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がんばれ新潟■雪国のお正月*2006■


最終日 2006年1月4日(水)

 電話のベルで起こされた。
 部屋の電話が鳴っている。フロントからだろうか。でも室内が薄暗いのでどこに電話があるのか判らない。
 うろうろして探し当て、ようやく受話器を取ると、それは自動音声によるモーニングコールだった。
 パパがセットしたんだな。
 当の本人の布団はもぬけの空。もう一人でさっさと早起きして朝風呂に向かったらしい。
 時間は朝の6時50分。

 やがてパパが戻ってきたので朝風呂に行くことにした。
 この宿は部屋はわずかに8室。しかも私たちの部屋は隣が浴室だ。
 タオルだけ持ってほくほくと出かける。
 脱衣所に着いて振り返るとカナがいた。
 「あれ? パパに行っておいでって言われたの?」
 「ううん」
 珍しいこと。自主的に朝風呂に来たらしい。
 金誠館の浴室は手前と奥の二つに別れていて、手前は普通の内風呂、奥はサンルームのようになっている。といっても、昨日も今日も大雪で、昼までも薄暗く光はあまりささなかったが。
 カナが奥から入ったので、つきあって最初は奥に入った。
 女湯はサンルームの方がぬるく、内側が熱い。男湯は逆だったそうだ。
 昨日と同じ淡い石膏の臭いと甘い臭い。きしきしとして少しぺとぺととする。
 最後に少し熱い方に入ってしゃきっとさせてから出た。
 カナは先に上がって部屋に戻っていた。

 荷物をまとめて、8時前、階下の大広間に朝食を取りに行く。
 夕食は無し、朝食は有りで予約している。
 朝食会場に準備されていた卓は、三組分だった。
 子供たちの食事も大人と同じ内容だった。
 アジの開き、温泉卵、サラダ、マグロのブツの乗った挽き割り納豆、固形燃料のセットされた具沢山の味噌汁、海苔、漬け物など。
 この辺のコシヒカリなのか、ご飯が美味しい。
 子供たちはちょろちょろとしか食べなかったが、パパはご飯を三杯もお代わりしていた。
 給仕をしてくれたのは、もしかしたらこの宿の大女将さんかなと思われる女性で、年末には10日間で3度も屋根の雪下ろしをせざるを得なかったと話をしてくれた。
 この辺りの国道沿いでは夜中に雪を下ろし、それをトラックで川まで捨てに行くことになる。男手がなければ業者を頼むしかなく、トラック代や道の見張りの人などなんだかんだで30万円ぐらいかかるが、それでも業者は引っ張りだこでなかなか予約が入れられないのだそうだ。
 松代では3万、十日町では15万と聞いていた雪下ろしの相場は、ここが一番高かった。
 「この冬は雪下ろしだけで何十万もかかりそう・・・。でも雪が降ればスキー場にお客さんが沢山来るんだから喜ばなくちゃね」

 朝食後、ロビーで一休みしていたら、金誠館のウィンドブレーカーを来たおじさんが車の雪かきをしているのが見えた。
 お客さんの車をみんなかいてくれるらしい。
 「立派なホテルに泊まったって、車の雪かきしてくれるところなんて無かったよな」とパパ。
 この旅館は本当に、スタッフの対応がよい。
 みんな目的意識を持って仕事をしているようだ。決して大きな宿ではないけれど、各々の部署で一流を目指したい、お客さんの立場に立ってお世話をしたいという意気込みが伝わってくる。
 ちなみに一般の日帰り入浴は12時から3時。大人700円。
 でも夕方から夜にかけては地元の人が沢山入浴に来るので、たぶん地元の人のみに許された日帰り入浴時間と特別料金が存在するのではないかと思う。

 さて、金誠館をチェックアウトして、向かったのは五十沢(いかざわ)温泉。
 金誠館の大女将さんによると、トンネルを通ればすぐで道の雪も心配ないだろうというので行ってみることにした。
 五十沢温泉のゆもとかんには、この辺りでは有名な大きな露天風呂があるという。

