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◆滑川温泉湯治日記◆



三日目 2004年5月4日(火)

 今日は雨らしいからどこへ行こう?とパパが言った。
 本当は天気が良かったら滑川大滝まで歩いて、戻ってきたら姥湯に行こうと昨夜は話していたのだ。
 雨となると・・・室内プールの栗子クアドームDUOはつぶれてしまったから、小野川温泉の独楽の里つたやか、高畠ワイナリー。
 つたやは独楽の色付けが体験できるはずだし、ワイナリーは工場見学。もし小野川温泉に行くなら、白布温泉まで足をのばしたいと付け加えるのも忘れない。

 しばらくガイドブックや地図とにらめっこしていたパパは、やがて「今日は独楽の里つたやと高畠ワイナリーに行く。白布は滝もあるようだし、別の日に改めて行こう」と言った。

 昨日、米沢上杉まつりを見た米沢の相生橋を通過する。
 昨日の賑わいはどこへやら、今日の河川敷は長閑にサッカーの練習などに使われている。まさに「つわものどもが夢のあと」だね。

 独楽の里つたやは小野川温泉の手前にある。
 大正時代開業の木製玩具専門店で、現在も独楽生産量日本一を誇る。
 中に一歩入ると巨大独楽が出迎えてくれる。これは上から何本かの太いワイヤーで支えられていて手で押して回すこともできる。
 店の中は変わり独楽が沢山。カナもレナも小さな独楽を気に入っていろいろ回してみた。独楽作りの実演も行っていて、目の前で木を削っている。

 さて、独楽の色付けだが、手の平大の投げ独楽や平独楽もあるが、もっと小さい豆平独楽や逆立ち独楽でもできる。
 小さい独楽は三つで400円なので、子供でも回しやすい平独楽を二つと変わり種の逆立ち独楽を一つ選んだ。カナは逆立ち独楽をレナは豆平独楽を色付けする事にした。

 係りの人が簡単にやり方を教えてくれる。ろくろのようにくるくる回るところに独楽をセットして、回しながら筆で色を付けていくのだ。
 まずパパが見本にひとつやってみた。
 次はカナ。
 工作やお絵かきの大好きなカナは夢中で色を付けていく。ピンク、赤、黄色・・・。
 丁寧に丁寧に。
 できあがるとドライヤーで乾かす。
 完成。
 カナは大喜びで、またここに来たい。きっと連れてきてねと言った。
 次はレナ。
 レナは平独楽なので表と裏と両方色を塗ることができる。
 左利きなので左手に筆を持ち、右手で支える。
 そーっとそーっと筆をつきだし、すーっと色が付くと、「やったぁ」

 つたやの一階は売店と体験コーナーだが、二階は木地玩具の博物館になっている。ごく小さな博物館だが日本各地及び世界の木製玩具やこけしなどをいろいろ展示してある。

 独楽の里はどんな感じの施設なのかなと思ったけれど、特にカナがこんなに気に入ってくれたなら、来て良かったなと思った。
 赤べこの絵付け体験の時も思ったけど、絵を描いたり色を塗ったりという作業、子供はみんな好きだよね。

 ここまで来れば小野川温泉はすぐ。
 小野川温泉は1200年前に小野小町が発見したと伝わる美人の湯だ。町をあげていろいろ企画していて、今とても元気の良い温泉地としても知られる。
 尼湯と滝の湯という共同浴場の他、町外れのほたる公園に無料の露天風呂などがある。

 滝の湯の隣にラジウム卵製造処があり、湯の花がうようよと漂う源泉が溜められていた。この製造処のお湯は69〜74度で、程良い温泉卵が作れるという。槽の奥に一個40円のラジウム卵無人販売籠が置いてあるが、残念ながら空っぽ。

 お腹が空いたなぁ。
 まず食事にしよう。
 滝の湯の傍らの金寿しという店に入った。寿司屋なのだが、手打ちそばの看板があって、お蕎麦も食べられるかなと思った。
 ざるそばと、なめこそばを注文。
 レナは大好きななめこばかり拾って食べ、ざるそばを食べるかなと思ったカナも温かいお蕎麦の方がいいと言ってなめこそばの方を食べた。
 ここの蕎麦は太め。柔らかめだが歯ごたえはある。蕎麦なんだけど半分うどんみたいな不思議な味。

