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◇◆がんばれ新潟◆◇
四万温泉と雪国古民家の旅

5.上越国際スキー場




 最後の日の朝、窓から外を見ると、もう枝の雪は全て融けていた。
 もちろん地面の上にはふかふかと積もっているけど、昨日も一昨日も雪が降ってはいたはずなのに融ける量の方が多いなんて。
 いつぞやの豪雪の年とまるで違って暖冬なのかも。
 群馬県の四万温泉から始まって、新潟十日町の貸し民家で続いたお正月の旅行記も、いよいよこれで最終日。


最終日 2009年1月5日(月)

 空にはちょっとだけ青空ものぞいて、新潟に移ってきてから一番いい天気だ。
 朝ごはんの後はさっさと荷物をまとめて、10時半にはみらい2号館を出た。
 昨夜の雪は途中で雨に変わったのか、一昨日パパと子供たちでせっせと作ったかまくらはずいぶんと縮んでいて、レナがしゃがんでも入れないくらいになっていた。

 さて、今日は月曜日なので既に帰省客による上り渋滞は昨日で解消されていると見るべき。
 また、パパは明日まで休暇を取ることができたので夜遅く帰着しても大丈夫。
 ということで、どこか大きなスキー場で遊んでからゆっくり東京に帰ろうと計画していた。

 みらい2号館を出た車は、まずほくほく線まつだい駅前のふるさと会館に寄り、いつもの藻塩とそれから目についた芝峠温泉雲海のお饅頭を買ったあと、酒屋の三笠屋に寄った。
 三笠屋では初日に買ったと同じポークジャーキーの酒どろぼうを二袋ほどお土産に購入。
 後はトンネルを抜けて信濃川を渡り十日町に入った。

 今日寄るスキー場の候補は関越道沿いでできるだけ規模の大きなところ。
 上越国際、石打丸山、舞子高原・・・じゃなくて今はセントレジャー舞子って言うの?、それから岩原。湯沢までは行かないんでしょ?
 私に選ばせると、スキー場の規模より帰りの温泉のことを考えてしまう。
 「岩原はどうかな。リフトも結構あるっぽいよ」
 「いわっぱらー? 駄目駄目。あそこは上級者向けだよ」とパパ。
 「そうなんだ・・・じゃやっぱり上越国際か石打丸山だよ。行ったことないところで石打にするかー」
 しかし、あれやこれや携帯の情報サイトでスキー場のページを調べていくうちに、石打丸山には午後券のみの適切なリフト券が無いことがわかった。午後券があるにはあるのだが、ナイターつきなのだ。うちは流石にナイターまでは滑らない。
 「そうすると、やっぱりちょうどいいのは上越国際だな」

 上越国際スキー場は一昨年もみらいの帰りに寄った。
 ちょうどポケモンスタンプラリーをやっていて、ポケモン好きのカナとレナは大はしゃぎ。
 でも今年は残念ながらポケモンスタンプラリーはやっていないらしかった。
 ただ、コースもバリエーションに富んでいるし、ファミリー客も多くて滑りやすかった。
 新しいスキー場に行かれないのは残念だけど、上越国際は悪くない。



 月曜日だし、当然駐車場もがらがらを期待していた。
 しかし、上越線の駅側からアクセスした上越国際スキー場の駐車場はお昼頃には満車だった。

 上越国際スキー場にはホテルグリーンプラザ上越前から続く長峰ゲレンデの他、大沢山温泉の方から延びる大沢ゲレンデや更に奥の当間ゲレンデなどがあり互いにつながっている。
 一昨年来たときは、最初から上越国際方面を目指したので、松代から十日町市内を通らず大沢山からアクセスした。
 今回ももし大沢山から入っていれば駐車場満車などの憂き目には会わなかったと思うが。
 パパは駐車場整備のお兄さんに、車は手前の駐車場に置いてくるから、荷物と家族だけここで降ろさせてくれと交渉し、私たちはスキー道具を抱えて先に降りることになった。

 パパが車を置いてくるまでの間、私にはレナのスキーブーツをレンタルするという仕事があった。
 早速レンタルハウスと書かれた三角屋根の建物に入ってみると、なぜかそこはスキー用具のレンタルとともにアイスクリームを売っている店だった。
 ここのジェラートアイスも美味しそうだったが、今はとにかくレンタルの方。
 レナを指して、彼女に会うサイズのスキー靴を貸してほしいと伝えた。
 おじさんは奥に行って白っぽいブーツを出してくるとレナにはかせた。
 「今からだと・・・一日券じゃないよねぇ」
 「はい、半日券の予定ですが」
 おじさんの店には子供用ブーツの半日レンタルという金額設定が無いのだった。
 「今から一日分取るのはしのびないよなぁ・・・」と、おじさんは200円ほど一日料金からまけてくれた。

