三日目 2003年11月2日(日) |
旅先では早起きのパパは今朝も一人で起きだして散歩に行ってきたらしい。
快晴の朝だった。雲は一つもなく、金色の山の形がそのまま湖に映り込んでいる。
カナもレナもこの湖の見える宿が大好き。広い窓からの眺めはどの季節でも美しい。
朝ご飯の後、今日の予定は何か考えている?と聞かれた。
妙義は明日、寄るつもりだし、昨日赤城方面にも行ってしまった。もうひとつ紅葉の名所として考えていたのは吾妻渓谷だ。あそこも確か10月後半から、本によっては11月上旬まで楽しめると書いてあったような。駐車場が少ないのがネック。
あとは…。
「草津熱帯圏」
かなりの頻度で群馬に通っているので、榛名山近隣の子連れ遊び場スポットはかなり遊びつくした感がある。熱帯圏というからここは、これまで温室があるくらいだろうと思っていたが、どうも動物もいるらしい。動物や鳥を見に行くなら子供たちも喜ぶかもしれない。どうかな?
これで今日の行動は決まり。
とりあえず吾妻渓谷に行ってみて、駐車場がいっぱいだったらそのまま草津へ行く。
榛名湖畔を行けば、黄色く染まった広葉樹が半分ほど葉を落としている。
昨夜
レークサイドゆうすげのお風呂でパパが地元の方に聞いた話。榛名山の紅葉は黄色や茶色の葉がほとんどなので赤が足りない。そこで町をあげてせっせとカエデを植樹しているとか。あと数年したら榛名湖は紅葉の名所になるよ、と。
どうりで道の端には不自然に小さい、人の背丈ほどのカエデが等間隔に植わっている。人工的な紅葉なのね。
昨日は渋川から伊香保を経由して榛名山を登ったが、今日は中之条方面へ抜ける県道28号線を降りる。榛名山の紅葉はこちらの方が綺麗だ。
九十九折の道を降りていくと、正面に印象的な岩山が聳えていた。岩櫃山だ。昨日の吹割の滝といい、群馬には日本離れした景観が多い。妙義山も山水画の世界のようだし、榛名山だって粘土を積み上げたような不思議な山容だ。
岩櫃山も紅葉していて赤や黄色のまだら模様だ。
「今回の旅行は天候に恵まれているよね」と、言うと、
「昼食には恵まれないけどな」とパパ。
そういえば昨日も一昨日もまともな昼食を食べていない。
川中温泉方面への曲がり角より少し手前くらいから、渋滞が始まった。この車、みんなどこへ行くのだろう。吾妻渓谷か、草津か。今日は連休のなか日だから、有名どころはどこも混むのだろうな。
残念ながら吾妻渓谷の紅葉も既に終わっていた。
渋滞は吾妻渓谷渋滞だった。もともと道が細いところへ、無理に満車の駐車場に入ろうとしたり、路肩に車を停めたりするので渋滞するのだ。
葉が6割がた落ちた木々を見て、この状態で無理に駐車して見に行くほどではないなと判断した。車の中からもちらりと渓谷の深緑の淵が見えた。いつか、水底に沈む前にここの紅葉も見てみたい。
川原湯温泉の入り口も沢山の車が駐車していた。みんな吾妻渓谷観光なのだろう。遊歩道をひとしきり歩いて、それから川原湯温泉に入って帰るのかな。今日は川原湯も大忙しだろう。
ちょうど川原湯駅には草津口行きの特急が停まっていた。大人だけなら、鉄道で来るのもきっと楽しいね。
国道沿いに岩肌が露出した川原湯岩脈のあたりで吾妻川の河川敷を見ると何か掘り返している。パパが「発掘」とかって書いてあったぞと言う。リサーチとも書かれている。いったい何を掘っているのだろう。ここもまもなくダムの底に沈むんじゃないのかな。
