最終日 2004年5月6日(木) |
静かな朝だった。
湯治棟は昨夜の泊まり客が三組しかいなかったからだ。
昨日までは朝も6時前からぱたぱたスリッパの足音など行き来していたからだ。
天気は回復して、青空がのぞいている。
レナは軽いアトピーで、今回も旅行前、かなりかゆそうにしていた。このところ、一月に一度くらいの割合で温泉に出かけるので、かゆくなっては温泉に行き治癒して、またかゆくなる頃には次の旅行が控えているという感じだった。
最初の二日ぐらいはまだ膝の裏など掻いていたが、昨日ぐらいからかかなくなった。湯治と言うにはあまりにお気楽だけど、温泉の効果はちゃんとあるのだ。
本当は最後の日は朝風呂に入りたかったが、パパに白布で入るから良いだろうと言われてあきらめた。
荷物をまとめている間も、子供たちはいつもの宿の裏手でつくしを摘んだり忙しい。
さあ準備完了と思ったらレナがいない。
まさか川にでも落ちたのでは、と青くなったが、当人は一人湯治棟に戻って、「みんななかなか下に降りてこないんだもの」と、けろりとしていた。
何だかたかだか4泊5日なのに、キミタチ、じぶんちみたいになってないか?
出発の時、パパが言った。
「またここに来たい人」
「はーい」
ちょっと小さい声だったけど、迷わずカナとレナは手を挙げた。
山桜に見送られて、カーブの多い山道を下り始めると、すぐにあたりの景色は雲の中。
今日は晴れると思ったのにな。
それがトンネルを抜けると景色は一転。
快晴の空が広がっていた。
今日はこれから
白布温泉へ行ってみようと思っている。
本当は二日前、
小野川まで行ったついでに足を延ばそうかと思ったのだが、少し遠いし、一番行きたかった西屋旅館で自遊人という雑誌についてきた入浴無料パスポートが連休中は混雑したら使えないと明記されていたからだ。
連休は昨日まで。今日は平日。きっとタダで入れるに違いない。
滑川から白布に行く道は、米沢を経由しなければ水窪ダムのダム湖の畔を通る。
山の中の静かな湖で、今雪解け水で増水しているのか、緑の葉をつけた木々が半分湖の中に沈んでいるのが面白い景観を作り出している。
白布温泉は、
蔵王高湯、
信夫高湯(高湯温泉)と並ぶ奥州三高湯のひとつで鷹が傷を癒しているのを見て猟師に発見された伝説を持つ。
西屋、中屋、東屋と三軒の茅葺き屋根の旅館が並ぶことで有名だったが、誠に残念なことに平成12年、火災のため東屋と中屋が焼失、今は西屋だけが昔の面影をとどめる。
現在10時45分。
確か西屋の立ち寄り入浴は昼の12時からだ。今からでは早すぎる。どうしよう。えーと、白布には滝があったはずだ。昨日に続き滝を見に行こう。
駐車場も滝も場所がよく分からなかったので、道沿いに見えた白布温泉案内所と書かれた土産物店に入ってみた。こけしや、郷土玩具のお鷹ぽっぽの実演販売などもしている店だ。
こちらで駐車場と滝の場所を教えてもらう。
駐車場は西屋から少し下ったところにある電話ボックスの前ぐらいの空き地に、滝はホテル渓山の正面の細い道を降りると5、6分で着くと教えてもらった。ただし道が急なので子供連れは注意するとのこと。
「今日は日帰り?」と聞かれて、滑川温泉に泊まっていたと伝えると、白布の旅館もいろいろ日帰りをやっているよ、入っていかないかと言われた。
「実は西屋旅館に入ろうと思っているんです」
「あそこは12時からだね」
「だから・・・滝を見て、そうそう白布に良いお食事処はありますか?」
「すぐそこに吾妻屋という美味しい蕎麦屋があるよ。滝を見て、そこで食事をすればちょうど12時くらいだね」
おお、ばっちり、いい感じ。
