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がんばれ新潟■雪国のお正月*2006■


初日 2005年12月30日(金)


 トンネルを抜けたら雪国だった・・・とは、言うけれど、今年は12月から日本各地で記録的な大雪で、数日前に買い物に行った店では、雪のため新潟・富山・石川方面への配送はしばらく中止しておりますとの張り紙があったほどだった。
 そして今、明日を大晦日に控えた2005年の年末、雪の壁に囲まれた新潟の道を松代に向けて走っている。
 1月2月なら判るけど、12月でこんなに降るのは珍しいという。
 何度も通ったはずの塩沢石打ICを出たところで既にどこがどこだか判らないほどだった。雪の壁が高くてどの道も同じように見えてしまう。
 空は晴れている。
 雪に光が反射してきらきら光っている。
 朝10時。
 まもなく十日町だ。

 新潟の旧松代町にある貸民家みらいを初めて訪ねたのはちょうど一年前だ。
 囲炉裏のある古き懐かしい古民家が気に入って、その後も春と夏に訪れた。
 年末年始と夏休みが露天風呂うきぐものある一号館。
 春は新しくオープンした五号館だった。
 四号館というのは存在しない。
 三号館は泊まったことはないが松代の町中にあるらしい。
 今回予約したのは二号館だ。
 前に下見したときの記憶では、川の近くの高台に建っていた。
 1-2階吹き抜けになった部屋に、神棚のようなものがずらりと並んでいたのが印象的だった。
 まあ冬寒いのはどの館も同じだろうが。

 今朝は4時過ぎに起きて、4時半には出発した。
 5時に高速に乗って・・・−まだ渋滞は始まっていない。
 6時過ぎ、空が白み始めた。
 街を外れる赤城高原あたりから周囲の景色は雪を被った白一色。
 朝日が水上の山々をピンク色に染めるのを見ながら7時10分、関越トンネルを潜った。
 トンネルを出たところでチェーン規制をしているため、トンネルを抜ける数メートル前から渋滞。
 トンネルを抜けて湯沢の辺りでは間違いなく雪が降っているだろうと思っていたが、意外にも新潟も晴れていた。

 いつもの塩沢石打の日本海鮮魚センター魚野の里に着いたのが8時過ぎ。
 年末年始の特別営業時間と言うことで、魚野の里も8時には開店していた。
 空いている店内で、生イカ、塩鮭、冷凍ズワイの足など購入する。
 パパは千円か、高いなとか呟きながらイカ徳利もカゴに入れていた。

 六日町のジャスコには9時少し前に到着。
 開店前から何を行列しているのかと思ったら、年末大売り出しの特売だった。
 ここで更に食料を買い出して、あとはお風呂にも寄らず、真っ直ぐ松代へ。



 十日町から松代へ抜けるトンネルは長い。
 松代から日本海へ向かう道は峠を越えないとならないし、松之山方面へ南下しても結局そこからはまた山だから、このトンネルがない頃は冬の松代は大変だったろうなと思う。
 今年の新潟は雪また雪の日々だったから、きっと今日のこの晴れ間は貴重。
 露天風呂で青空を見るのもいいけど、スキー場へ行く方を優先。
 吹雪いていたら決して雪遊びしようなんて思わないから、今日この時間に子供たちを連れてスキー場に行くのが吉。

 子供たちがソリ遊びをしたり緩斜面でスキーをしたりするなら、決して設備の整った大きなスキー場である必要はない。
 一年前にも行った松代ファミリースキー場の規模で十分だった。
 ほとんど地元の人しか来ないようなスキー場で、狭い駐車場は八割ほど埋まっていたが、ゲレンデやリフトはがらがらだった。

 空は雪雲でモノトーンになったり、時々青空と陽がのぞいたり。
 子供たちにはスキーウェアを着せて雪靴をはかせた。
 パパの友人が、お下がりのスキー板と靴を1セット譲ってくれたので、一人分は道具があることになる。
 小学二年生のカナと、幼稚園年長のレナは、身長はずいぶん違うが足のサイズはほとんど同じなので、二人とも交替で使えるようだ。
 二人でソリ遊びをした後、まずはカナがスキーを履いてみることにした。

