2.松川渓谷あわや通行止め
透明なお湯の混浴露天風呂ではあるけれど、ここは女性にも入りやすいよう気を配った作りだ。
脱衣所だけでなく、露天風呂に出る前に男女別のお風呂があり、そこで掛け湯したり洗ったりできるし、お湯に入るところも考えて作られている。
しかも基本がタオル巻。
松川渓谷温泉では、誰でも気楽にこの広い川沿いの露天風呂が楽しめるようになっている。
二日目 2008年8月14日(木) |
朝、目が覚めたのは7時頃だった。
駐車場のトレーラーに泊まった子供たちはまだ朝寝坊しているようだ。
露天風呂は夜7時までで翌朝は朝7時から。
先に起きたパパはこの7時を待って露天風呂に向かうつもりだったようだ。
ちなみに何故夜間入浴禁止かというと、もちろん階段など足下が危ないというのもあるだろうけれど、基本的に夜間にお湯を抜いて清掃するから。
あの広い湯船だけど、毎日きちっと洗ってお湯を入れ替えている。
もちろん循環なんてしちゃいない。
掛け流しの極上湯だ。
夜中に入りたければ宿泊者専用内風呂へ。
こちらは昼間、清掃する。
この日も一人、どこにも出かけないつもりでいたパパは、昼に入って追い出されたらしい。
とにかくパパに誘われて、混浴露天風呂に行くことにした。
昨日も一度階段を降りてみたが、日帰りのカップル客など多く、諦めた。
どうせ3泊も宿泊するのだから、朝風呂などいくらでもチャンスはある。
そんなわけで昨夜は中の内風呂だけにしていた。
タオルを手にいそいそと石段を下りる。
途中すれ違う宿の人がおはようございますと挨拶してくれる。
木立の間から朝の日差しがもれる。
日中はじりじりと暑く感じるが、流石に朝晩は空気がひんやりしている。
石段を下り終えると左手に水車小屋が、右手に日帰り入浴の受付と食事処兼休憩室があった。
松川渓谷温泉に二食付きで泊まると、ここで食事を出されるようだ。
休憩室の建物の前には温泉卵を作る場所と、湧き水でスイカをふたつ冷やしている場所があった。
露天風呂の入り口はさらに先。
男女別のドアの足下は水がちょろちょろと流れているので、浴衣の裾をぬらさないように私は持ち上げて通った。
脱衣所。
ここまでは昨日も来た。
昨日は日帰り客が多かったので露天風呂に入るのは諦めたのだが、どうも今日も多そうだ。
女性用脱衣所にはいくつかスリッパがぬぎすててあった。
脱衣所では一人、目の前でタオルをきちっと巻いて、お風呂へ向かう人がいた。
松川渓谷温泉の混浴露天風呂はバスタオル巻推奨・・・いやいや、バスタオルが無いと入れてもらえないのだそうだ。
賛否両論あるかもしれないが、これだけきっぱりと決めてくれると、多くの女性にとっても入りやすいと思う。
タオルを巻いて出たところは、まだ混浴露天風呂ではない。
内風呂とも露天風呂ともつかない空間で、決して小さくない岩風呂がふたつ並んでいるが、頭上は透明なトタン板のようなもので塞がれている。
ここは女性専用の空間で、男性側にも同じ様な場所があるらしい。
ここで女性はゆっくり体を洗ったり、流したりすることができる。
また、この場所があることにより、混浴露天風呂から上がった後、ずぶぬれになって重くなったバスタオルをゆっくり処理することができる。
日帰りの場合は無理だと思うが、宿泊者は宿泊者専用浴室の脱衣所に洗濯機が設置されているので、そこで脱水を掛ければ完璧だ。
タオルの後始末の話はおいておいて、私もバスタオルを巻いて混浴露天風呂に出てみよう。
露天風呂は想像していたより広かった。
本当に大きな岩の露天風呂で、川は見えないものの遮るものもない空間だった。
深緑が頭上にせり出して、木漏れ日が湯面に反射する。
緑に囲まれているようなお風呂だった。
横に長く、ちょうど男女別の露天風呂への入り口は奥まったところにあり、女性用の出口正面には「女性専用席」と書かれた看板が立てられている。
ただ、露天風呂は混んでいた。
朝は7時から入ることができる。
誰しもが同じことを考えたらしい。