 そうしているうちにパパが戻ってきて、リフトに乗ることになった。
 上越国際スキー場のリフトは、まず駐車場(ここ)からホテルグリーンプラザ上越まで一本。
 これは連絡リフトのようなもので、反対側に乗っている人も結構見かけた。
 そしてホテルグリーンプラザ上越に着くと、そこからいったん斜面を滑り降りる。この斜面は短いので、反対コースのリフトもあるが、帰りは歩いて上った方が早いかも。
 そこからが本当のスキー場のコースで、四本ほどメインゲレンデに沿ってリフトが伸びている。
 前はこのうち一本がポケモンリフトになっていて、椅子の背や支柱にポケモンの幕が飾られていた。
 「ここ、来たことあるかもー」とカナ。
 そうだよ。前に来たときはスタンプラリーをやっていたけどね。

 クワッドで一気にメインゲレンデの上まで登り、とりあえず一回滑るのかと思ったら更に上へ。
 駐車場からグリーンプラザ辺りまでは雨交じりだったが、リフトで上に上るとそれは結晶のまま落ちてくるさらさらの雪となった。
 子供たちが林間コースに行きたがったので、まずは蛇行する林間コースに入ったのだが、これがほとんど平ら。全然スキーが滑らない。クロスカントリーもいいところ。
 そこで林間コースが普通の美奈ゲレンデの普通コースとクロスする箇所で合流してみた。
 ところが今度はいきなり急になる。
 安定した滑りを見せるレナと違い、姉のカナは親の目から見て少々不安定だ。
 一応中級コースなのだが、このコース嫌だと言い出した。いきなりでちょっと怖かったようだ。

 そんなこともあったので、再度林間コースの入り口が見えてきたとき、私たちはカナを林間コースに誘ったのだが、今度はカナは頑として普通のコースを滑ると言う。
 まあ自分で行くというならそれでいいかと思ったが、親が二人がかりでカナをかまったせいか、レナの方がつむじを曲げ始めた。
 もうやだ。
 なんでこう姉妹の片方が必ず不機嫌になるわけ?



 遅いお昼ごはんは中腹のサンモリッツで。
 ちなみにサンモリッツというのはスイスの街の名前で冬季オリンピックも開かれたことがある場所だ(私も通過したことがあるよ)。

 食べたのは新潟醤油ラーメンと、何故か富士宮やきそば。
 静岡県の富士宮市がやきそばで町おこししているっていう話は知っているが、何故に新潟のスキー場で富士宮やきそば?
 昨日の松之山温泉スキー場や一昨日のまつだいファミリースキー場でも感じたが、新潟のスキー場のゲレ食は個性的だ。
 新潟醤油ラーメンの方は、魚介だしと生姜を効かせているあるところが新潟中越風なんだそうだ。確かに魚っぽい味のスープだった。

 レストハウス・サンモリッツの正面は、右手に美奈ゲレンデ、左手に大別当ゲレンデの上級者向け急斜面がそびえている。
 昼食前はこの大別当のトリプルリフトを何回か使ったが、当然リフトから見下ろす上級者コースのあまりの長さと斜面の急さにおそれおののき、いつも迂回コースを滑っていた。迂回コースもなかなか景色がいいのだ。
 しかし突然レナが上級者コースを滑りたいと言い出した。
 「・・・」
 確かに君はスキーが上手い。
 小学1年生にも間違えられる小柄ちゃんで板もボーゲンだが、確かに君の滑りは安定している。
 去年まではどんな急斜面でも緩いところと同じ速度で降りてこられるだけだったが、今年は緩急自在、驚くほどのスピードやカーブの技術までいつの間にか手に入れていた。
 確かに君には中級者コースは物足りないかも。
 「でも駄目。絶対無理」
 リフトを降りて上級者コースに向かおうとしたレナをパパが慌てて止めた。
 「大丈夫だよー。あそこ滑りたいー」
 リフトから見る上級者コースは、幅が広くコブこそ少ないもののとにかく急で長い。それに真中がえぐれたパイプ型になっている。
 「大丈夫ったって・・・」
 不安そうなパパ。
 「あっ、私は絶対上級者コースには行かないからね」私は真っ先に離脱を宣言した。
 自分はあんなコースは降りられない。
 たぶんカナも。

 急いで私とカナは迂回コースを滑り降りた。
 合流地点から見上げれば、レナとパパが上級者コースを下りてくる一部始終が見られるはず。

 レナが先に降りてきた。
 パパがその後ろだ。
 別に上級者コースということをまるで意識していない風に、ゆっくりターンを描いて降りてくる。
 「レナー、どうだったー?」
 「楽しかったよ~。また行くー」
 ひー、あのえぐれた斜面を?

