最後は
ひしや寅蔵の帳場に外湯の鍵を返す仕事が残っている。
別段呼びだてしなくてもカウンターのポストのような場所に鍵を入れておいてくれればそれでいいからと女将さんは言っていたが、いつもひしや寅蔵の隣のおりがみ乃家にいるとも言っていたのでそちらでご挨拶してから帰ろうと先に寄った。
昨日は鍵がかかっていたおりがみ乃家も今日は開いている。
が、しかし、女将さんの姿は無かった。
和紙で折られたカラフルなおりがみが所狭しと展示してある。古風なものばかりではなく、リアルな昆虫やリアルな動物も多い。
席を外しているのかなぁと出ようとしたら、おりがみ乃家をのぞきこんでいる女性と目が合った。
見ているとその人はぐるりとおりがみ乃家を一周して、今度はひしや寅蔵を覗き込んだりしている。もしかして昨日の私たちと同じで今夜のお客さんかな?
おりがみ之家を出ると、どこからともなく「にゃー」と言う呑気な声が聞こえてきた。
猫だ、どこどこ?ときょろきょろすると、パパがそこそこと
渋大湯の前を指差す。
白黒のにゃんこが後ろ足で耳の後ろをかいていた。
共同浴場前で猫を見ると思わず頬がほころんでしまう。
ひしや寅蔵も戸は開いていたがやはりひと気は無かった。
鍵を返却して、誰もいない帳場にお辞儀して、そして渋温泉を後にする。
草津温泉と渋温泉を巡る二泊の旅、たぁくさん外湯に入って大満足・・・またぜひ来たい、草津と渋と・・・
と、旅行記はここで終わるはずだったのだが、予想に反してもうちょっと続くことになった。
だもので、〆はお預け。まだもう少々お付き合いを。