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◆がんばれ新潟◆雪国に春は来たのか


二日目 2005年3月20日(日)

 明け方目覚めたときは、カーテンもない窓の外にしんしんと降る粉雪が見えた。
 ああ、今日は雪なのか。
 そう思ってまた寝てしまった。
 眠りが浅い分、うとうとと何度もしてしまう。
 日が昇って身を起こしたときには、さっきの空模様は夢だったのかと思うほどよく晴れていた。
 真っ青な空に白い雪景色が映えている。

 昨日は子供たちと一緒に早々に寝付いてしまったパパが一番で、カナが二番目だった。三番目にタク君が起きて、私は四番目・・・。
 ぽこさんとマコちゃんが遅いと思ったら、ぽこさんが心配そうにマコちゃんを連れてきた。
 昨夜は咳き込んだだけでなく吐き気ももよおし、今朝は微熱があるという。
 やっぱり民家は寒かったかな。
 それとも昨日、雪遊びにはしゃぎすぎたかな。親が止めても嬉しさを隠しきれない子供たちは、薄暗くなるまで雪の中で遊んでいたから。
 幸いマコちゃんは元気そうだった。
 パパが大人しく寝てなさいと言っても、元気になったよ、もう大丈夫だよとお願いするように言っている。遊びたくて仕方ないのだ。
 旅行前にぽこさんから、日曜日はスキーに行きたいと相談されていた。
 貸民家から一番近いスキー場は松代ファミリースキー場。年末年始に来たときも、yuko_nekoさん一家と一緒に遊びに行った。
 我が家は別に行くなら行くし、行かなくてもいいというくらい適当な計画しか立てていない。
 ぽこさんが、マコちゃんのこともあるのでそちらの一家だけでスキー場に行って下さいと提案してくれた。
 でも別にうちは、うちだけなら行かなくてもいいかな・・・なんてお気楽な返事をしているうちになんとなく時間が経ってしまった。

 さて、昨日カナとマコちゃんが配ってくれたスノーランドの整理券によると、オープンは9時半らしい。
 スノーランドというのは5号館の庭に作った雪のかまくらと滑り台のことだ(後で、スノーランドの2が発見されてから、こちらはスノーランドの1と命名された)。
 カナは9時前からスキーウェアに着替え、スノーランドオープンの準備に勤しんでいた。
 そして9時を過ぎた頃から招待した客(大人たちとタク君とレナ)に早く来い来いと5分おきに言いに来る。
 マコちゃんも、もう熱も下がったから外に行きたいと言うので、カナやレナと比べてそれほどおでこが熱くないことを確認した上でぽこさんも条件付きで外に出て良いと許可を出した。靴下は二枚重ね、時間も短時間でと。

 ところでタク君がもくもくと掘り進んでいるかまくらだが、人二人ぐらい余裕で入れる大きさになったが、そろそろ岩盤ならぬ雪の壁が固くなり、掘るのに難儀するようになっていた。
 ぽこさんはあっさりと、正面が固くて掘れないなら、左右にY字型に掘り進めば、などとお気楽に言っている。しかも「今の三倍掘って」ととんでもない指令まで。
 「そのかまくらなんだけど、今日、隣に別のかまくらが出現したんだよ」と吃驚するようなことをタク君が言い出した。
 なんでも昨日は無かったのに、今日はあらわれたんだそうだ。階段までついていて、自然のものとは思えないと言う。



 幼稚園年中のレナは、家にいるときはいつもお姉ちゃんに遊んでもらっている。2歳違いなので、自分では全て同レベルだと信じているのだ。
 しかしマコちゃんのようにカナと同い年のお友達が来ると、とたんについて行かれなくなる。カナとマコちゃんはどんどん先へ行ってしまって、いつも離れて後ろを歩いていることを思い知らされるようだ。
 だから今日もすごすごと舞い戻ってきて、スキーウェアを脱いでコタツに潜ってしまった。
 「レナもスノーランドへ遊びに行けば?」
 「やだ。レナは寒いの嫌いだから」
 そのうちに外が静かになった。
 かまくらの辺りにひとけがない。みんなどこへ行ったのだろう・・・。
 部屋の窓から2メートルの雪の壁が見える。その壁の上にこんもりと雪の丘ができていて、その頂上にタク君の姿が見えた。
 そりに乗って滑っている。
 次にカナが見えてやはりソリで滑り降りた。
 最後がマコちゃん。
 いったいどうやってあそこに登ったのだろう。