早速車を停めて、滝へ降りてみることにした。
5、6分なら昨日の滑川大滝に比べればちょろいちょろい。
しかし道はこちらの方が遙かに急だった。
4歳児でも注意すれば何とか降りられるが、途中、沢水が流れているようなところもあり歩きにくい。植生も湿地帯。蕨や芹といった美味しそうな植物も。
下り終えると滝の下へ出ていた。
昨日の滑川大滝も美しい滝だったが、こちらは目の前なので迫力倍増。二段になってかなりの水量がどっとあふれ出してくる感じだ。
これまた名瀑だなぁ、とパパ。
はいはい、滝は日本の滝に限るんでしょ。
滝見のあとはお食事。
吾妻屋はなかなか洒落た外観だった。
オーダーを取りに来るのではなく、客が直接レジ係のおばあちゃんのところに出向いて注文と支払いを先に済ませるシステムが変わっている。
メニューの山菜蕎麦がとにかく美味しそうだったので、これを二つと蕗の薹味噌を頼んだ。
運ばれてきた山菜蕎麦は、もう青々とした蕨が山盛り。
蕨、さっき生えてるの、見たよね、とパパと私。
蕎麦の味も小野川温泉で食べた蕎麦より美味しい。硬いと言うほどではないけど歯ごたえがあってしっかりしている。
子供たちは蕎麦を食べる気分ではないようなので、ご飯を一膳頼んだ。子供たち自身にお金を持たせ注文に行かせた。
ご飯にはふりかけまでつけてくれた。気が利いてる。
でもあまりにカナがもりもり食べたので、パパが蕗の薹味噌で食べようと思っていた分はほとんど残らなかった。
食事を終えるとちょうど良い時間になっていた。
西屋の駐車場に移動して、無料パスポートを手に車を降りる。
さっき西屋の前を通りかかったときは、仲居さんたちがせっせと窓を磨いていた。
古い家屋を美しく維持するのは大変なのだろう。
茅葺きでない棟の方には枝垂れ桜が満開の花をつけている。
白布で西屋を選んだのは、パスポートで無料になるというのもあったが、前々から西屋が白布で一番行ってみたいところでもあったからだ。
パパが言った。
「お風呂は4、5人が入れる程度の小さいものだって言うじゃない。そこ(西屋)、何があるの?」
・・・何がって言われると・・・。
露天風呂があるわけじゃない。展望があるわけじゃない。
何がって言われると困る。
茅葺きの古い建物だとか、お湯もとてもいいらしいとか、一応いろいろあるけれど、何でここに拘るのかって聞かれると、ちょっと自信がなくなった。
つまらないお風呂だったらどうしよう。
でもま、タダなのは確かだから、とにかく行ってみよう。
茅葺き屋根の棟の隣に玄関がある。ちょっとドキドキしながら引き戸を開けると、何だか殿様がくつろいでいそうな広い玄関でびっくり。
ご主人が出てきて受付をして下さった。まだあまりパスポートを使った人はいないのか、しげしげと頁をめくってスタンプ欄を探していた。
お風呂は玄関を抜けていったん外に出たところにあるという。靴を脱がなくても行かれるように、土足用の細い通路がついていた。
小さな庭のようなスペースがあり、木造の湯小屋があった。
浴室との間を遮る戸の下の方に一律に隙間が空いており、そこから絶え間なく湯が流れてくる。
だから三和戸を上がったところに簀の子が敷いてあるのだ。廊下の床一面に湯が流れているから。
カナとレナを連れて脱衣所に入ると使用中の脱衣籠がひとつ。先客がいる。
早速子供たちをぬがせて中に入ると、度肝を抜かれた。
これはすごい。
確かに広い浴室ではないけれど、木組みの天井、黒々とした石の浴槽、三本の打たせ湯が滝のように落ちていて、溢れる湯は段差のない浴槽の縁からさざ波を作り後から後から贅沢に流れていく。
この浴室には、風格とセンスがあるのだ。
