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15.くらやみ風呂



 子供たちも寝てしまった後、ゆっくり一人だけでお風呂に入った。
 昨夜も寝る前にゆっくり入ったおかげで冷え知らずだった。
 本当にここのお風呂はよく温まる。
 でも古びている分、夜一人で入っていると少しばかり怖い。
 そう思っていたら・・・
 バチッ!!
 突然浴室が真っ暗になった。
 電気を消された!?
 「きゃーっ」
 思わず悲鳴を上げてがらりと磨りガラスの引き戸を開けた。
 「・・・あっ」
 人が入っているとは思わなかったのか、逆に驚いた顔がのぞいていた。
 すいませんと言われたのか言われなかったのか、こちらも気が動転していたので覚えていない。
 すぐに電気はついて、相手は引っ込んでしまった。
 一瞬のことで、そのときは宿の人だったのかどうかも判らなかった。
 後から泊まり客の一人だったことが判った。
 それにしてもいきなり電気を消すのは勘弁してほしい。


和泉屋の析出物の固まる湯口


 気を取り直してもう一度湯に身を沈めた。
 ああ吃驚した。
 これが真新しい浴室だとそんなに怖くはないのだが、雰囲気のありすぎる浴室で、夜、いきなり電気を消されると心臓に悪い。
 ゆっくり入って、のぼせてくると湯の外に出て、お湯を掛けながらくつろぐ。
 はあ、これが温泉宿にお泊まりすることの嬉しさよね。
 どれくらい時間が経ったろうか、さっきの悪夢をようやく忘れかけたときだ。

 バチッ
 「ぎゃーっ、やめてっっっ!!」
 また電気が消された。



3-1.朝風呂で思い出す昨夜の顛末へ続く


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