キッザニア X キッザニア 匠フェアで和紙職人

*05*



和紙工房を終えた二人は、とりあえず目の前のビューティーサロンで待ち時間を聞いてみた。

しかし平日だというのに店員は1時間待ちだと言われたらしい。

どこに行ったらいいのと聞くカナに、最初は自分で決めなさいと言っていた私だが、どうせなら未体験のガソリンスタンドに行ってみたらどうかとひとつだけアドバイスしてみた。

現在キッザニアの常設パビリオンで、カナが未体験なのはガソリンスタンドのみ、レナが未体験なのはステージマジシャンのみとなっている。
あっ、身長制限で引っかかるビルメンテナンス・ビルクライミングを除くけど。

ビルメンテナンスとビルクライミングと言えば、以前は前半後半に分けて片方しか募集していなかったのが、先月からビルメンテナンスだけ片方、ビルクライミングは通して募集と変わり、さらに今回確認したところによると、両方最初から最後まで通して募集するようになった。

安全のため、下にクッションになるものを敷いたということなので、スーパーバイザーの人数さえ確保できれば基本的に両立できるようになったのかもしれない。

実は今日もレナのステージマジックを考えていたのだが、あいにくと和紙工房に携わっている間に募集は終わってしまっていた。



ガソリンスタンドの待ち時間は、ビューティーサロンよりさらに長い1時間10分だった。
ここで並ぶのはアホらしい。
また別の機会を見てやってこよう。

二人はすっかり行く当てがなくなってしまった。

「・・・そうだ。デパートで買い物しよう!」とカナ。
私はこのところ毎回デパートで自分の一回の収入以上のショッピングをしているカナを止めたくなったが、黙ってついていった。



ちょうどそのとき、デパート店員の仕事をしていた女の子二人が、ユニフォームの上着をぬぎはじめた。

もしかしてデパートの仕事が終わるところ?
慌てて周りを見回したが、いつもデパートの次の回に並んでいるウィンドー前は誰もいないようだ。
デパート内にもう待機しているのかと思って中も見回したが、ビジネススクールの上着を着た男の子が沢山いるだけだった。

「カナ、レナ、もしかしたらデパートの次の回にすぐに入れるかも。聞いてご覧よ」

本当〜? という不信感を露わにした顔つきで、カナはスーパーバイザーに聞いた。
スーパーバイザーは二人を見て何か質問している。
「二人でですか?」と言っているのが聞こえた。



「じゃあいいです」とカナが断ったのが見えた。

え〜〜っ。何で断るの?

「だって30分待ちだって」

うっそー。前の回が終わったばかりだよ。どうして30分??

・・・するといつの間にか既にデパートのユニフォームを着た男の子が一人、スーパーバイザーと向き合って説明を聞いていた。

・・・判った。
既に一人並んでいたのだ。
でも珍しく男の子で、しかもデパートのユニフォームがビジネススクールのユニフォームと酷似しているので、さっきのビジネススクールの調査団に混じって気がつかなかったのだ。

そして、男の子一人ということは、もう一人空きがあるのだが、カナは二人一緒にできないならと断ったのだ。

・・・何でそこで断る。
一人でやりゃいいじゃん!!

「だってデパートやりたくないもん」
「レナはデパート好きだからやりたかったんじゃないの?」
「・・・」
断ってしまったものはしかたない。
だから本当は二人一緒に回らせたくないのだ。
二人枠がいつも残っているとは限らないし、片方がやりたくても変な遠慮があって決められないことも多いから。
それにデパートは一人なら待ち時間無しで入れたし、一人しか体験しないまま始まってしまうのは誰にとっても勿体ない。



「じゃ、もう早く決めてよ〜」
デパートを絶対やれなんて言ってないから、ただいつまでもうろうろしていてほしくないだけ。

私の顔がムッとしているのを見て、カナもムッとしながらデパートから出てきた。
「買い物、いいの?」
「だって早くしろって言ったじゃん」
ああ〜なんか悪い方へ悪い方へ歯車が回っている感じ。

「じゃ、銀行へ行ってキッゾを貯金してくる」とカナ。
前回レナの口座に自分よりずっと沢山入っているのを見て、彼女は焦りを感じているのだ。

「銀行も今はやめた方がいいよ。凄く並んでいる」
銀行こそは混んでいるときと空いているときの差が激しいのだから、今並ぶのは避けたいと、銀行を覗き込んだ私は言った。

益々カナの表情は険しくなる。

中央広場を通りかかったレナは、そうだ、ペットボトルの蓋を持ってきたんだったと回収箱に入れた。
蓋を集めると発展途上国のワクチン代になる。

しかし、今ここで入れるか?

一刻も早く次の仕事を探した方がいいんじゃないか?

ペットボトルの蓋は閉園間際だって間に合うよ〜。
もう家族三人気持ちがバラバラである。



2階へ行く、とカナは決断した。

2階は病院を除いて空いているパビリオンが多く、なかなか良い決断だと思う。



階段を昇ってカナはライヴステージを見つけた。

「前やったのと違う曲だといいんだけど・・・」

残念ながら今回もSMILYだった。
この曲はキッザニアができてからずっと変わらない。
ライヴステージは2曲を交互に行っていて、以前はこの大塚愛のSMILYと倖田來未のButterflyだったが、倖田來未の羊水発言事件以降、Butterflyの変わりに大塚愛のChu-lipが入っている。

でも何故かタイミング的に二人ともSMILYばかり当たっている。Butterflyはついにできなかったし、Chu-lipはまだやったことがない。

レナは並びたくなさそうだったが、カナは並ぶと言い、妹もしぶしぶ従った。

デパートはやりたくないと断り、ライヴステージは強行する。
レナにとっては散々な結果だ。

だから別々にやりゃいいのに。

ライヴステージのアーティストは前の回が終わったらすぐに始まるシステムではなく時間割制で、今が5時58分だからあと10分と少し。



ライヴステージに並ぶときもちょっとあった。

カナが「やりたいです」とスーパーバイザーに話しかけたのに、スーパーバイザーは後から来た小学校低学年ぐらいの女の子たちが「やります」と言ったのを先にした。

「私が先だったよ。先にやりますって言ったはずだよ」とカナ。

・・・確かにあなたが先に言ったけど、スーパーバイザーに聞こえていなかったんじゃない?

私は横で見ていたが、スーパーバイザーが無視したとかそういうのではなく、カナの声が小さかったので聞こえなかったんじゃないかと思った。

聞こえないところへ正面に大きな声で話しかける女の子のグループが来たので益々気づかなかったのだろう。

「アピールすることは大事だよ。相手に気づいてもらえなかったらしょうがないんだから」と私。

結局後から来た女の子たちを入れてもまだ定員には達しなかったので、私もそれ以上は言わなかったが、もし定員に入るか入れないかの瀬戸際だったら、もっとややこしいことになっていたに違いない。

ライヴステージのパビリオンは直接見られないが、ライヴステージ前のモニターと、中央広場・デパート前の2階のモニターで見ることができる。
中央広場2階のモニター左にある窓からは、たまに子供たちが見えることもある。




どこも混んでいるように見えて、人気のキャビンアテンダントがこのときがらがらだ。
ただ、キャビンアテンダントは先にお客さん役をやってからお仕事だから、全部終わるまでは長く掛かる。

ついでに隣のパイロットも。それにバスガイドも誰もいなかったようで、スーパーバイザーがガイドをしてバスを走らせていた。
さっきあんなに探しても、どこも空いていないように見えたのに、キッザニアでは全てはタイミング。


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