 後で見に行ったら、確かにタク君の掘っているかまくらの横にもうひとつ、融けかけたかまくらが出現していた。気温が上がって、雪で隠れていたものが姿を現したものだ。たぶんこの5号館に私たちより前に泊まった人が作ったものではないだろうか。
 タク君の作っているかまくらと違って、入り口が少し高いところにあるので、そこまで斜めの道がつけてあるのだ。そしてそこから上に上がることができた。
 崩れそうな雪の斜面をゆっくり登っていくと、上り詰めたところに想像していたよりずっと雄大な景色が広がっていた。



 なだらかな雪の丘がいくつか連なっていた。
 すごい。
 なんて広大な遊び場なんだろう。
 そこを自在に子供たちはソリで滑っていたのだ。
 タク君が最初に見つけたんだそうだ。
 二つ目のかまくらにつけられた坂を上ってみたら、雪の断面の上に出た。雪は思いの外固かったので、歩いて移動できるとふんだ。
 それでも体重の重い大人たちは時々ずぶっと膝や股まで雪に沈んだ。軽い子供たちは軽々と歩いている。
 レナもカナのソリの後ろに乗せてもらって、ちょっと吃驚するぐらい急な坂を滑り降りていった。タク君はマコちゃんを後ろに乗せて、長い滑り台にあるように二段になっている丘を一気に滑り降りた。
 駐車場代を払ってキッズゲレンデのあるスキー場に行ったってこんなに自由な遊び場は無いよ。
 見上げると、薄く雲のかかった空に太陽を囲んで丸い虹色の円ができていた。

 昨日、松代駅前のお祭りでもらったチュッパチャップスをなめた後、お昼はみんなで芝峠に行ってみることにした。
 芝峠温泉はついこの間までレストビレッジ峰という名で宿泊施設と日帰り温泉を営業していたが、去年の6月から今年の始めまでリニューアル工事を行っており、その間日帰り入浴も休止していた。
 ちょうど今月の9日から新規オープン、名称もまつだい芝峠温泉雲海と変わったばかりだ。
 元々、雲海が見える宿として売っていた温泉だ。眺望抜群の立地条件。但し露天風呂は無く、温泉も循環であまり良い評判を聞かない。それがこのたび掘削して新源泉を得た上でのリニューアルと露天風呂新設とのこと。これは期待できる。
 空は雲が増えてきて、灰色になっていた。やっぱり今日も快晴の露天風呂とはいかないらしい。

 5号館を出て、前に泊まった1号館方面へ曲がる。
 途中で道を間違えた。あまりにも積もった雪の壁が高くて、曲がり角の見通しが悪すぎるのだ。
 坂道を上り詰めて芝峠についた。駐車場の上の見晴らしの良さそうな場所に「雲海」は建っていた。
 入り口入ると、もういきなり日帰り用と宿泊用に別れている。
 ちらりと宿泊者用のロビーを覗き込むと、凄い凄い、大きなガラス一面に雪を被って連なる山々。

 お腹が空いていたのでお風呂の前に食事にすることにした。
 割に狭い休憩室は満席状態。
 この辺鄙な場所によくまあこんなに人が来るなぁ。
 なんとか座る場所を確保して、それぞれ注文した。

 ぽこさんの奥様は用事があるため不参加で、お風呂に入るとき、マコちゃんはこちらで預かってうちの娘たちと一緒に面倒を見ることになった。
 小学一年生にしては落ち着いて大人びているマコちゃんだから、何も心配は無いのだけど、それでも余所のお子さんを預かると思うと身が引き締まる。トラブルメーカーのレナにばかり気を取られてはいられない。
 脱衣所でも、脱衣籠はここ、脱いだら畳んでね、と一人一人声を掛けて、自分も慌てて脱いでいたら、隣にいた奥さんが私の肩を叩いた。
 「今、脱がない方がいいわよ」
 「えっ?」
 「ほら、あそこを見て」
 子供たちに気を取られてまるっきり周りが見えていなかった私は、指さされた方を見てびっくり。脱ぎかけたままその手がぴたりと止まってしまった。
 制服を着た芝峠の施設の人が一人と小柄な親父さんが一人、更に救急隊員が何人かいて担架を持っている。
 ???
 どうも倒れた人がいたらしい。
 施設の人は女性だからいいものの、親父さんはもとより救急隊員も全員男性だ。
 た、確かにこりゃ脱げない。で、でも、今更既に脱いじゃった服を身につけるのも何か変・・・。
 でも私の言いつけを守ってさっさと服を脱いだ子供たちも風邪を引いてしまう。先に行って良いよ、入る前には体を洗ってね、とだけ伝えてお風呂場に送り出した。