何だか昨夜の泊まり客全員が露天風呂に集合しているのではないかと思った。
松川渓谷温泉のお湯は、ごく僅かに白濁り、ほとんど透明な中に細切れの消しゴムかすのような白い湯の花が舞っている。
湯口は赤茶色に染まって、肌触りはきしきしするお湯の多いこの辺りの温泉でもダントツのきしきし感でとにかく滑りが悪い。
淡いゆで卵ととにかく温かいお湯の臭いがする。
それほど熱くはないのに、すぐに中から温まってしまう。
誰もいないときに独り占めしたいなぁ。
湯上がりは石段の登りがきつい。
なのに朝食前に三回も往復することになろうとは。
部屋に戻るとトレーラーの中の子供たちがもう起きていた。
本当に三人はトレーラーの中で寝てしまった。
宿代、もったいないかも。
で、彼女たちは昨夜は遊ぶのに夢中でついにお風呂に入らなかった。
今朝の朝風呂でがっちり洗わねば。
私はカナとレナを宿泊者専用の浴室に連れていった。
あそこならシャンプーもボディーソープもある。
ところが二人を連れて脱衣所に入ったところで、ちび姫ちゃんを連れたyuko_nekoさんがあらわれた。
「中のお風呂は熱いと思うよ」
た、確かに・・・。
昨夜入った宿泊者専用のお風呂は熱かった。
浴槽が大きいからか、既に適温まで下げられている露天風呂などと違い、小さな桧の浴槽にどばどばと高温の源泉が注がれているのだから、かなり熱い。
加水は自由だが、温度を下げるには時間も掛かる。
そこでyuko_nekoさんについて、一緒に石段下の露天風呂に行くことにした。
混浴露天風呂手前にある男女別の岩風呂は、あつ湯とぬる湯に湧かれていたので、ぬる湯の方なら面倒は無いだろう。
ところがせっせと石段を下りて出かけた下のお風呂には、シャンプーも石鹸も置いてなかった。
混浴露天風呂だけでなく、男女別の岩風呂もだ。
普段なら、体は掛け湯して、頭は後日ということもあるが、今朝は何しろ昨夜入らなかった分なのだから、しっかりきっちり洗わないとならない。
「判った。私が取りに行ってくるから、yuko_nekoさんと子供たちは先に流していて」
私は一人でまた石段を登った。
ミニボトルのシャンプー、リンスと、小さな丸い石鹸を手に、私はまたまた石段を降りた。
もう息切れがするよ。
朝風呂有り、朝食無しの状態で三往復はきつすぎる。
ちょうどさっき入っていた他の人たちはみんな上がってしまって、混浴露天風呂は無人になっていた。
朝一番よりこの時間帯が狙い目なのかもね。
今回の旅行では、ちび姫ちゃんがプールで泳ぐことを楽しみにしているというので、滞在中一度はプールへ行こうという話をしていた。
この辺りでプールというと、信州高山温泉郷の温泉施設のひとつである
YOU遊ランドがある。
到着日・帰着日を除くと今日と明日が一日まるまる使える。
どちらか天気の悪い方をプールに当てようと考えていた。
でも一番天気が悪いという予報の昨日すらよく晴れていたので、もういつ行っても同じ様な感じだった。
「今日、子供たちをプールに連れていくか」
でもその前に・・・。
大人四人で温泉に行くことにした。
山田温泉。
信州高山温泉郷の中で唯一温泉街らしい温泉街を形成しているところ。
松川渓谷温泉からはちょっと下る。
開湯200年の温泉地で、森鴎外、与謝野晶子と言った明治時代の文豪に愛された歴史がある。
そして山田温泉にはシンボルである共同浴場大湯がある。
昨日からがっちゃんは朝風呂に大湯に連れていってあげると私に言ってくれていた。
熱いから朝がいいとも。
パパとがっちゃんは山田温泉大湯に入ったことがあるのだ。
去年の9月、信州高山温泉郷に来たとき、私とyuko_nekoさんと子供たちは
七味温泉紅葉館に泊まり、パパとがっちゃんは山田牧場のキャンプ場に泊まった。
そのときにパパとがっちゃんが煙草を買いに山を下りて、朝風呂に大湯に入ったのだ。
「俺の好きな熱いお湯」と、そのときのパパ。
「カランが凄くかっこいいんだよ」と、そのときのがっちゃん。
だから私も今回大湯に行くのを楽しみにしていた。
