7.肌触り五変化温泉
建て付けの悪い浴室の引き戸を開けると、湯気の中、なんともいい味を出した四角い浴槽が薄暗い中に湯をたたえていた。
浴槽の縁は木なのだが、温泉成分で赤茶色に染まり、ところどころ析出物がこびりついている。
男湯との境には、燃えさかる火を中心に、男女とおぼしき人物が踊っている神話的なレリーフがかかっている。
隅に源泉の打たせ湯があり、そこから絶えず落ちる湯の音が辺りに響きわたっている。
ざぶざぶとお湯を掛けると、なかなか熱い。
そろそろと中に入り、湯口に近づくと、これまた
四万温泉の御夢想乃湯(旧施設)の湯口にも負けないような立派な析出物の固まりができていた。しかも飛沫の当たる周辺の縁もすごいことになっていて、とげとげした固まりは珊瑚か何かのようで、触るとぽろりと欠けたりした。
浴室中に漂う新鮮な金属臭。
お湯の色は青緑がかった磨りガラスのよう。
赤茶色の湯花が沢山。
味は金属をなめたような味とじゅわっとくる感じに、後味に渋みとえぐみ。
栃木の
老松温泉を思い出すような果実の老いた味わいがある。
肌触りがまた面白くて、最初つるつるとして、すぐににきしきしときて、上がるとべたべたとなり、乾くとすべすべして、最後に粉をはたいたようにさらさらとなる。
肌触り五変化温泉だ。
最後のさらさら感は、日本三美人の湯、
川中温泉にも引けを取らない。
ふいに浴室に響きわたっていた湯の音が消えたと思ったら、カナが打たせ湯を使っていた。打たせ湯はぬるめなので、のぼせたときにもいいかもしれない。