 倒れた人はすぐに回復したらしい。施設の人の介助でなんとか服を身につけた。担架は空のまま運び去られた。親父さんもさあさあと施設の人に急き立てられて脱衣所を後にした。全員去ってしまった後でようやく施設の人がおふろ場に入り、「お待たせしました」と声を掛け、浴室で上がるのを待っていた大勢の人がぞろぞろと脱衣所に移動してきた。
 ・・・ああ、びっくりした。
 温泉で倒れる人って本当にいるのね。

 ようやく浴室に移動すると、子供たちはもうほとんど洗い終えていた。
 三人、仲良く連れ立って内湯に入っていく。
 内湯のお湯は無色透明。
 入ったとたん、ああ、のっぺらぼう湯だなと思った。
 色の問題じゃなくて、温泉らしさがない。臭いもカルキ臭。入って嬉しいと思えない温泉の典型だ。
 すぐに上がって露天風呂に行くことにした。
 レナも外のお風呂に行きたいと言ったし。

 外に出てすぐ右手に寝湯があった。ジャグジーのボタンが付いていて、止まったら手動でオンするようになっている。
 その先に露天風呂。
 子供たちは寝湯の方に行ったので、先に一人で露天風呂に入りに行った。

 おお、絶景。
 こりゃいいや。
 湯船から遮ることなく、南方にそびえる二千メートル級の山々が見渡せる。
 ひときわ白いのはランドマーク、苗場山。谷川岳もよく見える。
 灰色の空の下、白い山の雪景色と黒々とした木立。
 昔話の民話を版画にした絵本のように、どこか懐かしく厳しい風景だった。

 露天風呂のお湯は緑色だった。
 今回リニューアルオープンにあたって、今までの芝峠源泉に加えて新規掘削された芝峠2号源泉がこちらに引かれているはずだ。
 元々ある20度台の強塩泉源泉と比較して、2号源泉は少し成分は薄いはずだが40数度と温度には恵まれている。
 いい感じの油臭もする。松之山ほど癖がないが、ちょっと焦げた感じの臭いだ。
 きしつく感じはあまりなく、ほんのわずかすべすべする。
 このあたりに湧く温泉は、油の臭いが強く塩分の濃いお湯が多い。

 子供たちも露天風呂へ移ってきた。
 「すごぉい」
 「絵みたい」
 絵みたいっていう表現が面白い。
 転落防止にガラスが張ってある。これが展望を遮る衝立ではなくガラスというのが嬉しい。
 子供たち三人並んで外の景色を見ている。
 これはまさに天上の露天風呂。

 上がるちょっと前に子供たちがサウナに興味を示したので入ってみることにした。サウナにはテレビがついている。その画面を見てびっくり・・・
 えっ、地震?
 福岡と佐賀で震度6弱?
 実は貸民家5号館にはテレビが無い。
 ぽこさんがテレビ画面を使ってできるボーリングゲームを持ってきてくれたので、うちの車に積んであるテレビデオを民家に運び込んだのだが、ビデオは見られてもアンテナがないのでテレビは見られない。
 だから旅行をスタートしてから、すっかり浦島太郎だ。
 知らなかった。
 そんな大地震が来ていたなんて・・・。

 湯上がりにアイス。
 「レナはどれがいい?」とパパ。
 「えーと、ママはねぇ、プリン味のアイス」
 「ママには聞いてない」
 「ケチ」



 真っ直ぐ貸民家に帰るはずだったが、途中で気を変えた。
 昨日、松代駅前のお祭りでもらったポップコーンが無くなり、ヘリウム風船の元気もなくなったため、新しいものをもらいに今日も駅へ行くとレナと約束していたのだ。
 松代駅前まつりは昨日と今日の二日間催される。ただ、時間は既に午後3時45分を回っている。
 果たしてまだお祭りはやっているだろうか・・・。

 パパはもうお祭りは終わっちゃっただろうから、駅に行くのはやめようと言った。
 私は駅前に行って自分の目でお祭りが終わってしまったことを確認しないとレナは納得しないだろうと言った。
 信号が青になって車は駅前の駐車場へ滑り込む。
 さあ、お祭りは・・・。

 昨日賑わっていた駅前は、既に撤収の準備にかかっていた。
 出店はみんな畳まれ、折り畳み式の椅子やテーブルが折り重なっている。
 ポップコーンや風船を配っていた場所ももぬけの空だ。
 やっぱり遅かったか・・・。
 昨日、レナやマコちゃんが寝ているうち、カナ一人で入った巨大トランポリンのスーパーマリオだけがそのままになっている。これもやがて空気が抜かれるのだろう。
 カナが「これ、昨日一人でやったよ」
 レナ、「えー、いいなー。レナもやりたいっ、レナもっ」
 係りのおばさんがそれを聞いて、「まだ空気を抜いていないから入っていいよ、今のうちだよ」と言ってくれた。
 「ほんと?!」
 レナの顔がぱっと明るくなった。