山田温泉の村営駐車場は坂の上の方にある。
そこに車を置いて坂を下ればすぐに大湯だ。
坂道の左には風景館という瀟洒な旅館。
坂道の右には湯元館というこぢんまりとした旅館。
そして風景館の先に大湯。
墨色に塗られた木造の堂々とした造りで、ちょうど足湯のある公園の正面に建っている。
パパの分と一緒に入浴料を払おうと、「大人二人」と言ったら「600円」と返ってきた。
きょ、共同浴場にしては高いのね。
そう思って600円×2人の1,200円を払おうとしたら、受付のおじさんに「一人300円の二人で600円」と笑われてしまった。
脱衣所は天井が斜めで、入浴着にご理解をというポスターが貼ってある。
乳ガンで乳房を切除した人などが、周りを気にせず入浴するための入浴着というものがある。
これを啓蒙するためのポスターだ。
誰もが他人を気にすることなくリラックスして温泉に入れるように。
浴室は細長かった。
浴槽も長方形で、二箇所に湯口がある。
と思ったら洗い場の近く、奥の方にある湯口はカランで使われなかった余ったお湯が浴槽に流れ込むようになっているのだった。
・・・ということは、カランのお湯も源泉だ。
そう言ったら、yuko_nekoさんは、「そうでなきゃ、あんな勿体ないカランの造りはしないよね」と同調した。
がっちゃんがいたく気に入った大湯のカランはちょっと独特の造りで、常にお湯が流れている溝を、板を回して止めるようになっている。
止めなければ溝からお湯が絶え間なく流れ落ちる仕組みだ。
その数少ないカランは全て使用中だった。
朝一番ならいざ知らず、もう山田温泉大湯は大勢の入浴客で混雑していた。
パパの言ったとおり、お湯は熱かった。
掛け湯をして入ると、最初はかなり熱く感じた。
でも流石に
草津時間湯だとか、早朝の
飯坂温泉鯖湖湯だとか、温泉卵じゃなくてかたゆで卵になっちゃう
小野川温泉尼湯だとか、私が入った歴代熱湯温泉と比較したら大したこと無い。
入ってしまえば落ち着く程度の熱さだった。
お湯の質は泊まっている松川渓谷温泉にちょっと似ている。
ほとんど透明なお湯で、消しゴムかすのような白い湯の花は松川渓谷より細かい。
すっきりさっぱりした感触で、やはりきしつく旗触り。
意外にそれほど一気には温まらない。
体感温度が他より熱かったから反対にそう思うのかも。
浴室は建物外観の歴史を感じさせる印象を損なわず、昔からずっとこんな風に愛されてきた温泉なのだとそんな風に思った。
とにかく混んでいるのだ。
観光客だけでなく地元の方も多い。
なお、この大湯から道を挟んで少し下ったところに、もうひとつ共同浴場らしい建物が建っているが、がっちゃんの話によるとこちらは地元の方専用なのだそうだ。
熱すぎると言って早々にyuko_nekoさんが上がってしまった後も、私はしばらく入っていた。
地元の方々は私よりよっぽど長風呂だ。
いつまでも浴室にいる面々は変わらない。
但し、お湯が熱めなのでお風呂の中に入っている人は少ない。
みんな浴槽をぐるりと囲んでお風呂に背を向け、ひたすらおしゃべりに興じていたりする。
これがきっといつもの山田温泉大湯なのだろう。
お風呂上がり、大湯の正面にある足湯のある公園に目をやったものの、みんながそこで涼んでいるとは気づかず、私は一人で駐車場に続く坂を上がっていった。
とっくに上がったはずのみんなは車にはいなかった。
途方に暮れて携帯に電話すると、なんだ足湯のところにいたのにと言われてしまった。
なんだかんだでプールに出発するのは午後になってしまった。
もう昼からビールをかっくらっているパパは松川渓谷温泉でお留守番。
がっちゃんが運転する車にyuko_nekoさんと私、そして三人の子供たちが乗り、山道を下った。
「サマーランドぉ?」
がっちゃんとyuko_nekoさんが妙な看板を見つけたらしい。
東京人の私にとってサマーランドと言えば八王子だかあきる野だかにある東京サマーランド。
でもこんなところにサマーランド???