 去年カナはこのスキー場で板と靴を借りて滑った。
 そしてカナとは一歳違いのyuko_nekoさんちのちび姫ちゃんが一緒だったこともあり、頑張ってリフトに乗ったはいいが、結局泣きながらぼろぼろになってパパと林間コースを降りてきた。
 そんなこともあって、今回も彼女はスキー場に着いたとき、もうスキーはしないなんて言っていたのだが、実際はすぐにソリ遊びに飽きてしまい、結局意を決して板を履いてみた。
 緩斜面で少し滑ってみて、去年ほどは怖くない自分に気づいたらしい。
 パパともう一度林間コースにチャレンジすることにした。

 面白くないのはレナだ。
 自分はこんなに頑張っているのに。
 自分はこんなに怖がらないのに。
 カナと二人のものだよと言われた板と靴はカナが当然のように独占し、自分はプラスチックのパンダスキー。
 リフトだって得意げにカナがパパと乗って行ってしまった後は、自分はママとひたすら緩斜面を二の字歩きで登っては滑り降りて来るばかり。
 怖がって泣いたり文句を言ったり、登るときは自分の足じゃなくてパパに抱えられて登ったりしているカナだけが、良いところ取りをしているのは許せないと思っている。
 「大丈夫。レナはこんなに頑張り屋さんなんだから、間違いなくスキーが上手くなるよ。今ここで努力した分、後で誰より上達が早いんだから」
 「レナは上手?」とレナ。
 「もちろん」
 やがて斜面の上の方にようやくカナの姿が見えた。
 去年のように泣いてはいない。
 途中何度か怖そうに止まりながら、それでも上手に降りてきた。
 「次はレナの番だね」とワクワクとパパに飛びつくレナ。
 「・・・お昼にしよう」とパパ。
 「レナもあれ(リフト)に乗りたい。レナもカナの履いているスキーが履きたい」
 そりゃあそうだよね、でも・・・
 「沢山練習して足もよろよろになっているから、お昼を食べて一休みしてから上に行こう」

 松代ファミリースキー場のレストハウスは小さい。座席もほんのちょっとあるだけなのだが空いているので別に困らない。
 蕎麦とカレーとおにぎりを注文して一休み。

 午後からはまた板をはいて・・・。
 レナはちゃんとした板の方で少し練習させてから上へ連れていこうと思ったが、もう本人があまりにやる気まんまんなので、結局すぐにリフトに乗せることになった。
 「パパ、行くよっ」
 何故か立ち姿もさまになっている。
 流石にプラスチックのパンダスキーに比べると靴も板も重いので小回りは利かないが、とにかく気合いでカバーだ。
 彼女はパパを置いてさっさとリフトの列に並ぼうとした。
 大人に混じってちょこんとちびすけが並んでいる姿。
 わ、笑える・・・。

 パパも慌てて板をはめ、後を追った。
 大丈夫かな。本当にレナ、リフトに乗れるかな。
 リフトの係員のおじさんはちびすけレナを見て、
 「・・・・ちっちゃいから、タダ」
 と、リフト代を取らなかった。

 カナはレナの置いていったパンダスキーを履いてみたが、あまりの安定の悪さにすぐに音を上げた。
 そしてソリで遊び始めたが、それも1、2回で飽きたようだ。
 最後は雪だるまを作った。

 やがてパパとレナの姿が林間コースの出口に見えた。
 後は広い緩斜面を滑り降りればここに到着する。
 あれほどリフトに乗りたいと言っていたレナだが、果たして重い板と靴を扱いかねて泣いていたりしないだろうか。
 パパはレナの背後からがっちりと支えているようだ。
 と、レナがパパから離れた。
 そのまま一直線に直滑降。
 す、すごい。
 ばびゅーんとレナは満面の笑みを浮かべて私たちの横を通過して、そのまま・・・
 「レナ、止まれ!! 止まるんだ!!」
 ずっさーん。
 笑顔のまま彼女は仰向けに転びながら止まった。

 ああ、びっくりした。
 まさかその調子で上からずっと滑ってきたの?
 去年初めてリフトに乗って、泣きながら降りてきたカナとはえらい違いだね。

 ひいひい言いながら後からパパが降りてきた。
 「レナすごいね」
 「ああすごいんだよ」
 「もうあんなに滑れるようになったの?」
 「あれは違うんだよ。俺の板がワックス塗って無くて全然滑らなくて、それでもレナを支えてずっと降りてきたんだけど、あそこでちょっと板をいじっていたらその間にレナは一人でさっさと降りて行っちゃってさ」
 「えーっ」