 食べ終わって店を出たら、隣に小町ゆかりの名泉、滝の清水という湧き水があった。
 美人になるらしいから飲んでみなよと勧めても、カナもレナもなぜか後込みしている。レナは「美人にならなくていいよ」とまで言った。
 すっきりしていて美味しい水なのに。
 大きな鍋にこの水を汲んでいく人があるかと思えば、それは今の寿司屋兼蕎麦屋のご主人だった。
 なるほどあそこの蕎麦は、この名水で打つのね。

 もう一度滝の湯前を通ると、ちょうど新しいラジウム卵を補充するところだった。出来上がりはどこかへ運んでいくようだが、数個、その場の無人販売の籠にも入れていた。後で買って帰ろう。

 さて、この小野川温泉のシンボルは、共同浴場尼湯である。
 独特のカーブを描く屋根のついた湯屋建築で、近くのつるや商店又は山川屋商店で入浴券を購入し、券を自分の脱衣棚の前に表示して入浴するシステムをとっている。

 尼湯の前に飲泉所があり、ここで小野川温泉の源泉を飲むことができる。
 ほとんど熱湯で、少し冷まさないと口にできないほどだった。クリアで傷んでいないようなゆで卵臭があり、味は出汁の利いた濃いめの塩味。かなり美味しい。料理に使ってもいけそう。
 熱いのを見てとってか、飲泉好きのレナも臭いをかいただけで首を横に振った。感想は、「焼き卵みたい」。

 しかし目の前の源泉があんなに熱いと、お風呂もまたしかり。
 カナはパパと男湯に、レナは女湯についてきたが、子供たちを入浴させるのは苦労しそうだ。

 初日の飯坂温泉鯖湖湯みたいに脱衣所と浴室がつながった作り。細長くて、脱衣所も狭い。
 タイル貼りの浴室には地元の方二人と、観光客二人。
 観光客の若いお姉さんは、レナが近寄っても冷水を出しっぱなしにした蛇口のところから動こうとしない。というかお湯のあまりの熱さに動けずにいるらしい。
 何とか少し移動してもらって桶に水を汲んだ。鯖湖湯の時と同じで、ぬる湯ミックス掛け湯作戦だ。

 とりあえず自分がそろそろと入ってみる。
 熱い。でも鯖湖湯に比べれば入れないほどではない。浴槽を隅から隅まで移動してみて、実は水道の蛇口があるあたりが一番熱いことに気づいた。
 反対側から源泉が注がれていて、そこからまっすぐ蛇口の方へお湯が流れて掛け流されていくので、どうしてもそこが一番熱くなるのだ。ここで冷水を入れてもそれは流れてしまうばかりであんまり意味無いじゃない。
 だから逆にぬるいのは、源泉のすぐ横あたりだった。もちろんぬるいと言ったって子供が喜んで入るにはほど遠かったが。
 その辺が一番お湯が澱むあたりで、湯の花も一番多く漂っていた。透明なお湯に白い湯の花だ。

 レナに、「こっちの方がぬるい」と言って無理矢理入れてしまった。
 カナにはこの技は利かない。彼女は嫌だと言ったら何が何でも嫌というタイプだからだ。
 レナは気に入ればそれで良しというタイプなので何とかなる。
「嘘だ、熱いじゃないのー」と文句は言われたが、何とか二人で入浴することができた。

 上がると案の定、カナは入らなかったと聞いた。源泉と冷水のミックス掛け湯だけで終わってしまったそうだ。まあ、いいか。

 独楽の里では晴れ間ものぞいていたが、尼湯を上がると細かい雨が地面をぬらしていた。
 先ほどのラジウム卵を三つ買って、雨の小野川温泉にさよなら。

 再び米沢を通過して今度は北上、高畠を目指す。
 市内は交通量が多く、渋滞気味だ。
 高畠ワイナリーは看板も多く、すぐに判った。ゴールデンウィークだからか、広い駐車場もいっぱい。大型観光バスも停まっていた。
 正面広場では、米沢牛の串焼きだの、蕎麦打ち体験コーナーだの節操無くいろいろイベントをやっている。
 工場見学はどうぞ勝手に見てくださいシステム。
 ガラスの向こうに全自動の瓶詰め機などあるが、季節柄か動いていない。係員が清掃しているばかりだ。