昨日の秘湯 小安温泉と同じ臭いがすると思ったのか、がっちゃんは車をサマーランドの方向に向けた。
まあ、YOU遊ランドにしなきゃならないってことは無いのだから、まずはサマーランドがどんなサマーランドか見てからでも遅くない。
先にちょっと買い物を終えて、辿り着いたサマーランドはイメージしていたB級設備とは違い、正式名称を「須高広域総合プール」と言って、立派な屋外総合プール施設だった。
50mの競泳プール、大きなウォータースライダーと繋がったドーナツ状の流れるプール、浅い幼児用プールに、飛び込み専用プールもある。
こんな辺鄙な場所に(失礼)、こんな夏の短い場所に、まさかこんなに立派な屋外プールがあるとはまったく思っていなかった。
がっちゃんもyuko_nekoさんも子安温泉に続いてのヒットに、この辺りにはB級っぽい看板があっても、中身がちゃんとしていると思い始めたようだ。
屋内プールのYOU遊ランドは違う季節にも行かれるし(どうやらまたこの辺に来るつもり)、今回はせっかくだからこのサマーランドに行こうと決めた。
駐車場に車を停めて、券売機で入場券を買って・・・大人500円、中学生未満300円だった・・・ナイターもある。たぶん夏が短い分、その短い夏は夜まで入れるということだろう。
とにかく私たちは手早く更衣室で水着に着替えてプールサイドのベンチに陣取った。
このときカナが機嫌を損ねていた。
最近多いんだ、彼女。
反抗期というか、自分で自分をどうしたら良いか判らなくなって、あれでもないこれでもないと言い出す。
このときは水泳用ゴーグルだった。
私は旅行先のプールまではゴーグルを持参しなかった。
するとカナはゴーグルが無いとプールに入れないと言いだし、売店で200円で売っていたから買ってあげると言えばいらないと言う。
じゃあ、どうしたいわけ〜?
ちび姫ちゃんとレナはさっさと流れるプールに飛び込みはしゃいでいる。
カナだけうつむいたまま大人と一緒にベンチにいる。
そこへがっちゃんが浮き輪を買ってきた。
高かったけど買ってきた。
何故かサマーランドの売店は、水泳用ゴーグルは200円で売っているくせに、浮き輪は1,300円だった。
「ほうら、これでどうだ?」
カナの顔が明るくなった。
何かきっかけがほしかったらしい、がっちゃんが買ってくれた浮き輪を手に、みんなとプールに入っていった。
こういうときは親が言っても駄目なんだよね。
ありがとう!! がっちゃん。
それからの子供たちはよく遊んだ。
もう本当によく遊んだ。
ずーっと流れるプールにいて、三人で浮き輪に捕まったりもぐったり追いかけっこをしたり。
時々がっちゃんが茶々入れに行ってくれて、三人がかりで水を掛けられていた。
こうしてみると、この三人は本当に仲良くなっていた。
親同士が仲良しだから一緒に旅行に行くことが多いけど、割と最近までレナは馴染めなかったのだ。
たぶんちび姫ちゃんが大人になったから、今は三人が三人一緒に仲良しになった。
ちび姫ちゃんにとっては、カナは友人でレナは共通の妹なのかもしれない。
サマーランドにはウォータースライダーがあったが、身長制限120センチ以上だったので、レナは無理だった。
レナが無理ならカナも滑らないと最初から言っていた。
ちび姫ちゃんだけは一人で一度滑りに行っていた。
公営プールらしく、サマーランドには1時間に一回、10分程度の休憩時間がある。
4時の休憩を待って、退園することにした。