ここに匹敵するのは
法師温泉長寿館の法師の湯ぐらいか。
お湯はかなり熱めで、高いところにある小さい浴槽にダイレクトに注がれ、ここから溢れた分の一部と、三本の湯滝から大きい方の浴槽に流れ込むようになっている。
先客の女性が既にホースの冷水をどぼどぼ入れていたので、低い大きな浴槽のお湯は適温になっていた。薄まっているがこれなら子供たちも入れそうだ。
湯小屋が薄暗いのでお湯の色はよく判らない。お湯の流れるところは石でも木でも墨のように真っ黒に染まってしまっているので、お湯も黒々と見えるが透明なのかもしれない。白っぽい湯の花がふわふわと漂っている。湯中ではきしきしと来る肌触り。臭いや味は強くない。
加水しない高いところの浴槽にも入ってみようとしたが、流石にあまりに熱くて手を入れるのがやっとだった。
仕方なく湯滝にあたってみる。これでもひりひりするほど熱い。
先客はすぐに上がってしまわれたので貸しきりになった。
パパが子供たちを呼んだ。
いそいそと男湯に出かけたカナとレナはすぐに女湯に戻ってくる。
「あっちは熱かったよ」
別に露天風呂も広いお風呂もジャグジーもないけど、何故か二人ともここがとても気に入ったようだ。なかなか上がりたがらなかった。
帰りがけに無料パスポートのスタンプ帳を受け取った。
今度は女将さんが出てきて、昨日まではゴールデンウィークで大混雑だったけれど、今日からは静かでいいですよと仰った。
いつか泊まりで来てみたい宿だ。
また来ますと伝えて後にした。
茅葺き屋根の維持は本当に大変だと思うが、次に来るときまでこのままの風情を保っていてほしい。
ぎりぎりまでこの白布温泉西屋旅館と新高湯温泉吾妻屋旅館と迷ったが、新高湯は次回のお楽しみにとっておこう。
この後は、西吾妻スカイバレーを越えて、福島側へ降りることにする。
西吾妻スカイバレーは元々有料道路だったが、去年の7月から無料開放され、終日通行できるようになった。
山形側は、不動滝、双竜峡、錦平といったビュースポットが点在し、やがて県境の白布峠に至る。
雲海の向こうに浮かぶ高い峰はどこだろう。蔵王だろうか。
峠を越えて、福島側を見下ろせば東鉢山の七曲がり。眼下に青い檜原湖。
険しくそびえる白い山々は新潟との県境、飯豊山の方角か。
晴れた空の下、快適なドライブだった。
お腹いっぱい食べてゆっくりお風呂に入った子供たちは後部座席で半分うとうととしている。
檜原湖畔は静かで、快晴の空よりなお鮮やかな湖面はコバルトブルー。
双耳の磐梯山が正面に見えてくるとこれぞ裏磐梯だなぁという気がする。
ところどころ釣り客がいる他は観光客はほとんど見ない。ゴールデンウィークの喧噪は昨日で終わってしまったのだ。
道の駅裏磐梯のところで右折。
次の目的地は喜多方だ。
1月にグランデコに来たとき、喜多方に寄らず会津に行ってしまったのでパパはどうしても喜多方ラーメンが食べたくなったと言うのだ。
さっき白布で蕎麦を食べたばかりだけど、おやつに喜多方ラーメンっていうのもいいかな。
道を曲がってすぐ、
ラビスパ裏磐梯の前を通る。
ここは確か、今年じゃなくて2年ぐらい前にグランデコに来たとき寄った。
吹雪いていてすごく寒かったよねと、パパと思い出話をした。
カナもレナもまだちっちゃかった。
室内プールは快適だったが、露天風呂はあまりに寒くて一瞬で退散するほどだった。
喜多方まではすぐだったが、着いてもまだラーメンを食べる店は決まっていなかった。
たぶん過去三回くらい喜多方でラーメンを食べたことがあるはずなのだが、店の名前を覚えていない。