 ワイン工場のメインはやはり試飲。
 試飲会場は足の踏み場もないような大混雑。その間をぬって、さくらんぼのワイン、ラ・フランスのワインといろいろ飲み比べてみる。
 我が家は辛口好きだが、ここはどちらかというと甘口のワインに力を入れているようだ。甘さの中に微妙な渋みのあるさくらんぼのワインを購入することにした。

 面白くないのは子供たちだ。
 並ぶのがアルコールばかりでは、自分たちは試飲できないからだ。
 どこかにジュースはありませんか?と問うと、あちらにと教えられた。
 一カ所だけジュースの試飲コーナーがあるのだ。
 美味しいから買ってとせがまれて、千円以上するぶどう液を購入。これがワイナリーの手なのだった。

 外に出ると正面広場でイベントが始まる時間だった。
 本当は「驚きの使者バンババン(何者?)によるショー」が行われる予定だったが、バランス芸(?)なので悪天候には向かないということらしく中止になってしまった。細かい雨は降り続き、風も少しあったので。
 ショーの代わりに子供たちに風船をプレゼントしてくれるという。カナとレナも10人ぐらいの子供たちと一緒にステージに並んだ。
 ただの風船かと思ったら違った。そのバンババン氏が目の前でバルーンアートを子供たちひとりひとりに作ってくれるのだ。
 最初の男の子が剣をリクエストした。剣は簡単そう。
 次は女の子でうさぎ。跳ねているうさぎと跳ねていないのとどっちが良いと聞かれて、跳ねているうさぎを作ってもらった。いろいろなバリエーションがあるようだ。
 でもお花をリクエストした子には、お花は大変なのでリクエストは一回きりと言っていた。なかなかどうして何でも良いというわけでもないようだ。
 カナの番が来て、いぬをリクエストした。
 耳の長いビーグル犬みたいなのを作ってくれた。
 レナはねこ。
 そうしたらねこは作れないと言われてしまった。他のもので何がいい?と聞かれて、彼女が悩んでいると、洋服にクマの絵がついているからクマにしようと勝手に決められてしまった。
 でもなかなか凝ったクマができた。レナはそれで満足。

 ワイナリーで子供たちはあまり面白くなさそうだったけど、最後にタイミング良く動物の風船をもらえて良かった。
 雨の中、来た甲斐があったかもしれない。
 しかし謎のバンババン氏、本当はどんなショーをやる予定だったのだろう???



 今夜の夕食は、玉こんにゃくと、子供たちにはビーフシチュー。
 昨日、黄木で買ってきた米沢牛のレトルトだ。
 カナはこれがいたく気に入って、もっと食べたいもっと食べたいを連呼。一人分しかないと判ると、また買ってまた買って。
 うーん、また米沢に来ないと買えないよ。
 また来年、滑川に来るようかな。
 今度は米沢上杉まつりを最後まで見られるかな。

 食後は家族四人で露天風呂へ行った。
 時間は6時過ぎ。二食付きの旅館棟に泊まっている人たちは今頃夕食を食べているだろう。幸い雨も上がっていい頃合いかもしれない。

 ところが考えることはみな同じ。
 露天風呂は大盛況だった。
 それもどこかで見た顔ぶればかり。
 自炊棟の宿泊客、ほとんど来ているんじゃないかという感じ。
 川が近いので、子供たちはのぼせると排湯口から葉っぱや木の枝を流して遊んでいた。それが川へ流れていくのが面白くて仕方ないらしいのだ。
 レナがトイレというのであまり長くは入っていられなかった。

 子供たちを寝かしつけていると、廊下から話し声が聞こえた。
 廊下の階段の横にベンチがあり、いつも灰皿が置いてある。パパは昨日はそこで隣室の親父さんと話し込んでいたが、今日はまた別の人が相手らしい。湯治場で女の人たちは挨拶以上のものはほとんど交わさないが、男性陣はどういうわけかすぐにうち解けるらしい。
 レナはすぐに寝て、カナはなかなか寝なかったが、それでもようやく二人とも静かになったので、自分も廊下に出てみた。
 パパの話し相手は茨城から来た男性三人組のうち二人で、やはり滑川の常連客らしい。
 滑川の吊り橋のそばに木の椅子とテーブルがある。パパはあそこでバーベキューしようかと話していたが、彼らも同じことを考えていたそうだ。明日、天気が良かったら一緒にやろうと話がまとまった。
 自炊宿は上げ膳据え膳の旅館と違って何だか面白い。

四日目に続く…

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