 スーパーマリオのお腹の所に入り口がある。
 カナとレナとタク君とマコちゃんが入った。地元の子供たちも何人か入った。
 空気で膨らまし、密閉されたトランポリンの壁には、潜水艦のような丸い窓がいくつかついていて、そこからのぞくとはしゃぎながら跳ね回っている子供たちが見えた。
 ポップコーンも風船も終わっちゃったけど、駅前に来て良かった。
 ただ、あまりにも猛烈にはしゃいでいるので、またマコちゃんが熱を出すんじゃないかとそれだけが心配だった。

 そこへ携帯メールが入った。
 見てみると、年末年始に一緒に貸民家みらい1号館に泊まったyuko_nekoさんからだった。
 こちらからも連絡しようと思っていたところだったので、携帯に電話してみる。
 ぽこさんが、今回の旅行にもしかしたらyukoさんたちも来られるかもしれないと教えてくれたが、1号館と違って5号館は狭かった。それに茅葺きは寒いので、寝られる部屋は限られている(というか、正確には一部屋しかない)。
 それでも来てくれたら、そりゃあもちろんとても嬉しい。
 でも残念ながらお気に入りの栃尾又温泉宝巌堂に泊まる予定で、今夜は上げ膳据え膳なのだそうだ。また今度、一緒に旅行に行って遊ぼうね。

 貸民家に戻って午後5時。
 家主の若井さんが姿を見せた。
 子供たちはまた庭で雪遊び。パパは一眠りすると行って隣室に消えて30分、いい気持ちで熟睡していたところを起こされる羽目になった。
 いや、いいんじゃない?
 ここで起きなかったら明日の朝まで寝ちゃうかもしれないから。
 若井さんが仰るには、なんと今日、1号館に泊まっていらっしゃるお客様は、私の前回の旅行記を見て来て下さったというのだ。
 これは驚き。
 こんなことが現実にあるのね。
 いやぁ、滅多なことは書けないな(笑)。

 若井さんご自身、この5号館が完成したときに一度泊まってみたのだそうだ。
 「やっぱり寒いですね。天井を作らないと駄目かな」
 何しろヒーターで部屋を温めても、温まった暖気はみんな吹き抜けの天井から逃げてしまうのだ。
 でも天井に渡されている黒々とした太い梁は活かしたいのだそうだ。
 本当なら下から見上げる茅葺きも、今のまま活かしたいのだろう。冬だけ天井を張って、夏はとっぱらう・・・なんて簡単にはいかないのだろうな。

 前回は手作り納豆を頂いたが、今回は手作りマーマレードを頂いた。
 感謝ついでにおずおずともう一つお願いしてみる。
 「あのう・・・5号館には湯たんぽは無いんですね?」
 年末年始に1号館で過ごしたとき、湯たんぽにどれほど救われたか・・・。
 「1号館には沢山あるんですけどね」
 はい、知ってます。
 「運んできましょうか」
 ああ、もう、ぜひぜひお願いします。
 湯たんぽだけが心の支えなんです。

 若井さんはそれから1号館に引き返して、人数分の湯たんぽを5号館に運んできて下さった。



 夕食はうどんを作ることに決まっていた。
 作るといっても市販の麺を茹でるのではない。なんと小麦粉からこねてこねて本当の手作りうどんに挑戦するのだ。
 この企画はぽこさんが考えてくれた。

 まず準備するものは、小麦粉、水、丈夫なビニール袋(スーパーのがさがさ袋など)、綿棒、包丁とまな板・・・だ。
 タク君とまこちゃんはお父さんのぽこさんと作ったことがある。我が家は初めてだ。

 まず袋に230gの小麦粉と100ccの水を入れ、空気を入れて袋の口を締める。
 それから袋を振り振りしてよく混ぜる。
 子供たちの人数分の袋を用意したが、やる順番でちょっともめる。手慣れたお兄ちゃんのタク君が一番として、マコちゃんは自分も知っていると「まあちゃんが二番!!」としきりに言うので可笑しくなってしまった。だってマコちゃんは今まですごく大人びて見えていたのに、そのときはああ、カナと同い年なんだなぁと実感できたんだもの。
 それに自分のことを「私」じゃなくて、「まあちゃん」と呼んでいるのが可愛らしかった。
 うちでも何故か長女のカナは自分のことを「私」と呼ぶのに、次女のレナは自分のことを「レナ」と呼ぶ。親は子供たちを同じように名前で呼んでいるのに考えてみれば不思議だ。