 行けば判るだろうという気持ちが半分、雪で看板など埋もれて判らないかもしれないという気持ちが半分。
 ナビを見ながら適当に車を進めた。
 昨日のことがあるから不用意に細い道に入りたくない。
 道の先にそれらしい看板が見えてきた。
 そこまで進めば判るだろうとは思ったが、念のため道ばたにいた地元のおばあちゃんに聞いてみた。
 「五十沢温泉のゆもとかんというところに行きたいのですが」
 「お風呂ならそこを左へ曲がれば300円のところがあるよ、大きいのが良ければその先を右へ。そっちは500円だよ」
 どうも300円は旧館の方、500円は本館の方らしい。
 大きな露天風呂があるのは本館だ。

 看板まで進んでみると、確かにゆもとかん本館は右へ曲がるようだった。
 曲がってすぐ正面。
 年季の入った大きな旅館だ。例えば湯治宿などには、高級さはなくとも年季が入っていい色の出ている宿があるが、ここはある意味いい色の出ていない年季の入り方だった。

 駐車場は融雪水が小さな噴水のように出ていて水浸しだった。
 確か遅くまで日帰りを受け付けていたと思うが、朝は何時からだったか調べてこなかったのでまずはフロントに聞きに行くことにした。
 旅館なので泊まり客が多かったり忙しい時間だと断られることもあるかもしれない。
 「あのう、今日は日帰り入浴は受け付けておられますか?」
 下足番をしていた仲居さんは、ちらりと時計を見て、「10時からだけど、もう入っていいよ」と言ってくれた。
 時間は9時50分だった。

 自分たちの靴はビニールに入れて脱衣所まで持っていくしくみだ。
 貴重品はフロントで預かってくれる。
 脱衣所の入り口には防犯のためのビデオがついていて、脱衣所内で入り口の様子を見ることができる。
 カナもレナも面白がって入り口で踊ったりしてなかなか入ろうとしなかった。

 お風呂は男女別の内風呂と、混浴の内風呂プラス露天風呂がある。
 ちょうど私たちと同時に入ってきた年輩のご夫婦の他は誰も入っていないようだ。
 外気温が低いので、混浴内湯は湯気もうもう。
 お湯は無色透明だけど、これだけ湯気がたっているとシルエットでしか見えないようだ。
 ここは脱衣所は男女別にあるし、浴室は繋がっているが入って直ぐのところは岩で男女がすぐに見えないようにしてある。洗い場もそこについている。
 お湯は熱かった。
 露天風呂へは内湯のお風呂の中を通らないと行かれないようになっている。この熱さでは子供たちが入らないかなと思うほど熱かった。
 何度か掛け湯をしてようやく足を入れた。
 たぶん寒かったから特に熱く感じるのだろう。
 子供たちもついて入ってきた。
 男女を分けている岩に湯口がひとつついていて、飲泉用に升が置いてある。コップじゃなくて升って言うのがいい。
 出ている湯は熱いが、触って触れないほどではない。
 一口飲んでみると、柔らかいゆで卵風の味と臭い。
 肌触りは六日町温泉に似てきしきしとするが、五十沢はさらに硫黄っぽい臭いがあるのが楽しい。
 内湯にもぽつりぽつりと大岩があり、端の岩には観葉植物のようなものが並べてあった。
 露天風呂に出る口には、露天は温めになっているとの表示があった。
 ドアを開けるとほっこりと雪に囲まれた窪のような大きな露天風呂があり、パパが一人でくつろいでいた。

 露天風呂は貸切状態だった。
 ちょうど中央にあまり形の良くない石の灯籠があり、そこが一段低くなっていて、お湯は湯船の外ではなく灯籠に向けて掛け流されていくようになっている。
 大露天風呂の隣には、もう一つ小露天風呂があり、それぞれに竹筒の湯口からどばどばと勢い良くお湯か出ている。
 露天風呂は適温だった。
 何時までも入っていられそうだ。
 ちょうど雪もやんでいる。
 家族四人、とびきり贅沢な貸切家族風呂みたいだった。