その頃になって空模様が怪しくなってきた。
昼間は晴れていて、ちょうどプールに来た頃から少し雲が多くなってきたのだが、4時頃の空は今にも大粒の雨が落ちてきそうだった。
しかも遠雷が少しずつ近づいてくる。
でもまさか、私たちは、あんな恐ろしい大雨になるとは思ってもいなかった。
休憩の笛が鳴る前に、大きな雷鳴が轟いた。
ぽつりぽつりと雨が腕に当たる。
ようやく休憩時間になった。
急いで子供たちを上がらせるが、その間にも雨は激しくなってきて、もう休憩でなくてもプールから上がると思える人が増えてきた。
だから更衣室もめちゃ混みだ。
ようやく場所を見つけて子供たちを着替えさせる。
本当はサマーランドのすぐ裏手に須坂温泉という旅館があったので、帰りにあそこで汗を流していこうかなんてちょっと思っていたがそれどころではなかった。
がっちゃんがサマーランドの出入り口まで駐車場から車を回してくれることになった。
そうしている間にもどんどん雨は激しくなる。
ちょっと屋根の下から出ただけでびしょぬれになりそうだ。
私たちは急いで車に乗り込んだ。
浮き輪も車に放り込む。
ドアを閉めてと。
がっちゃんが急いで車を発進させた。
須坂の町を後にして、信州高山温泉郷への坂を上り始める。
山を登る道路も凄いことになっていた。
坂道をざんざんと水が流れてくる。
フロントガラスも激しい雨でよく見えないほどだ。
がっちゃんが、ほらあれと指さした。
道の端に下水を流す溝があるが、怒濤のように流れてくる雨水が水しぶきを上げてその溝からあふれ出している。
ところどころ道路の中央にも大きな水たまりがあって、がっちゃんの車がそこに突っ込む度に、スプラッシュマウンテンのような状態になっていた。
ふと携帯を見ると、パパからのメールが入っている。
「こっちは、雷の土砂降りだよ! そっちはどう?」
どうって・・・
どうって・・・
どうってこっちも雷の土砂降りだよ。
そしてようやく山田温泉の温泉街に差し掛かり、もうあと少しで松川渓谷温泉だというときに、私たちは信じられないものを見た。
道路の真ん中を塞ぐようにして立てられている看板。
「大雨通行注意 ここから山田牧場まで通行止めになります」
つ、通行止めだぁ〜!!?
どどどどうすんの?
泊まる松川渓谷温泉はこの先だよ。
パパが一人待っているのもこの先だよ。
通行止めって、私たち、どうやって松川渓谷温泉まで帰りゃいいの?
看板はまさに今、立てられたところのようだ。
担当している車がすぐ横に停まっていた。
「松川渓谷温泉に泊まっているものなんです。帰りたいのですが」
車に乗っていたおじさんは、事情を聞いて通してくれた。
これ以上雨量が多くなる前に帰り着かなくては。
がっちゃんはいつも以上に神経を使いながら車を走らせた。
「左右が危ないんだよ、道路の真ん中を走った方がいい」
私たちの他に山を登っていく車は無いが、対向車はときどきすれ違う。
通行止め規制が敷かれる前に山田牧場方面からこの道に入った車だろう。
益々雨は激しくなる。
雷も鳴り響く。
ごろごろ亭を過ぎて・・・今日は雷滝じゃなくても雷だ。
ようやく私たちは松川渓谷温泉に到着した。
いやもうホントにどうなることかと思った。
あんなに激しい雷雨だったが、夕方6時過ぎには空が明るくなり、夜にはすっかり止んでいた。
夕食後は花火。
松川渓谷温泉の駐車場で。
大きな月も昇っていて、あの激しい夕立が嘘のようだった。