子連れ旅行温泉日記

今度こそ紅葉の温泉を探せ◆榛名湖日記7◆


二日目 2003年11月1日(土)

 温泉宿で一番嬉しいのは朝風呂ができること。
 昨日は日記を書くので夜更かししたので朝は起きられないかなと思っていたが、6時ごろに村内を朝の音楽が流れるのですっかりそれで目が覚めてしまった。

 夕方に入ったときは、子供たちを洗うのに専念してしまったし、ちょうど夜、宿で飲んでいた地元の方たちが入浴していたのと一緒になったのであまり落ち着けなかったが、夜中と朝と入ってみて、やはりここの温泉はとても良いと思った。

 最初お風呂だけのぞきに来たときは、それほど湯量が多く思えなかったが実際はかなり出ている。最初の印象が薄かった理由は、溢れたお湯が一箇所からではなく、縁が御影石の長方形の浴槽の長いほうの面の全面から均一に溢れるためで、よく見ると床は隅から隅まで常に流れている。湯口も湯面とほぼ同じ高さにあるため、お湯の落ちる音がしないのだ。音は排水溝ばかりからざあざあと絶え間なく聞こえる。
 浴室が薄暗いので色はよく判らないが、お湯はもしかしたら緑がかった透明。ゆで卵臭と少し焦げたような臭い。ごくごく薄いゆで卵味。小さな羽毛状の真っ白な湯の花がほんの少し。
 何より湯上りのすべすべ感がお気に入り。
 いいなぁ、片品温泉うめや

 チェックアウトした後は、まず昨日行き損ねた吹割の滝へ行ってみよう。本物のナイアガラの滝を見たことがないが、東洋のナイアガラと呼ばれるくらいなのだからきっと相当な迫力があるのだろう。
 滝周辺は土産物屋が立ち並び、それぞれにパーキングがついている。ここは駐車料金を無料にする代わりに土産物屋で何か買ってもらうというシステムになっている。あちこちに「吹割の滝入り口」と書かれた表示があるので、どこが一番近いのかよく判らなかったが適当な場所で車を停めた。
 遊歩道の階段を下りていくと幅の広い川が見えてきた。昨日、老神温泉東秀館の露天風呂から見た片品川の上流だ。
 川沿いにコンクリで固めた遊歩道があり、流れの先にぽっかりと巨大なV字型の裂け目がある。川の流れは一斉に奈落の淵に落ち込んでいるように見え、その周りに豆粒のような観光客の姿が。これは凄い。今まで滝は高さや清冽さで感動していたが、ここは日本離れした景観と、造詣の妙から一般観光客が吃驚するほど滝の側まで寄られることに驚いた。
 しかも見上げると岩山に張り付くように錦の紅葉。油絵の中にでも迷い込んだようだ。

 カナが「ねぇ、龍はどこにいるの?」と聞く。
 実は滝を見に行くといっても、興味の無い彼女はうんと言わなかったのだ。だから、この滝の底には龍がすんでいて、お祝い事のたびにお椀を貸してくれていたという話をした。でも最近は龍が出てこなくなってしまったので、返し忘れたお椀がまだあるんだよ(これは私の作り話じゃなくて本当の吹割の滝の伝説だ)。
 カナは龍が見たくて滝に来た。
 なのにいるのは観光客ばかりで、龍の姿はどこにもない。
 最近はずっと龍は出てきていないんだって、今日もいないみたいと言ったら凄く残念そうな顔をした。
 ママも子供の頃、近所の小川で妹の友達が龍を見たって言ったから、龍が出ることを信じて一日小川で待っていたことがあったよ。今思うと、龍なんてとても隠れていそうにない小さな川なんだけどね、この吹割の滝なら本当に龍が棲んでいそうだ。但し今は観光客で賑やか過ぎるので、出てくる気にはならないかもしれないね。