確か女性経営者がやっていてチャーシューが有名なところと、金箔が入ったラーメンを売りにしているところには入ったことがあるような・・・でもそれってどこだろう。
実は自分はあまり醤油ラーメンが好きではない。選べるなら塩ラーメン。あと豚骨が好きかな。
そのせいか、今まで喜多方では、ぜひもう一度食べたいと思うほどのラーメンには会っていなかった。今回は記憶に残るようなラーメンを食べられるだろうか。
459号線からアクセスしたので、最初、道沿いの「老麺まるや」が目に付いた。
そのまま通り越してふれあい通りから駅前方面に進み、次は産業道路を走ってみた。ここで目に付いた二軒目は「こんどう食堂」。
しかし今の時間が2時45分で、こんどう食堂は準備中、まるやも3時までで昼の部は終わりだ。せわしないのは好きじゃない。
再び戻ったまるやの前に車を停めて、しばし思案。まるやから近いところに「朝昼夜(あさひや)」という店がある。ここのひまわりラーメンはちょっと面白そう。
裏通りへちょっと入り、レトロな助産所(産婦人科ではない)の正面が朝昼夜だった。
蔵のまち喜多方 老麺会の暖簾が下がっている。
店内は広々として、他のお客さんはいなかった。
営業中ですか?と聞くと、「どうぞ」と返事が返ってきた。
カナにここのラーメンはお花みたいな形なんだよと言うと、食べてみたいと嬉しそうに目を輝かせた。
レナはまだ寝たままだったので、抱き上げて席に運んだ。
待つこと数分。
運ばれてきた丼は、本当に花びらみたいにチャーシューが並んだひまわりラーメンだった。
美味しそうー。
麺がとてもつるつるしている。つるつるしているのに歯ごたえがある。
白髪ネギも利いていて、チャーシューも分厚い。
これは美味しいや。
ラーメンってこんなに美味しいものだったんだ。
カナも食べる食べる。
やっと目を覚ましたレナも食べる。
スープまで綺麗に飲み干して、あっという間に丼二つは空っぽになった。
後は帰るだけ、と思ったけど・・・。
子供たちも目を覚ましたから、最後にもう一カ所入っていくか、とパパ。
喜多方からIC方面に向かうわけだし、あとは子供たちの髪や体をしっかり洗える場所がいい。
先日の
会津本郷温泉がハズレだったからこのあたり、お湯的にはさほど期待できないけど、会津坂下にも日帰り温泉があったはずだ。そこはどうかな。
古いガイドブックで「湯トピアばんげ」、新しいガイドブックで「
糸桜里の湯ばんげ」。名前は違うけど、たぶん同じ施設だろう。
会津坂下は最初字を見たとき、「あいづさかした」と読むのかと思った。坂下で「ばんげ」と読むなんてぴんとこない。糸桜里の湯ばんげという名前を見たとき、「なまはげ」みたいな角のある化け物を想像してしまった。
パパはナビを見ながら、ここってスキー場の側なんだな、とてもあと10キロ走ればスキー場があるような場所には見えないぞ、と言う。
確かに。
見たところ、平地で田圃が続くばかり。どこにスキーのできるような山があるのだろう。
会津坂下町に入り、少し北上する。やっと低い山が見えた。それでもスキー場があるような山には見えない。本当にこんなところでスキーができるんだろうか。
いや別に、スキーをしに来たわけではないからそんなこと気にしなくても良いのだが。
斜面に糸桜里の湯ばんげは建っていた。いかにもセンター系という感じのかなり豪華な建物だ。
入り口はバリアフリーになっていて、浴室は眺めの良い二階にある。
とても綺麗で広々としているが、浴室に足を踏み入れたとたん、充満するカルキ臭。