長野原草津口の手前に左に入る細い道がある。薬師温泉の看板が出ているので判りやすい。こちらへ行くと、
鳩ノ湯温泉、薬師温泉、
温川温泉の浅間隠温泉郷。川原湯・吾妻渓谷の道が混んでいたので、パパは帰りはこちらを通るかな、と言う。
…これから草津に向かって、よもや天下の草津温泉に入れないということはないだろうけど(でも前科(
榛名湖日記その3 三日目参照)があるから心配だ)、万が一入れなかったら浅間隠を保険にしておこう。
六合村・尻焼温泉方面へのT字路を過ぎる。
今年のGWに、尻焼温泉の川の露天風呂に入りに行って、雪解け水による増水に泣かされた。必ず次は入ってやるぞと思ったし、今頃は水量も減っていい感じになっていそうだが、旅行が始まってからカナが少し咳をしているのが心配で今回は行かないことにした。寒い季節の野湯は、入っているときはよくても湯上りが問題。
次が草津へ曲がる道。
既に吾妻渓谷で紅葉が終盤だったのでもう草津の錦は期待できない。
この辺りにも人の背丈ほどの小柄なカエデが…もしかして秘密の人工紅葉植林プロジェクトは、榛名山に限らず群馬全土で実施されていたりして。東北に負けるな、栃木に負けるな、紅葉の名所といえば群馬と言わせてやるという心意気が見えるかも。
草津の町に入ると、やっぱり今日も混んでいる。
真っ直ぐ草津熱帯圏に向かう。
入り口からして鄙びているというか、寂れているというか、そんな感じ。けれど連休だからぱらぱら人が入っていく。
ここでも「ぐんま観光イベント特集」の無料冊子が活躍。割引がある。
入り口入るといきなりタガメの水槽…渋すぎる。
得体の知れない骨格標本やら剥製。竹細工の昆虫…支離滅裂な展示品。恐竜の卵の化石なんかもある。
次のコーナーは温室。ここは草津温泉の熱を利用して、熱帯植物や動物を育てているのだ。通路に秋篠宮さまご一家が見学されたときの写真など貼ってあるが、本当にこんな渋い施設にいらしたのかしら。
温室を出ると、サル山とウサギ小屋があった。サル山は結構大きい。うさぎは囲いに入れるようになっている。ロップイヤーというたれ耳のうさぎが三匹隅の方で丸くなっていた。カナもレナもうさぎが大好き。早速入って追い回す。
以前もどこかの観光牧場で、ふれあいコーナーのうさぎを追い回したことがあった。うさぎはすばしこいので、後ろから追いかけてもまずつかまらない。あのときの経験からまず隅の方に追い込むといいと判っていた。それでもまだつかまらない。うさぎは小さいので、捕まえようとすると屈むことになり、その一瞬の隙にどうしても逃げられてしまうのだ。
これは一人では無理だ。
そこで複数で追ってみることにした。一人が追って、もう一人が逃げてきたうさぎを正面から捕まえるのだ。これはばっちり。今度は捕まえたよ。二人でうさぎを抱っこしてポーズ。でもうさぎの方は迷惑そう。
カナもレナもうさぎと遊ぶのが面白くて、囲いからさっぱり出てこない。さっきのうさぎは写真を撮ったらすぐに逃がしてやったため、二人は「ママ、もう一度捕まえて!!」と騒がしい。
無理だよ、そんな何回も。それにもう疲れたってば。
「レナ、うさぎ捕まえたよ」
え?
振り返ると本当にレナが大きなうさぎを抱えて立っていた。
びっくり。
とろいちびすけ三歳児のあなたが、どうやってうさぎを捕まえたの??