 次はお待たせリンゴ狩り。
 最初は沼田か新治辺りまで出ようと思っていた。新治村にはたくみの里という手作り体験施設がある。カナは工夫してものを作るのが好きだから、押し花の体験施設で遊ぶのと、リンゴ狩りをセットで楽しむのもいいかなと思ったのだ。
 だけどこの辺り、120号線の両側にも次々リンゴ農園が立ち並ぶ。よし、次に見えた農園に入ってみよう。
 車を停めたのは一本松観光りんご園。もぎ取りだけしてグラムで購入する方がコストパフォーマンスがいいというが、あえて食べ放題にしてもらった。苺と違って背の高いりんごの木から小さい子供がもぎ取るのは大変だし、結局大人がもいでやったのでは、直売所などで袋詰めされて売っているのを買うのと大差なくなってしまう。

 大人400円、子供300円。子供たちが果物を食べているのを見るのは大好きながら、実は果物嫌いのパパはついに「今日は自分は果物狩りはしない」と言った。仕方ないので一人で子供たちを連れて農園に入った。パパは車の中で寝ているらしい。
 園内には、陽光、ジョナゴールド、赤城、ふじなどのりんごの木が並ぶ。お勧めは陽光だそうだ。ふじの方が美味しいという人もいるし、赤城も甘いよと教えてもらった。
 いくつか食べ比べてみたが、やっぱり陽光がバランスが良いようだ。赤城もさっぱりしていて梨のような風味があり美味しいが、ふじはちょっと渋みが出ていた。くし型に切ると全部残さず食べられるけど、丸いまま齧るとどうしても外側が甘くて味があるから、真ん中を最後に食べるのが辛いね。
 もうお腹いっぱい。

 お土産にりんごを二つと、大根を一本つけてくれた。農園の奥さんが言うには、この大根は今朝、片品で掘ってきたばかりなのだそうだ。

 車に戻るとパパは寝ていなかった。寝るつもりだと言っていたが、気を変えて次の行き先を検討していたらしい。赤城へ行くという。
 群馬の旅特別宣伝協議会発行の「ぐんま観光イベント特集保存版」という無料小冊子がある。道の駅などで配布しているが、昨日立ち寄った片品の観光案内所で手に入れた。ここには群馬県内の立ち寄り温泉や観光施設の割引チケットがついているとともに、2004年3月までの県内各市町村のお祭りなどが記載してある。これを見て、赤城村総合運動自然公園で開催している赤城村ふれあい祭りに行くことにしたらしい。
 沼田ICから高速に乗って、赤城ICで降りる。総合運動自然公園はICから車で3分だ。到着はお昼前で、駐車場にもまだ空きがあった。

 いかにも村内の交流イベントという感じで、規模はかなり小さい。パパはもっと大きいものを想像していたようだが私はほぼ想像通りだった。
 ヘリウム風船を持っている人が多かったので、カナとレナにも風船がもらえるかと思ったが、どうも既に出払ってしまったらしい。学校の校庭ほどの広さのスペースには出店など並んで、古着を売っていたりインターネットの体験コーナーがあったりする。体育館の中もイベント会場で、1階は地元の出し物と作品展示場になっており、2階に体験コーナーのようなものがあるようだ。
 ちょっと靴を脱いで2階に上がってみよう。
 文化財コーナー・みみずく土偶のキーホルダーづくり?
 みみずく土偶? なんだそれ?
 のぞいたら、どうぞどうぞと薦められ、空いた席につく。
 粘土を渡され、パパはカナと、ママはレナと、係りの人に言われるままに捏ねていると、何やら妙ちきりんな頭飾りをつけた土偶の押し型が配られた。これに粘土を押し当てて、土偶を写し取るらしい。捏ねすぎると張り付いて取れないからと言われ、適当なところで型を取る。それから型からはがし、カッターで好きな形に周りを切り取る。カナは切り取ったあまりの粘土でもう一つ小さいのを作った。
 そこまでできたら後は係りの人がアルミホイルに乗せて金具をつけ、ホットプレートで焼いてくれる。40分ほど焼いたらキーホルダーの出来上がりだ。
 文化財とあるから、たぶんみみずく土偶というのは赤城村の誇る文化財なのだろう。それを模したキーホルダーを村民に手作りしてもらうことで、文化財を身近に感じてほしいということか。
 …それにしてもみみずく土偶とは、渋すぎるよ(笑)。
 初めての体験にカナとレナも結構喜んだ。