 あまりのんびり入っていたので、出たときは11時近かった。
 お昼を食べる場所はもう決めてあった。
 いつもの釜飯屋。
 塩沢石打IC近くの釜炊きめしや こめ太郎。

 六日町の町中は渋滞していた。
 昨日はゴーストタウンみたいだったアーケードは、人が沢山歩いていた。車も多い。ようやく渋滞を抜けて塩沢に着いた。
 あまりに雪が積もっていて、危うくこめ太郎の看板も見過ごすところだった。

 カナが「この店知ってる」と言った。
 そりゃあそうでしょう。三回目だもの。
 今日のランチメニューの釜飯は五目だというので、それとウナギの釜飯を注文した。
 カナは五目釜飯が、レナはウナギ釜飯がいたく気に入ったようで半分以上取られてしまった。でもこの店のセットにはうどんも付いてくるので大人はそれを食べればいいやと諦め顔。
 ここのお米は美味しい。
 行きに寄った日本海鮮魚センター魚野の里の併設レストランも美味しい。
 この辺のレストランは美味しいところが多い。特にご飯が。
 セットに付いてきたデザートはベニイモの羊羹だった。
 もちろん大人の口には入らなかったので、味のコメントは無し。
 こめ太郎で食事をすると、ああ、これでもう新潟の旅は終わりだ・・・と寂しくなる。

 高速に乗ると、いきなり渋滞していた。
 塩沢石打はパーキング経由の道しか除雪しておらず、強制的にパーキング入りさせられた。渋滞はこのためだった。
 そして石打トンネル内は快適に通過し・・・何故かトンネルを出たらそこでまた渋滞にはまってしまった。
 今度の渋滞は何だろう。全然車は動く様子がない。
 ・・・
 ・・・
 ・・・
 ちょっとー。
 どうしてぴくりとも動かないの?
 カーブの先まで赤いテールランプをつけた車がずらりと二列に並んで停まっているばかり。
 雪は益々激しくなり、車と車の間には白く積もり始めた。
 まさかこのまま何時間も動かなかったら、みんな雪下ろしをしないと走れなくなっちゃうよ。

 20分経過、30分経過・・・。
 みんな諦めてテールランプも消し始めた。
 相変わらず車は1センチも動く気配がない。
 事故かな。
 事故以外ないかな。
 車を降りて歩き回っている人もいる。
 携帯のアンテナは立ったり圏外になったりたったが、何とかウェブに繋いで調べた湯沢のハイウェイテレフォンにダイヤルしても、さっぱり繋がらない。さもありなん。みんな同じことを考えて電話しまくっているんだろう。
 仕方ないのでPCで日本道路公団の渋滞情報を見てみることにした。
 あっ、あった14時20分現在の規制情報だ。
 塩沢BS付近と六日町IC付近と湯沢IC付近に「事故」の文字。
 やっぱり事故か。

 一時間後・・・。
 ようやくとろとろと車が動き出した。
 そして動き始めると何とか停まることなく、のろのろではあったが湯沢に到着した。
 辺りに事故の起きた様子は無い。
 しかしあまりにも急でぴくりとも動かない渋滞だったから、やっぱり事故以外考えられない。
 勘弁してよぉ。

 何だか最後までよく判らない渋滞だったが、とにかく抜けて良かった。
 あのまま夜まで停まっていたらどうしようかと思った。
 まもなく関越トンネル。
 楽しい新潟の旅も終わり。

 トンネルを抜けたら明るい空が待っていた。
 5日前、トンネルを抜けたら雪国だったように。
 今度は街へ帰る道。
 新潟を抜けて群馬に入ったら、路肩に雪はあるものの、もうそれは越後の獰猛なまでの重そうな雪ではない。
 鈍色の雪空ではなく、薄青い空。
 そして東京では、さらに突き抜けるような快晴の空が待っているだろう。

おしまい

もし宜しかったら、この旅行で一緒に過ごした、yuko_nekoさんの書いた旅行記を併せてお読み下さい。
違う視点で書かれていてとっても面白いです(特に美味しいもののことが詳しい!)。

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