うさぎもたまには油断するのかもしれない。
最後に一番大きなドーム。中は動物や鳥類が飼われている。
ワニ、フラミンゴ、亀、蛇、ワラビー、イグアナ、ミニブタ、マーモセット、ミーアキャット…ここも脈絡なくいろいろな動物がいる。爬虫類が多い。
亀も大小さまざまなタイプがいて、ちょうど係員が餌をやるところだった。ケージの蓋をあけて皿にのせた餌を起き、亀をひょいとつかんで皿の上に乗せてやる。食べるかな…と子供たちが覗き込んだけど、皿に乗せられた亀はなされるがままで、動く様子がない。
「食べないかもしれないねぇ、もうじき冬眠だから」と係員。
こんなに暖かい施設でも亀って冬眠するんだ。
統一感の無い施設だったけど、思ったより面白かったよ。
実はこの草津熱帯圏にも入浴施設がある。草津おふろやさんという名前で、入園者には割り引きもあるらしい。詳細がわからなかったので聞いてみようかと思ったが、時間も11時過ぎ、パパはここで昼食をとらないと、今日もくいっぱぐれてしまうと言う。確かに。もっともだ。
それにしても暖かい日だ。車の中なんて夏のように暑い。草津の入り口にあった電光掲示板は外気温を21度と指し示していた。11月の草津で半袖の陽気なんて。
車に戻って走り出したが、町中は混んでいる。結局再び草津熱帯圏の前まで戻ってきた。熱帯圏の隣に蕎麦屋があったので、ここに入ることにした。
店の名前はあぶらや。
カツ丼と蕎麦のセットと、とろろ蕎麦を頼んだ。すごいボリューム。蕎麦湯も出てきたよ。なかなか美味しかった。カツ丼はほとんど子供たちのお腹に消えてしまった。
さあお腹がいっぱいになったから、今度こそ温泉だ!!…と私は思っていた。
だけどそう思っていたのは実は私だけだったということに、後で思い知らされた。
「このあと、何か考えている?」
エンジンの音にかき消されて、私の問いはパパに聞こえていなかったらしい。何度目かにやっと車を停めて後部座席で子供たちのお守をしていた私を振り返ってくれたが、そのとき既に車は草津を抜けていた。
「何も考えてないけど…」
「…草津でどこか入って帰らないの?」
「そんなこと、一度も言ってなかったじゃない」
…だって草津に行ったら草津温泉でしょー(涙)、言わなくったって草津温泉でしょー。ねえねえ、これを読んでいるあなた?そう思わない?これって私だけの思い込み?
今回こそは草津で無料の共同浴場のどこかに入ろうと思っていた。駐車場や浴場が連休で混雑していて、それが難しそうだったら、草津熱帯園のおふろやさんなら空いていて入りやすいだろうと思っていた。いろいろ考えていたのに、ぴしぴしとひびが入りがらがらと音を立てて全部崩れてしまった。
…
…
…
仕方がない。保険を使おう。
「浅間隠に入って帰ろう」
「浅間隠ってどこ?」
今朝、帰りはこっちの道を使おうと言っていたあの先にある温泉郷。三軒の一軒宿があって、以前、
鳩ノ湯温泉三鳩楼には行ったことがあるけど、まだ他に薬師温泉と
温川温泉の二つがあると説明した。
「いいよ」
145号線から浅間隠方面に入る道は、うちのカーナビでは道路が表示されない。でも実際は細くてもちゃんと舗装されていてそれほど悪い道ではない。草津への抜け道に使う人も多いという。
既に吾妻渓谷、草津の紅葉は終わっていたので、往路から実は浅間隠は穴場ではないかと思っていた。確かに左右の紅葉はまだまだ見ごろだ。11月の声を聞いたら、吾妻渓谷ではなく、実は浅間隠方面をドライブするのがツウなのかもしれない。
薬師温泉は99年末にリニューアル、2000年に露天風呂を新設して、今せっせと売り出し中だ。あちこちで「薬師温泉旅籠」の送迎マイクロバスが行き来しているのを見るし、看板もそこら中に立っている。さぞや繁盛して混んでいるだろうなと思った。
それにどこぞで手に入れた薬師温泉がばら撒いている割引券を、持ってきたかと思ったのだが今あわてて探しても見つからない。何だか割引券を持っているのに正規料金で入るのも癪だ。
対する
温川は地味だ。旅館の部屋数も全6室と小ぢんまりしている。露天風呂からのロケーションでは薬師温泉に軍配が上がりそうだが、我が家的には温川だろう。
決めた。今日は温川温泉。
温川温泉の駐車場は川沿いで、見るとちょうど対岸は薬師温泉の駐車場になっている。流石に向こうはぎっしり停まっている。10台以上きているだろうか。温川のほうは3台くらいだ。