 他にも麻紐細工とか細長い風船で動物を作るバルーンアートのコーナーなどがあった。
 麻紐は綺麗で、カナに見せたらやりたがるだろうなと思ったけど、人気があって席が空かなかったからバルーンの方に行ってみた。
 担当しているのは中学生か高校生ぐらいの大人しそうな男の子だ。
 作らせてくれるんですか?と聞くと、ウサギとイヌができますと答えた。カナはイヌ、レナはウサギが良いという。それぞれ自分たちで風船の色を選んで膨らませてもらうと、早速動物の形にねじって作っていく。男の子がレナのウサギを作ってくれるというので、ママが説明を聞きながらカナのイヌを作ることになった。
 ところが…
 パンッ!!
 途中でレナのウサギが破裂してしまった。風船が割れるのが怖くて、よく妹のレナにいじめられている6歳のカナは、恐怖のあまり跳んで逃げてしまった。
 レナのほうはけろりとして、別の色の風船を選んでいる。結局カナとレナは同じピンク色の風船で、希望通りのイヌとウサギを手に入れた。

 40分は長いと思ったが、バルーンアート体験などしているうちに過ぎてしまった。焼きあがったみみずく土偶をお土産に帰ることにした。たくみの里には寄らなかったけど、それより面白い体験ができたかもしれない。

 昨日キャンプ場に泊まる予定だったから、既に買出しはほとんど済んでいる。少し買い足したいものがあったので、渋川のジャスコに寄ったら、つぶれて更地になっていた。半年前はまだあったよな、とパパ。不景気だからかな。仕方ないので通りから見えたSATYに寄って用を足した。

 渋川から伊香保を経由して榛名湖へ。
 今日から三連休だから、伊香保の手前の上り坂は渋滞している。ちょうど2時少し前。これから3時過ぎまで宿のチェックインに併せて混雑するのだろう。
 今日はとても暖かい日で、空は晴れて雲は見えないが全てが春のようにぼんやりと霞んでいる。見上げる榛名山もまるで遠方の山のように薄い水色の輪郭しか見えていない。それはそれで何だか、夢の中で見た景色を起きてから思い出しているようで綺麗だ。
 その代わりもう紅葉は終わりかけている。
 昨夜泊まった片品うめやの気風の良い若女将が、今年の紅葉は出足こそ遅かったけど、始まったらあっという間だったと言っていたのを思い出した。

 伊香保の温泉街を過ぎると渋滞は消えた。
 既に色あせた葉をわずかに残した木々の間を、ぐんぐん車は登っていく。何度目かのカーブで眼下を見下ろしたら、先ほどの台地を覆った霞が下界の街を包み隠して、まるで伊香保の温泉街は中に浮いているかのように見えた。高い山からだと、下界が雲海に沈みこんな風に見えることがあるけれど、空は晴れているのに何だか不思議。

 いつもの榛名湖の宿に着く頃には、レナは後部座席で熟睡していた。そのまま部屋まで運ぶ。昨日もこんなパターンだった。
 荷物を全て運び込んだら食事の支度。今日は昼ご飯が抜けてしまった。4時ごろから食べられるようにしよう。

 宿の管理人さんに外でバーベキューがしたいと伝えると、外の椅子とテーブルを使わせてもらえることになった。準備が整ったらレナも起こしてみんなで食べよう。寒い季節のバーベキューは、明るいうちにはじめるのがいいね。背後に聳える烏帽岳の上には、半分だけのお月様。青空に白くぽっかり浮かんでいたのが、段々夕闇が降りてきて、いつの間にかきらきら輝いている。火星も見えるね。
 赤城牛、葱にキャベツ、遠足で掘ってきた薩摩芋、焼マシュマロのフルコース。