窓を広くとった展望風呂は、濁らない黄緑色のお湯だ。温度は適温で軽いにゅるにゅる感がある。隅にハーブのイベント風呂があり、展望風呂の正面に真湯のジャグジー。露天風呂の出口手前に寝湯と水風呂とサウナが並んである。このうち水風呂は透明だが寝湯は茶色っぽい。それともこの色はお湯の色ではなくタイルが変色しているのかもしれない。
露天風呂もカルキ臭がひどかった。
高台にあるのに立ち木がじゃまで遠景がほとんど見えない上に、目隠しもあってせっかくの立地条件が活かしきれないのが残念だ。
展望風呂と寝湯と露天風呂に温泉が引かれているが、37度くらいのぬる湯に調節された寝湯だけ明らかに色が違う。この浴槽だけがカルキ臭がしない。
にゅるにゅる感も少し弱く、排水はパスカルの穴になっている。施設の方針からして掛け流しとはちょっと思えないが、ここのお湯がダントツで良いような気がする。
そんなわけで、ずっとこの寝湯に居座ることにした。ちょうど5時から料金が安くなるのだが、5時少し前でお客さんもほとんどいなかったので。
ぼーっと寝湯に仰向けになっていたら、ふいにカナがお風呂に変なものがあるから見てと、腕を引っ張った。
何事かと思って展望風呂の底をのぞきに行けば・・・白いペットボトルの蓋を少し大きくしたようなものが沈んでいた。
こ、これは・・・。
つまみ上げて愕然。
昔、小学生の頃、水泳の時間にいつも見ていた。プールの底にたくさん沈んでいたあれだ。
カルキ臭のみなもと。塩素剤ではないか。
見ると展望風呂の底には他にもあと1つ。露天風呂にも二つ、水風呂にも一つ、沈められていた。
・・・。
温泉でレジオネラ菌による死者が出て以来、施設がお湯の消毒殺菌に神経質になるのは判る。
しかし本来やるべきことは浴槽の清掃と、何より循環装置を使うなら装置内のフィルタや管の殺菌消毒ではないか?
浴槽内に無造作にぽんと塩素剤を丸ごと投げ込むのは正しいのか?
今までカルキ臭のする温泉にはいくつも入ってきたけど、どこもこんなことを日常的にやっていたのだろうか。
これが今どきの温泉の真の姿なのだろうか。
何か間違ってないか?
塩素を入れても温泉には変わりないなんて、目の当たりにしてしまった今、そんな詭弁は聞きたくない。
名水を使い最高級の昆布と鰹で出汁をとっても、そこにいの一番や味の素を入れたら台無しだ。
人工調味料を使うなとは言わないけど、それは水道水に入れてくれ。こんなことをしたら、昆布も鰹も浮かばれない。どこそこの高級品を使いましたという名前だけになってしまう。
最高級の温泉ばかりを巡ってきた最後に、大きな問題提起をつきつけられたような気がした。
湯上がりはすべすべしてよく温まった。
ほんと、にゅるにゅるする肌触りといい、決して悪い温泉ではないのだ。
国の重要文化財にもなっている立木観音の横を通り、会津坂下ICへ。
高速に乗るとき、ちょうど山に夕日が落ちた。
こうして初めての子連れ自炊湯治の旅は終わった。
磐越自動車道は宝の山こと会津磐梯山の麓を通る。会津坂下ICに乗ったときからずっと正面に磐梯山がそびえている。福島ともこれでお別れだ。山形と福島の県境あたりを楽しんだ今回の旅は、長いようで短かった。
まるで昭和初期の長屋にタイムスリップしたような、古い木造建築、狭い6畳間。
隣室の話し声は襖を閉めていても筒抜けだし、電灯は薄暗くてしばしば点滅する。
ガスは10円玉を入れないと火がつかないし、冷蔵庫なんてもちろん無い。
温泉は一級品で、露天風呂は山桜咲く川沿い。
夜になると階段脇のベンチに一人二人と集い、知らないもの同士で話も弾む。
隣室の親父さんと、端の部屋の三人組からそれぞれ別れの時に言われた言葉。
それは、
「来年のこの季節に、また
滑川温泉で会いましょう」
おしまい