宿は坂の上だが、露天風呂は駐車場のすぐ横だった。妙に生活観のある別棟の休憩室も備えられていて、立ち寄りしやすい雰囲気だ。休憩室の前にはむくむくとしたイヌも飼われていた。
カナとレナは今日はパパと入るという。脱衣所の靴を見ると、男湯も女湯もそれぞれ3、4人の先客がいるようだ。脱衣籠は5つしかなく、これがキャパシティーいっぱいというところだろう。
脱衣所から出ると、いきなり露天風呂がひとつ。それだけだ。内湯は坂の上の旅館内なのだ。
浴槽は檜の四角いもので、4、5人でいっぱいサイズ。既に3人ほど入浴中。天井には透明な屋根がついていて、女湯は景色が見えるはずの二面はヨシズを垂らしていて外から見られないようになっている。確かに、正面の斜面の上には江戸時代旅籠調という薬師温泉旅籠の建物が見えていて、目隠しがなかったら向こうからも丸見えなのだろう。
手前にカランとシャワーがあったので軽く流してから入った。
お湯はごく薄くもやがかかったように白っぽいがほぼ透明。気持ちぬるめで肌触りが柔らかい。臭いはほとんどなくて、淡い甘塩味。しゃがんで入るくらいのちょっと深めの浴槽だ。
浴槽のところは男湯と仕切ってあるが、その外側は繋がっている。子供たちを呼んだら、カナもレナもひょこひょこと女湯にやってきた。
このお湯の温度なら二人とも気に入るだろう。
温川沿いにある割には、川はまったく見えないし、紅葉を見る露天風呂というほどではないけど、ヨシズの間から黄色く染まった木々が見える。たぶんここは、浅間隠三軒の温泉の中では一番垢抜けない、そしてその分のどかさが残っている感じ。
お湯はよく温まる。強烈なのぼせ度ではないけど、中からじんわり温まるようだ。こういうお湯もいいなぁ。
湯上りに子供たちが又、犬を見たいと言うので休憩所の前まで連れて行った。
若いカップルがデジカメで露天風呂の外観を撮影しているのを見て、もしかして…と思ったら、二人は休憩所で日帰り入浴の受付をしている方に「温泉の成分分析票のコピーをいただけませんか?」と聞いた。…やっぱり。
受付の女性が脱衣所のほうに貼ってありますよと言ったので、思わず「男湯と女湯の間の壁にありましたよ」と余計なことを言ってしまった(笑)。
パパ曰く、「同業者じゃないの?」
仕事じゃないって〜(爆)。
そのあと受付をしていた方とすっかり話し込んでしまった。話をしてみると、実はご近所さんであることが判ったので。彼女は東京住まいで週末だけこちらの手伝いにいらしているそうだ。
浅間隠はそれぞれ源泉の違う三軒があるけど、三軒ともお湯は信頼できるからね。特にうちはホウ酸が沢山入っていて目にいいからね。ぜひまた来てね、と仰っていた。
帰り道、行きに見た岩櫃山を背に榛名山を登る。
今日は本当に11月とは思えない暖かい陽気だった。
夕食はキノコ鍋。りんご狩りでおまけにもらった大根もすりおろして鍋の中。
この宿の部屋はフローリングの部屋と和室が繋がっていて、その間のドアをスライドさせて全開できるようになっている。子供たちはこれがお気に入りで、いつも和室を舞台に見立ててショーをしてくれる。
大人がゆっくり鍋をつついている間、先に食べ終わった子供たちがディナーショーを見せてくれた。今日はミニーとデイジーのショーと、セーラームーンのショーだそうだ。歌と踊りが終わると、パレードと称して部屋を一周して握手してくれる。本格的だよ。
子供たちは今度は椅子をならべて、椅子の足に座布団を立てかけ、動物たちの小屋を作っていた。動物というのは、昨日バルーンアートで作った犬とうさぎだ。パパ、ママ、この座布団と椅子、朝まで動かしちゃ駄目だよ、と言われる。
今日もまた、草津には泣かされた。
パパにそういうと、草津は冬に行こうと言う。榛名湖から一時間半もあれば行くんだから、いつでも行かれるじゃないかと。
でも前回泣かされた時も冬だった。草津にスキーに行って、帰りは草津で温泉に入れなかった。あのときはスキーをあがって3時くらい、今から温泉に行ったらきっとスキー客で混んでいるからという理由だった。雪の中は子供を連れて歩くのが辛いし、冬はもっと身動き取れないんじゃなかろうか。
じゃ、草津に泊まろう。
ほんと?
年末はまたこの榛名湖で過ごす予定だから、そのときに草津で一泊しよう。
やったね。草津に泊まったら共同浴場をぐるぐる巡るぞー(子連れでは絶対無理…)。
何事も言ってみるものだね。
最終日へ続く