 レナとパパが下りてくると、ほぼ同時に降りてきた見知らぬおじさんが話しかけてきた。
 「凄いなぁ、お嬢ちゃん。あのコースの真ん中が特にえぐれていて、端の方がまだマシなんだよ。お父さん、端の方へ連れていくかと思ったらそのまま真ん中を降りるんだもんなぁ、びっくりしたよ」
 しきりとレナのスキーをほめる。
 そんなこともあってか、カナも上級者コースに行きたいと言い出した。
 いや、カナ、君はやめておいた方がいいと思うぞ。
 私はフォローできないし。
 というか、絶対私は行かないからな。

 パパはなんとかかんとかカナをなだめすかして、だもので、もう一度行きたいというレナも諦めさせて、家族みんな、つまり私でも滑れる中級者コースに戻ることにした。



 そろそろ日が暮れる。
 4時少し前にパノラマゲレンデのほうまで上がったら、もうその先のコースは営業を終了していた。
 このあとだんだん上からリフトが止まっていくので、みんな駐車場や宿泊施設のエリアに戻らないと帰るに帰れなくなる。
 見下ろすと、魚野川に沿ってできた平坦な堆積地と街並みが見える。
 そろそろ私たちも降りよう。
 ひとつまたひとつと向かいのゲレンデに明かりが灯り始めた。

 三角屋根のホテルグリーンプラザ上越前まで滑り降りて、それから駐車場までの連絡リフトに乗ろうとしたらここが混んでいる。みんなもう帰る時間だから。
 見ると、どうやらリフトを使わなくてもスキーで滑れるようになっているらしい。
 私たちは混雑したリフトを諦め、滑って駐車場まで戻ることにした。
 「これで最後だね」とカナ。
 「ゆっくり滑ろう」とレナ。
 手を広げて右に左に。
 一年後にカナは中学受験だから、もうあと一年間スキーを滑ることも、旅行に行くこともできないかもしれないから。
 「楽しかったね」
 だれともなくつぶやいた。
 「本当に楽しかったね」



 上越国際スキー場で半日がっちり滑ると、もう最後に寄る温泉は敷居の高い旅館などではなく、日帰り専門か、せめて日帰りメインでやっているようなところでないと精神的にきつい。
 前回もそれで、大沢山温泉はやめにして(大沢山でも高七城は割と日帰りを大っぴらにやっているが)アクエリアに寄ったんだった。
 今回もアクエリアは無難な線だが、最近はなかなか旅行にも行かれないことであるし、せっかくだから新規開拓・・・。
 湯沢まで行けば山の湯はパパに却下されてもいろいろ日帰り温泉がある。
 しかしそれよりここから近い場所と言うと・・・
 「お風呂、決まった?」
 「・・・石打丸山の方にあるユングパルナスっていうところにしようと思って」
 「石打丸山だと・・・夕食にこめ太郎に寄るのはやめるの?」
 こめ太郎というのは正式名称釜炊きめしやこめ太郎と言って、塩沢石打IC近くにある釜飯屋で、いつも新潟帰りの我が家の定番となっている。
 「まあユングパルナスで食事ができるかもしれないし、そのときに考えよう」
 というわけで、温泉はユングパルナスに決まった。
 途中でちょっと、行きにも寄った日本海鮮魚センター魚野の里で塩鮭など買って、長い石内トンネルを潜った。

 ユングパルナスは、ハツカ石温泉ユングパルナスと言って、一応宿泊施設もあるし姉妹館のユング別館などもあるが、基本は24時間営業の日帰り温泉だ。
 また、最近復活したと聞く群馬の地蔵温泉スパリゾートゆにーいくも同経営だという話だ。
 トンネルを出たら国道沿いにあるというが、見逃したら大変と目を皿のようにして探した。
 右手に温泉マークが見えた。
 建物のてっぺんに電光の温泉マーク。
 あっと思ったが、右折しては入れず、左折して国道の下を潜ってから入口にアクセスするようになっていた。