 ・・・

 パワフル・レナ。
 ほとんどまともな板を履いたことがないのに。
 「パパ、もっと滑ろう、もっともっと」
 でもパパはこの一回で死に果てていた。
 今日のスキーはこれまで。

 松代ファミリースキー場を出て、ほくほく線松代駅前でちょっと買い物。
 いつもの藻塩を一袋。
 そして駅前の駐車場から貸民家の家主であるワカイ測量に電話を入れたところ、若井さんではなくてもっと若そうな男性の声が電話口に出た。
 「2号館ですか? えっ、もう駅前にいらっしゃるんですか。お迎えに行った方が宜しいでしょうか?」
 「いや、2号館の場所は判るんで、鍵が開いているならそのまま行きますけど」
 「・・・ちょうど今、2号館でこちらのものが雪かきをしているんです。伝えておきますので、適当な時間にお入り下さい」
 たぶん雪かきしているのは若井さん本人じゃないかなと、そのときそんな予感がした。

 さて、2号館の場所だが、ちょうど一年前にみらい1号館に泊まった帰りに下見がてら探したのだが、見つからなかった。
 仕方ないのでその後春に5号館に泊まった帰りに若井さんに案内してもらった。そしてそこで部屋の中など見せてもらってこの年末の予約を入れたのだ。
 一度迷って、判りにくいということを知っている。
 いや、道は一本道なのだ。松之山方面へ向かう途中の「郷土資料館」と書かれたお城の形の看板がある細い道へ入ればいい。
 ただ、ぽつりぽつりと建っている古民家の、どれがみらい2号館なのか判りにくい。増してこの壁のようにそそり立った雪道では・・・。
 一抹の不安があった。

 雪道はとてもチェーン無しでは上れないような状態だった。
 我が家のスタッドレス・タイヤはもう固くなっていて、あまり頼りにならない。
 今回初めておろした新しいチェーンは、前の金属のほど音は五月蠅くなかったが、振動がものすごく、普通の道を走っているとまるでハンディマッサージャーの上に乗っているような乗り心地だ。

 道はほとんど轍の跡もなく、ふかふかとした雪が積もっている。
 左手にあれかな?と思う民家を見つけた。
 パパが車を降りて様子を見に行ったが、民家自体が半分雪に埋もれていて近づけない。ということは、違うようだ。
 前もこの辺りでどれだか判らなくて困ったんじゃなかったっけ。
 パパはそのまま車には乗らず、歩いてカーブの先を見に行った。
 真っ白な雪景色の中に、彼の足跡だけが残っている。
 辺りはシンと静まり返っている・・・。
 やがて早足で戻ってくる姿が見えた。
 「すぐ先に2号館があった。雪かきしているのは若井さんだった。それで、屋根の雪を下ろしていたら、玄関が雪で埋まっちゃって入れなくなっちゃったって」

 「こんにちはー」
 「こんにちは、すいませんね、入れなくて」
 確かに玄関は半分ほど雪に埋まっている。
 赤い小型除雪機を操りながら、青い作業着の若井さんがにこにこと挨拶を返してきた。
 「今年の雪は酷くてね、年内二度目なんですよ、この雪下ろしは」
 通常は1、2月に降る量の雪が、もう12月後半で嫌になるほど降ったという。
 「13、14、15日だったかな、降らなくて、後は1日あまり降らない日があって、それ以外はもう毎日毎日降りっぱなしですよ。今日ようやく晴れました」
 見上げると、スキー場では淡灰色だった空は、今は水色に晴れ上がっていた。
 屋根の上の雪は1メートルぐらいあろうか。
 たっぷりと重そうに積み重なっている。春の雪と違い真新しくぴかぴかだ。
 若井さんの降ろした雪というのは玄関の軒の処だけで、二階の屋根の部分はまるまる残っている。これは明日にでも人をお願いして降ろしてもらわないと自分だけでは無理だと若井さんは言った。
 「何しろ家が五軒もあるでしょう。毎日どこかの雪下ろしをして、それで終わっちゃう」
 貸民家みらいは、1号館、2号館、3号館、4が無くて5号館と四棟有り、さらに自宅を入れて五軒だろうか。
 毎日これでは本当に大変だ。
 若井さんは除雪機で道から玄関までの雪をどかし、通路を作っていた。
 見かねたパパもスコップをふるい、玄関前の雪をかきはじめた。
 何しろそれをどうにかしないと、家の中に入れないのだから。
 子供たちはもう車を降りて雪で遊んでいる。
 しばらくたって、ようやく玄関前の雪が払われた。
 玄関は最初から細く開いている。鍵も何もかかっていないのだろう。みらいはいつもこんな感じだ。

