◆◇九州温泉巡り旅行記◇◆
阿蘇-長湯温泉-黒川温泉

15.地域の交流と癒しの共同浴場

　個人宅のようなその雰囲気は脱衣所や浴室にも何となく漂っていて、もちろん脱衣所の広さや浴槽の立派さなど十分共同浴場のものなんだけど、どこかほのぼのとしている。

　浴槽は大小二つ。
　手すりが入るところだけでなく湯面近くにも平行に付けてある。
　湯口は木で、升酒の升みたいな感じ。

　湯口でほんのり硫黄の柔らかいにおい。
　とろみがあってぬるめのお湯。特に強い主張があるわけではないけれど、でも肌にも心にも沁み渡るようないい湯。
　手触りは嬉しくなるくらいすべすべとする。
　無色透明ではなくわずかに濁りがあり、白い小さな湯の花も沢山舞っていた。

　ところで帰りもまた迷ってしまった。
　どうもこの出会いの湯、出会いと言うより迷いの湯なんだ。
　来た道とは違う方向の方が行き先に近いんじゃないかと走り出したら、結局よくわからなくなってまた同じ場所に出てしまった。
　なんか一周してしまったみたい。なんでこんなにわかりにくい。

　アクセスには苦労したが、この宮城温泉出会いの湯、高級感があるわけじゃないけど清掃やメンテナンスも行き届いていて、小さな集落で大切に使われてきた浴場という感じだった。
　明らかに営利目的ではなく、地域の集会と癒しの場。
　よそ者だけどそこにちょっとだけおじゃまさせてもらった。