 最近はあまり温泉に入りたがらないからと、今日はどこにも立ち寄り湯しなかったら、カナとレナは「温泉に入りたい」とか言う。人の気も知らないで(笑)。
 仕方ないので食べ終わったらレークサイドゆうすげに行くことにした。
 榛名湖には榛名湖温泉があり、ゆうすげ元湯レークサイドゆうすげという二つの施設がある。どちらも立ち寄り入浴可能で、ゆうすげ元湯は露天風呂など備えて強気の600円、レークサイドゆうすげは古びた施設で400円だ。しかし実は濾過循環のゆうすげ元湯より、お湯は源泉掛け流し、かつ浴室からの展望でもレークサイドが数倍勝っていることはあまり知られていない。
 初めて榛名湖に来たとき、家族でゆうすげ元湯に入り、つまらない温泉だなと思った。だからその後も榛名湖温泉には寄らなかったのだが、今年の4月に私はレナと二人だけでレークサイドにも入る機会があった。
 だからママとレナはレークサイドに入湯済みだ。パパとカナは未湯。今日はみんなで入ってみよう。時間は6時。宿泊者はちょうど夕食を召し上がっている頃だろう。

 先ほど赤城ふれあいまつりの情報を入手した「ぐんま観光イベント特集」がここでも役に立つ。レークサイドで割引クーポンを出すと、400円の入浴料が半額の200円になるのだ。
 フロントでクーポンを見せると、係りの人は「こんなのあるの、知らなかった」と吃驚していた。使っている人、あまりいないのかしらん。
 「大人は400円のところ、200円として…子供の分が書いてないわね、子供は3歳から200円なんだけど、それも半額かしら、それとも…いいわ、全部で400円」
 はにゃ。
 大人半額だけでなく、子供はタダになってしまった。いやぁ、感謝。家族4人で計400円。コストパフォーマンス良すぎ。

 ここの温泉は茶色い。伊香保にもちょっと似た薄めた泥水のような色。ここの不思議なところは体感温度。前も感じたが、入る前はすごく熱いのに、体を沈めてしまうと全然熱さを感じない。それは私だけでなく子供たちも同じだったようで、先に洗い終わったカナとレナに、お風呂に入っていていいよと伝えたら、二人ともママが洗い終わるまで縁で待っていた。どうも掛け流されてくるお湯に触っただけで、熱くて入れないと判断したらしい。
 ふふん、ここのお湯は入れてしまったが勝ちよ。
 熱くない場所を探してあげるね、と浴槽内を歩き回り、一番隅を指した。
 あそこが熱くなかった。抱っこしてあそこまで連れて行ってあげるから、となだめて、すみっこで入浴させてやると「あっ、熱くない。ここだけじゃない、全部熱くない!! レナもおいでよ」
 でっしょー。

 夜なので残念ながら湖の景色は見えない。
 窓が細く開いていたので、顔を出してみた。涼しくて気持ちいい。レークサイドの浴室は、ロマンティックには程遠いが、この窓の外の景色はいいよ。宵闇の中に浮かぶ岸の灯りが全て湖に鏡のように写り込み、宝石がこぼれているみたい。

 上がるとパパがビールを片手に待っていた。それを見て子供たちも口々に喉が渇いた、お茶が飲みたいと騒ぎ出す。宿に戻れば冷たいお茶があるからとなだめて外に連れ出す。
 パパが同浴した人は、近所にマンションを買っていてしばしばレークサイドに入りに来るそうだ。お風呂で言われたらしい。
 「あんた若いのに隣(ゆうすげ元湯)じゃなくて、こっち(レークサイド)に入りに来るなんて、なかなかやるねぇ」

 部屋に戻ったら、カナとレナが真剣に何かやりはじめた。
 昼間作ったみみずく土偶キーホルダーを完成させるのだという。どう、可愛くなったでしょ、と見せられて面食らった。なんとサインペンやクレヨンで彩色してある。
 …赤城ふれあいまつりの実行委員も、こんなオプションまでは考えていなかったに違いない。
 子供たちのやることって楽しい。


三日目に続く…

三日目へ… | 目次へ戻る | 地熱愛好会HOMEへ戻る