 「さて中はどうなっているかな」と若井さんが呟いた。
 「しばらく入っていないのでね。いや、雪かきしないとチェックインできない旅館なんて無いでしょうね」
 思わず吹き出しそうになる。
 そうだよね、他に無いと思う。
 玄関を開けて中に入ると、家の中はまるで冷蔵庫の中のようだった。
 うわぁい、きんきんに冷え切っている。

 けれど乾燥しきった冬の東京辺りと違って、何日も入っていなくても埃などは溜まっていない。床も綺麗なものだ。
 早速、各部屋にある暖房機のスイッチを入れて回り、キッチンやお風呂を見に行く。
 前に若井さんに案内してもらったときに見ているが、浴室の窓の外など半分雪で埋まっていて吃驚した。
 囲炉裏の間は1号館と比較するとかなり小さい。その分熱の逃げるところが無いので温かそうだ。
 囲炉裏の間と隣接する炬燵の部屋、そして台所がくっついている。これらを開け放して繋げて、他の部屋を遮断しよう。
 後は寝室だが・・・
 炬燵部屋の隣は、二階まで吹き抜けの広い部屋になっている。棚にはずらりとお札やら神像やら。ここは寒いしちょっと怖い。
 吹き抜けの奥にもう一部屋。
 ここを寝室にすることも考えたが、なんと吹き抜けの部屋とを隔てるスライド式の戸が動かなかった。
 最初からなのかと思ったが、後で若井さんに聞くと、先日まではちゃんと動いていたという。雪の重みで動かなくなったらしい。かなりやばい。本当に屋根の雪を下ろさないと、そのうち家がつぶれてしまうかもしれない。
 二階へは吹き抜けの部屋の一角にある狭い口を通り階段を上るようになっている。
 この上がり口の天井が低く、注意書きはあるもののパパは頭をぶつけてしまった。
 階段は途中で二つに別れる。
 それぞれに寝室に使えそうな部屋があった。
 そのうちひとつを我が家が、もうひとつを明日から合流するyuko_nekoさんに使ってもらうことにしよう。

 といっても、寝室に決めた部屋も隙間だらけだ。
 一応、障子の奥は直接窓ではなく、15センチほどの隙間が開いた二重構造になっている。
 しかし打ち付けてある板は隙間だらけ。障子にも破れ目があり、すーすーと風が出入りする始末だ。
 後でガムテープを見つけて修繕しようとしたが、テープの残りが少なく、ついにはサランラップを当てて凌ぐこととなった。

 部屋のあちこちにテントウムシがいる。驚くほど大きいのもいる。
 テントウムシは木のうろや木の皮の内側に潜り込んで越冬するので、隙間だらけながら外よりは温かい古民家の中に潜り込んでくるらしい。
 畳と畳の隙間や、床板の隙間を覗き込むとごっそり隠れていたりする。
 うっかりすると踏んづけてしまうので、レナはお菓子を食べた後のプラスチックケースにテントウムシを集めた。
 生きているのも死んでいるのもいっしょくたなので、後日yuko_nekoさんにそれだけは集めるのをやめてくれと言われていた。

 湯たんぽはこの古民家の必需品。
 幸い4つだけは備え付けがあったのでとりあえず今夜は安泰。
 若井さんはyuko_nekoさん一家が到着する前にあと3つ届けてくれることを約束してくれた。

 暖房をつけっぱなしにすると、部屋は暖かくなった。
 正直、今まで寒い季節に泊まった1号館と5号館がとてつもなく寒かったのでどうなるかと思っていたのだ。
 寒がりの自分も今までの経験をふまえて、完全防備していた。
 トップスだけでなく、ボトムも二重、靴下も二重重ねだ。
 若井さんが帰った後、囲炉裏では炭をおこして鶏を焼いた。
 ご飯は松代のコシヒカリ。
 今日は温泉に入れなかったけど、みらい2号館のお風呂は快適だ。
 夏場は1号館の露天風呂が気持ちいいけど、冬はあそこは脱ぐのも辛い。
 大きな内風呂で広い窓。これで十二分。
 夜にはまた雪が降り出した。
 二階の廊下の窓から眺めると、暗闇の中、音もなく雪は降りしきる。

二日目へ続く・・・

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