 ユングパルナスの入り口は、何というか、普通の日帰り温泉らしい感じじゃなかった。
 何というのかな、リゾートホテルを場末のビジネスホテルぐらい小ぢんまりとさせたような感じで、微妙なB級っぽさが漂っている。
 高台にあるので駐車場からは街の明かりがちらちらと見える。
 寒いので急いでドアの中に入ると、いきなり右手が売店で、何故か受付が階段を上った2階にあった。
 2階の受付前は、そのままお風呂上りに待ち合わせできるようなスペースになっていて、ソファやテーブルがあり絨毯が敷かれていた。

 施設はそんなに新しい感じはしない。
 ただ、24時間日帰り温泉だと思えば初日に寄った群馬の天神の湯同様、重宝するときもあるだろう。

 子供たちには最後の温泉だからしっかり洗おうと伝えておいたので、早速洗い場で二人で洗いっこしている。
 お湯の方は内湯があまりに塩素臭かったので閉口して露天風呂に出てみた。
 もう外は真っ暗なのでよく見えないが、露天風呂は岩風呂で、その他に屋根を掛けたあずまや風の薬草風呂があった。
 岩風呂の雰囲気は、ちょっとアクエリアにも似ている。
 他にも寝湯の浴槽らしいものが薬草風呂の横にあったが、この季節は使用していないようで氷水が入っていた。
 露天風呂の隅にドアがあり、これは何だろうと思ったら塩サウナの部屋だった。
 露天の岩風呂も内風呂に負けず劣らず塩素臭い。なんだかちょっと残念だ。辺りが暗いので色や泡などはよく判らない。
 しょうがなく、薬草風呂に移った。
 どうせ塩素臭いなら、薬草臭い方が効くような気がして。
 ここはジャグジーになっていて、ただでさえ強烈などくだみの臭いが空気中にも散乱している。
 手の臭いをかいで温泉の臭いかと一瞬思ったが、これはさっき髪を洗った柚子シャンプーの柚子の香りだ。

 臭いではさんざんなことを書いてしまったが、お湯自体は決して悪くないと思う。
 ぬるめだけど、とてもよく温まる。
 ぎしぎしと引っかかるような感触が強く、乾く前からべたべたとしてくる。
 足の皮膚がちりちりと引っ張られるような気がするのは塩分の多い証拠。
 だけどもうちょっと塩素臭くなければいい気分でひたれるのに。

 上がると、パパは悪くない温泉だったと言った。
 私はアクエリアの方が良かったなと思った。
 でもユングパルナスにしろアクエリアにしろ、湯沢方面の日帰り温泉に比べると入浴料が高い。
 アメニティは充実していなくてもいいから、もうちょっと安いと気軽に寄れると思う。



 そして今回も、旅の最後を締めくくるのは釜炊きめしや こめ太郎。
 休業日だといけないからと、パパはユングパルナスから電話までしてみたらしい。
 温かい席に案内されてホッとする。
 日が落ちてどんどん気温は下がってきたから。

 この店は内装も凝っていて、しかもくつろげる。もちろん米どころの誇り、ご飯も美味しいのだ。
 早速あさりの釜めしと鶏の釜めしを注文して・・・あと、日本酒の鶴齢もね。
 あったかくて嬉しいと思ったのもつかの間、今度は暑くなってきた。
 考えてみればお風呂上りなんだし、暖房効きすぎかも。
 美味しい夕食を食べてお腹いっぱい。そろそろおうちに帰らなくては。

 こめ太郎を出ると、駐車場から見えるスキー場のナイターのカクテルライト。
 「綺麗だねー」とカナ。

 「あのね、カナ、あれはスキー場の明かりなんだよ。ナイターって言って、夜に滑ることもできるの。あのオレンジ色の光の下で滑れるんだよ」
 「へぇー」
 関越道に乗るまでの道のりでもナイターの明かりが見える。
 関越道周辺は本当にスキー場が多いのだ。
 「カナ、あの光のところで滑りたい?」
 「・・・うんっ」
 思いがけない問いかけに、カナは嬉しそうに答えた。
 「受験が終わったら、来年の春、連れてきてあげるよ」とパパも。

 そしたらゲレンデの目の前のホテルに泊まって、みんなで夕ご飯の後にカクテルライトで滑ろう。
 スキー場のホテルなら、疲れたらすぐにお部屋にも帰れるし。
 来年の中学受験の本番が終わったらきっと。

 そう、きっと。
 約束だね。

 がんばろう! 中学受験まであと1年!


おしまい


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