 袋の小麦粉が水や空気と混じってぽろぽろになってきたら、出して丸め、今度は袋の上から足で踏んで潰していく。
 かかとでぎゅっと何回か踏んで、平たくなったら出して四つに畳み、それをまた踏んで潰す。それを全部で十回ほど行う。
 カナもレナも体重が軽いのでなかなかつぶれない。手伝ってやろうとしても、レナは「自分でやる」と言ってなかなか親に踏ませない。自分でという気持ちは素晴らしいが、一人だけ遅れを取っても困るんだけど。

 踏み終わったら60度のお湯に入れて少し発酵させる。

 その間に麺を伸ばす準備だ。
 麺棒が三本登場した。三人娘はそれを手に遊びまくり。こらこら、せっかくぽこさんが綺麗に洗ってきたのに。

 発酵の終わった袋がそれぞれに配られて、もう一度さっきの行程を繰り返す。
 踏んで踏んで、畳んで踏んで。
 この辺で既に子供たちは半分飽きている。
 でもやり始めたことだ、最後までがんばろう。普段何気なく食べているうどんだけど、自分たちで手作りするとなるとこんなに大変だとは。

 最後に踏み終えたうどんの素を、打ち粉の上に出して、麺棒で伸ばしていく。
 薄く均一に。なかなか大変。
 みんな滅茶苦茶真剣そのもの。

 伸ばし終えて畳んだ麺を切るのはぽこさんとタク君の役目。それでもどうしてもと言うので、マコちゃんやレナも少し包丁を持たせてもらった。
 凄いねぇ、本当に本当のうどんができたよ。みんなで力を合わせて作ったうどんだよ。

 ぽこさんは大鍋にお湯を沸かし、釜揚げうどんにしてくれた。
 レナがぐずぐず言うので仕方なく食べさせてやった。
 うう、早く食べてよ。
 ママだって早く自分のうどんが食べたいんだからさ。
 すっごく美味しそうなんだものー。
 うどんというより中には、ほうとうかきしめんかという幅の広いのがあったり、おいおい、すいとんかい!という不揃いで厚みのあるのがあったりするが、それもご愛敬というものだろう。



 食後は子供たちをお風呂に入れて、布団に追い立てた。
 昨夜は狭い中ぎっしり七人で寝ていても、ストーブが切れると三度とかいうとんでもない室温だったが、1日人が中に入ると、それだけで家は温まる。
 真冬のオフィスだって、月曜日の朝と他の日ではまるで体感温度が違ったもの。
 それに今夜は秘密兵器、湯たんぽがある。
 これで快適な夜が過ごせるだろう。
 子供たちを寝かしつけに寝室(と、呼ぶべきか?)に行ったら、「何かお話しして」と捕まってしまった。
 お話と言われてもな・・・手持ちの話は無いぞ。
 仕方ない・・・
 「むかぁし、むかし、あるところに兄弟がおりました・・・」
 とかなんとか、古事記にある海幸彦山幸彦の神話をうろおぼえながらアレンジして話し始めた。何しろ記憶がいい加減だったから、どっちが兄で弟だったかもよく覚えていない。やたらとディテールが細かい割にはストーリーは大ざっぱだ(しかも部分的に浦島太郎が混じってるときたもんだ)。
 「・・・というわけで、お兄ちゃんは無事、弟に借りた釣り針を取り戻すことができました。めでたしめでたし」
 ラストがあまりに唐突だったので、レナとマコちゃんは納得しない。
 もっと話してもっと話してと騒がしい。
 あれ、娘たちは三人居たはず・・・と思って布団を覗き込めば、カナ一人既に寝息を立てていた。

 ちびすけたちがようやく寝付いた後、タク君と大人たちでこっそりと残ったカニを焼いて食べた。
 炭で軽くあぶって食べると、昨日の茹でカニよりずっと美味しい。正直、某カニ道楽なんかで高いお金を出して食べるより何倍も美味しいよ。年末の道の駅新井で買ったカニは冷凍だったせいか塩が利きすぎていた。やっぱりこのくらいが旨いよ。

 うちには男の子が居ないので、パパはタク君といるのが興味深く楽しいらしい。
 囲炉裏で火の番をしながら、何やらいろいろと話をしていた。
 静かな古民家の宵だ。

三日目へ続く・・・

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