっさり切り捨てた。
売り言葉に買い言葉で事態が悪化したこともあるが、まあどっちもどっち。
そんな因縁のならまちだったが、何だか花粉カットグラスに引き寄せられるように、気が付いたら私たちはならまちの入り口にいた。
今いる東向き商店街を抜けたところがもうならまちの北端と言ってよい。
ならまちはこの通り一本の両側といった狭い範囲ではなくかなり広いので、南半分までは行かれなくとも北側でレナがチェックした店をいくつか回るのは可能そうだ。
加えてレナの目が花粉にやられてしまったので予定より早く奈良公園方面から移動してしまったし、長谷寺周辺に夕食を食べる店が無かったことから長谷寺参拝を明日に伸ばした計画もあって、まだ2時間半ぐらいこの辺りで過ごす余裕がある。
これはまあ、やっぱりならまちに呼ばれている、ならまちに行けってことだろうなぁ。
レナが希望した店をリストにした紙と地図を手にして最初の行き先を探す。
一番近いのは・・・ぜいたく豆本舗。